入管法とは?現行法のポイントや改正入管法についても解説!!

入管法とは?現行法のポイントや改正入管法についても解説!!

目次

2023年6月に大きな改正があった、入管法。この記事では、「入管法の概要を知りたい」「改正入管法の内容を知りたい」という方に向けて、入管法のポイント、改正の内容まで簡単に解説していきます。外国人労働者の雇用を検討しており、入管法の基本を押さえておきたい方は、是非ご確認ください。

入管法とは

まずは入管法の基本的な概要についてお話していきます。入管法とは、出入国管理及び難民認定法の略称です。

入管法は、日本に入国する人や日本から出国する全ての人、又は日本に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続きを整備することを目的に制定されました。 

公正な出入国管理

出入国在留管理庁では入管法に基づいて外国人の来日目的などを細かく確認し、適切な在留資格いわゆるビザを付与するなどの対応を実施しています。

また在留資格の変更や更新においても厳密に審査することで、公正な在留管理を実現していると言えます。

在留資格について詳しく知りたいという方は、以下の記事で詳細を紹介しておりますのでご確認ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説

外国人の退去強制|いわゆる強制送還

公正な出入国在留管理を実施しているものの、中には不正に入国する外国人が存在します。

適切な審査を通じて入国した後に、在留期間が過ぎても不法に滞在していたり、就労許可がないにも関わらず就労していたりする人もいるのです。

そういった外国人に対しては、入管法に基づき強制退去いわゆる強制送還などの措置を取ることになります。

ただし、ルール違反した外国人を一律に退去させるわけではなく、個々の外国人の事情などを考慮した上で、例外的に日本への在留を特別に許可する場合もあります。

退去強制について詳しく知りたいという方は、以下の記事で詳細を紹介しておりますのでご確認ください。
▶︎【強制送還とは】概要や適用ケース、流れなどをわかりやすく解説

難民認定|最新の難民認定数は?

難民とは、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあり、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者とのことを言います。

出入国在留管理庁では、日本に在留している外国人からの難民認定申請の審査を実施しており、審査の上難民認定した場合は、定住者の在留資格を許可するといった対応を取っています。

在留資格「定住者」について詳しく知りたいという方は、以下の記事で詳細をご紹介しておりますのでご確認ください。
▶︎【在留資格「定住者」とは】概要や取得要件、取得までの流れを解説

その他難民として認定されなかった場合でも、人道上の配慮から日本への在留を認めるなどの柔軟な対応をしているケースもあります。

令和4年における日本の難民認定数は、202人となっております。さらに難民とは認定されなかったが、人道上の配慮から日本への在留を認めた人数は、1,760人となっております。すなわち、難民認定手続の結果、我が国での在留を認めた者は、1,962人なのです。

なお、数万人規模で難民を認定している国も複数あることから、日本の難民認定数が低い状況にあることが分かります。 

入管法の改正の歴史

つづいて、入管法改正の歴史を見ていきましょう。

入管法は制定以来、幾度となく改正が実施されています。2000年以降の改定の歴史についてトピックを紹介します。

・2004年
在留資格取消制度や仮滞在許可制度などの創設、不法入国罪などの罰則強化 

・2005年
密入国議定書の締結に伴う罰則・退去強制事由の整備

・2006年
上陸時における個人識別情報の提供義務付け、外国人研究者や情報処理技術者を「特定活動」によって受け入れる際の規定整備 

・2009年
在留カードなどの新たな在留管理制度の導入、在留資格「技能実習」の創設 

・2014年
在留資格「高度専門職」の創設、在留資格「技術」と「人文知識・国際業務」の統合、在留資格「投資・経営」から「経営・管理」への変更 

・2016年
在留資格「介護」の創設、偽装滞在者対策強化のための罰則・在留資格取消事由の整備 

・2018年
在留資格「特定技能1号・特定技能2号」の創設

・2023年
難民認定手続中の送還停止効に「例外規定」を創設 

2018年 改正入管法におけるポイント

ここからは、2018年に改正された入管法について、もう少し詳しく見ていきましょう。

新たに在留資格「特定技能」が創設|技能実習との違いは?

2018年の改正において最も大きなトピックとなるのは、新たな在留資格「特定技能」が創設されたことでしょう。

実際の運用自体は2019年4月から始まり、2022年12月末時点で130,915人が在留しています。

特定技能はその他の就労系在留資格と異なり、日本国内における人材不足の解消を目的とした在留資格です。

そのため「技術・人文知識・国際業務」などでは認められていなかった、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の就労が可能となっています。

なお、既存の制度である「技能実習」制度と何が違うのかという点ですが、2つの制度は設立目的が異なります。

特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」です。

対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」なのです。

なお、「特定技能」、「技能実習」及び「特定技能と技能実習の比較 」について詳しく知りたいという方は、以下の記事で紹介していますので、ご確認ください。
▶︎‍技能実習制度とは?受け入れ方法から注意点まで基本を徹底解説
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
▶︎【特定技能と技能実習】7つの違いとメリット/デメリットを徹底解説!

特定技能における対応職種

特定技能では、国内において特に人材不足が深刻とされている12の特定産業分野において、外国人労働者の就労を認めています。

具体的な産業分野は以下の通りです。各分野ごとに解説ページのリンクを貼り付けているので、あわせてご確認ください。

2023年 改正入管法について

最後に、2023年6月に成立した改正入管法について簡単にご紹介したいと思います。この章の記事は、出入国管理庁「入管法の改正案について」を参考に執筆しております。

改正前入管法の背景・課題

改正の背景・現行法の課題としては以下の3点が挙げられております。

①送還忌避問題

不法就労などの違法行為をした場合、退去強制すなわち強制送還の対象となります。退去強制対象者の多数は問題なく出国するところ、一定数の外国人が出国を拒んでいる状況があり、その数は、令和3年12月末時点で3,224人、このうち1,133人前科を有しており、515人懲役1年超の実刑の前科を有しております。

このように実刑の前科があるにもかかわらず退去を拒む外国人について、現行法では、以下のような事情が、外国人を強制的に退去させる妨げとなっておりました。

・難民認定手続中の者は、送還が一律禁止

現行法では、難民認定手続中の外国人は送還が一律に停止され、申請の回数や理由等を問わず、重大な罪を犯した者であっても、退去させることができませんでした。この点に着目して、難民申請を繰り返していた外国人もいるようです。

・退去を拒む自国民の受け取りを拒否する国の存在

日本で、退去強制の対象となった外国人について、その外国人が退去を拒否した場合、自国民の受け取りを拒否する国が一部あり、現行法では、そのような者を母国に強制的に送還する手段がありませんでした。

・送還妨害行為による航空機への搭乗拒否

外国人の母国へ送還する際に飛行機の中で暴れたり、大声を上げたり、と送還の妨害をする人もおり、この場合には、機長の指示により搭乗が拒否され、退去させることが物理的に不可能になっておりました。

②収容の長期化と仮放免制度の悪用

現行法では、退去が確定した外国人は原則退去までの間、収容施設にて収容されます。収容された外国人が退去を拒否したり、難民申請の繰り返し、母国側の受け入れ拒否などで、収容期間の長期化が問題となっておりました。

このような収容期間の長期化を防止するには、収容を一時的に解除する「仮放免」制度を活用するしか方法がなく、「仮放免」が許可された外国人が逃亡するケースも多数発生し、令和3年12月末時点で599人も逃亡しているという状況なのです。

③難民を確実に保護する制度が不十分 

難民条約上、「難民」に該当するには、➀人種、➁宗教、➂国籍、➃特定の社会的集団の構成員であること、➄政治的意見のいずれかの理由により迫害を受けるおそれがあることが必要となっています。しかし、紛争避難民については、迫害を受けるおそれがある理由が、この5つの理由に必ずしも該当せず、条約上の「難民」に該当しない場合があります。

現行法では、こうした条約上の「難民」ではないものの、「難民」に準じて保護すべき紛争避難民などを確実に保護する制度がありませんでした。

改正の目的及び概要

ここまでお話してきた背景や現行法の問題点を踏まえ、出入国在留管理庁は今回の改正の目的として、①送還忌避問題の解決②収容を巡る諸問題の解決③保護すべき者の確実な保護、の3点を掲げております。

これらの目的を踏まえて改正の概要を具体的に確認していきましょう。

送還忌避問題の解決

・難民認定手続中の送還停止効に例外規定を創設

難民認定手続中は一律に送還が停止される現行入管法の規定(送還停止効)を改め、以下の者については、難民認定手続中であっても退去させることが可能となりました。

  • 3回目以降の難民認定申請者
  • 3年以上の実刑に処された者
  • テロリスト等

ただし、3回目以降の難民認定申請者でも、難民や補完的保護対象者と認定すべき「相当の理由がある資料」を提出すれば、送還は停止できることになっています。

・強制的に退去させる手段がない外国人に退去を命令する制度を創設

退去を拒む外国人のうち、次の者については、強制的に退去させる手段がなく、現行法下では退去させることができないので、これらの者に限って、日本から退去することを命令する制度が創設されます。

  • 退去を拒む自国民を受け取らない国を送還先とする者
  • 過去に実際に航空機内で送還妨害行為に及んだ者

さらに、罰則を設け、命令に従わなかった場合には、刑事罰を科すことができるようになります。

・退去すべき外国人に自発的な帰国を促すための措置を講ずる

退去すべき外国人のうち一定の要件に当てはまる者については、日本からの退去後、再び日本に入国できるようになるまでの期間(上陸拒否期間)が短縮されるようになります。

②収容を巡る諸問題の解決

・収容に代わる「監理措置」制度を創設

入管法の「原則収容」制度を改め、外国人の監督をできる者を「監理人」として選任し、当該「管理人」の監理の下で、逃亡等を防止しつつ、収容しないで退去強制手続を進める「監理措置」制度が創設されます。これにより、収容期間の長期化及び「仮放免」を受けた外国人の逃亡を防ぐことが可能となっております。

③保護すべき者の確実な保護

・補完的保護対象者の認定制度の創設

紛争避難民など、難民条約上の難民ではないものの、難民に準じて保護すべき外国人を「補完的保護対象者」として保護する手続を創設し、補完的保護対象者と認定された者は、難民と同様に安定した在留資格(定住者)で在留できるようになります。

入管法改正の争点

今回の改正入管法で一番の争点となったのが、「難民認定手続中の送還停止効の例外規定」の創設についてです。この争点に関して、日本弁護士連合会からの声明が出されたり、国会前でのデモが行われたりと注目を集めておりました。

前述のとおり、これまでは、難民認定申請中は、送還が認められていませんでしたが、今回の改正で、3回以上難民申請をした人について「相当の理由」が説明されなければ、送還が可能となりました。目的は、前述のとおり難民ではない人が送還を免れるために難民申請を繰り返す、申請の「濫用」を防ぐためです。

一方で、改正反対派からは、「日本では、1、2回の申請で難民と認定されるケースは少なく、実際に3回以上の申請で認定される場合もある。」「3回以上の申請者を送還の対象とすると、本当に保護を求めている難民を見落とすことになる」との意見があがっておりました。

この他にも多くの問題を有するとされており、未だに再改正を求める声も上がっている状況です。 

まとめ

今回は入管法についてお話してきましたが、いかがでしたか。

多くの反対意見が上がる中で成立した改正入管法、今後の運用がどうなされていくのか目が離せません。

外国人労働者の雇用を考える場合、入管法の内容は大きく影響してくるため、改正法の動向はチェックしておくようにしましょう

当社は特定技能外国人の紹介及び登録支援機関として活動しており、支援計画作成の代行や在留資格申請のサポートサービスなどを提供しております。

特定技能外国人の雇用に取り組みたいという方は、是非お気軽にこちらの問い合わせフォームからご連絡ください。

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中林 俊介

株式会社ジンザイベースマーケティング部「Jinzai Plus」編集長 1988年11月生まれ。関西外国語大学スペイン語学科卒業後、2014年に東京都庁へ入都。三宅島での地方創生事業、ラグビーワールドカップやオリンピックなど様々な事業に従事。2021年に行政書士試験に合格し、2023年5月から株式会社ジンザイベースに入社、同年6月外国人雇用労務士試験に合格。プライベートでは、一児のパパ、仕事も家族も両方本気で向き合う!!という気持ちのもと日々猛進中。