特定技能【飲食料品製造業】で外国人を雇用するためには?業務内容や試験内容などを解説/セントラルキッチンは?

特定技能【飲食料品製造業】で外国人を雇用するためには?業務内容や試験内容などを解説/セントラルキッチンは?

目次

セントラルキッチンプロセスセンターで外国人を雇用することはできるのでしょうか?

結論、特定技能「飲食料品製造業」では雇用可能です。

この記事では、特定技能外国人の雇用・採用をご検討している飲食料品製造業の企業様に向けて、業務内容や費用、試験内容などを解説していきます。

飲食料品製造業分野で特定技能外国人の受け入れを検討している事業者様は、是非最後までご確認ください。

YouTubeでも動画形式で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

特定技能「飲食料品製造業」とは?

特定技能「飲食料品製造業」は、2019年4月に設けられた新たな就労系在留資格「特定技能」の1つです。

後ほどご紹介する試験に合格すれば、飲食料品製造業の業務に従事することができます。

さらに、技能実習生からの移行も可能となっておりますので、技能実習生を既に受け入れている事業者様は、「特定技能」への移行を検討してみてはいかがでしょうか?

なお、在留資格「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたもので、この制度によって、日本国内において特に人手不足が深刻とされる産業分野で、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の活用を可能としました。

「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

特定技能「飲食料品製造業」が認められた背景

なぜ、「飲食料品製造業」の分野で特定技能制度が認められたのでしょうか?

結論、人手不足が加速度的に進んでいるからです。以下のグラフのとおり、2017年時点で、飲食料品製造業分野の有効求人倍率2.78、全産業平均の約2倍なっております。このような背景から、特定技能制度に「飲食料品製造業」が認められたといえます。

グラフ引用:飲食料品製造業分野における外国人材受け入れ拡大について
グラフ引用:飲食料品製造業分野における外国人材受け入れ拡大について

「飲食料品製造業」で特定技能外国人は何人いるの?

では、現在、飲食料品製造業では何名の特定技能外国人が働いているのでしょうか。

出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数 令和4年12月末」

日本に在留する特定技能外国人は、2022年12月末時点で、130,915名です。同年6月末時点では87,471名だったので、半年で40,000名以上増加していることになります。

飲食料品製造業分野では42,505名滞在しており、ご覧のとおり、12業種の中で、一番受け入れ人数が多い業種となっております。

なお、6月末時点では約29,617名であったため、半年間で約13,000名増加しており、外国人に非常に人気の分野となっていることから、今後もこのような増加傾向は継続することが予想されます。

特定技能「飲食料品製造業」の基本情報

ここから、特定技能「飲食料品製造業」の基本情報を紹介していきます。

どんな業務ができる?

では、飲食料品製造業で特定技能外国人が従事できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか?農林水産省「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」を参考に解説していきます。

この点、酒類を除く飲食料品の製造加工安全衛生などの飲食料品製造業全般で従事することが可能です。

「飲食料品の製造・加工」とは、原料の処理、加熱、殺菌、成形乾燥等の一連の生産行為等をいいます。

また、「安全衛生」とは、使用する機械にかかる安全確認、作業者の衛生管理等、業務上の安全衛生及び食品衛生の確保に係る業務をいいます。

これらに加えて原料の調達や受け入れ、製品の納品、清掃や事業所の管理作業などといった、業務を行う上で、日本人が通常従事している関連業務にも付随的に従事することが可能となっています。

ただし、関連業務にのみ従事することは認められておらず、あくまでメインとなる業務は、先にあげた飲食料品の製造や加工、安全衛生に関する業務になります。

また、飲食料品製造業の対象範囲として定められているのは以下の7つで、「食料品製造業」はさらに細分化されます。

小売業者や卸売業者を対象にしたプロセスセンターや外食業の店舗での調理に代わり原材料の製造・加工をしているセントラルキッチンも「飲食料品製造業」に該当するため、特定技能外国人を雇用することができます。

農林水産省「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」をもとにジンザイベースが作成

「飲食料品製造業」と「外食業」の違い

以前お手伝いさせていただいた企業で、仕出し弁当、デリバリーの業態で「飲食料品製造業」として特定技能の在留資格を申請した企業が不許可になったケースがあります。

理由としては、客の注文に応じ、客の求める場所に飲食料品を届ける仕出し・デリバリーは「外食業」に該当するためでした。

すなわち、以下のように、惣菜・弁当製造業セントラルキッチンプロセスセンターBtoBの業態は「飲食料品製造業」に該当します。一方で、持ち帰り弁当・惣菜・給食・仕出し・配達サービス等BtoCの業態は「外食業」に該当します。

では、スーパーマーケットで惣菜などを製造しているバックヤードは、どうなのでしょうか?

この点、バックヤードは「小売業」であるスーパーの1機能と位置付けられているため、基本的には「飲食料品製造業」には該当しないことから、特定技能外国人を雇用することは困難でしょう。

農林水産省「飲食料品製造分野における特定技能外国人受入れの制度について」をもとにジンザイベースが作成

雇用期間は何年?特定技能1号、2号とは?

特定技能「飲食料品製造業」では、外国人を何年間雇用することができるのでしょうか?

この点、2023年5月現在においては、5年が上限となっております。飲食料品製造業では特定技能1号のみで認められているからです。

特定技能2号であれば、無期限での就労が可能となりますが、現時点では、「建設業」「造船・舶用工業」の2業種のみとなっています。

もっとも、特定技能2号の対象業種の拡大に向けた議論が積極的になされているため、近い将来、飲食料品製造業においても5年を超えて雇用することができるようになるでしょう。

雇用形態・給与は?雇用できる人数は?

雇用形態としては直接雇用が求められます。そのため、パートやアルバイトではなく、フルタイムの正社員で雇用する形になります。

報酬についても基準が設けられており、同等業務に従事している日本人社員と同額以上の報酬を支払う必要があります。もちろん、各種手当や福利厚生施設の利用等、日本人と同じ待遇で処遇しなければなりません。外国籍であることを理由に、差別的な扱いを行うことは禁止されていますので、ご留意ください。

雇用可能人数については、制限はありません。何名でも雇用可能です。一方で、建設業と介護業に関しては、受け入れ事業所の常勤職員数未満しか雇用できないと定められています。

在留資格「技能実習」との違いは?

以下に「特定技能」と「技能実習」の違いを取りまとめました。

特定技能技能実習
設立目的労働力の確保技能の移転による国際貢献
受け入れ人数制限制限なし常勤職員数に応じて制限あり
残業時間の制限36協定の範囲内
(日本人と同等)
原則月45時間以内
転職可否可能不可
書類手続き申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿は少ない
申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿も煩雑
家族の帯同不可
(特定技能2号になると可能)
不可

2つの制度はそもそもの設立目的が異なります。特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」です。対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」なのです。

このように設立目的が異なるため、様々な違いが存在します。最たる例としては、技能実習では、「転職」という概念が存在しませんが、特定技能では同業種であれば無制限に転職が可能となっています。

「特定技能」と「技能実習」の違いについてより詳しく知りたい方は、「【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法」をご覧ください。

特定技能「飲食料品製造業」として働くための要件

ここからは、特定技能「飲食料品製造業」を取得するための要件について、お話していきます。 大枠として以下の二つのいずれかの条件を満たした外国人だけが、「特定技能」として、働くことができます。

①試験に合格する
 飲食料品製造業特定技能1号技能試験、日本能力試験
②技能実習を修了する
 技能実習2号を良好に修了する ※3号修了者も可能

①試験に合格する

まずは、「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」「日本語能力試験」をクリアするルートを見ていきましょう。

飲食料品製造業技能測定試験

飲食料品製造業の技能試験については、OTAFFが運営しており、学科試験及び実技試験により行われます。両試験とも以下の5つのカテゴリーから出題されます。

学科試験は以下の5つのカテゴリーの基本知識を問う試験です。実技試験は、「判断試験」「計画立案」試験の2つから構成されます。「判断試験」は、図やイラストを見て、正しい行動を選択させ、「計画立案」試験は、計算式を使って、作業の計画を作ることができるか問う試験です。

  • 食品安全、品質管理の基本的な知識
  • 一般衛生管理の基礎
  • 製造工程管理の基礎
  • HACCPによる衛生管理
  • 労働安全衛生に関する基礎知識

なお、試験概要は以下のとおりです。詳細は、OTAFFのHPをご確認ください。

学科試験実技試験
問題数30問10問
時間80分
方式マークシート
合格基準65%

日本語能力試験

日本語能力試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。

日本語能力試験N4以上
国際交流基金日本語基礎テストA2以上

N4およびA2は、基本的な日本語を理解できるレベルと考えていただいて問題ありません。この他のレベルについては、こちらをご参照ください。

②在留資格「技能実習」から移行する

この特定技能ですが、実は技能実習2号を良好に修了した外国人は、先にあげた2つの試験を受験することなく移行することが可能です。※ 良好とは、「技能実習計画を2年10ヶ月以上修了」している状態を指します。

ただし飲食料品製造業以外の分野で技能実習2号を修了しても試験は免除されず、改めて特定技能評価試験を受験しなければなりません。

技能実習制度について詳しく知りたい方は、「技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説」で詳細をご確認ください。

以下は、技能実習と特定技能の移行関係を示したものです。適宜ご確認ください。

なお、医療・福祉施設給食製造については、「外食業」への移行が可能です。

技能実習2号と飲食料品製造分野の移行関係
農林水産省「飲食料品製造分野における特定技能外国人受け入れの制度について」をもとにジンザイベースが作成

特定技能外国人を採用する流れは?

続いて、飲食料品製造業の分野で特定技能外国人を受け入れる流れや、受け入れ企業側に求められる条件などについて確認していきましょう。なお、外国人を雇用する企業のことを受け入れ機関と呼びます。

特定技能外国人の「受け入れ機関」としての要件を満たす

特定技能外国人を受け入れるにあたって、受け入れ機関は以下の基準を満たす必要があります。

法務省「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」をもとにジンザイベースが作成

支援体制に関する基準に関して、直近2年以内に外国人の受け入れ実績生活支援の担当業務に従事した経験のある従業員がいない場合、満たすことができません。その場合、「登録支援機関」という第三者機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。

登録支援機関については、ぜひ「【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」も併せてご覧ください。

受け入れ基準は?/食品産業特定技能協議会への加盟が必須

受け入れ機関としての基準に加え、特有の以下の要件を満たさなければなりません。

・食品産業特定技能協議会に参加し、必要な協力を行うこと
・農林水産省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと

食品産業特定技能協議会への加入については、初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内に実施する必要があります。もしこちらの協議会に加入できなかった場合、特定技能の在留資格許可がおりていたとしても、企業での受け入れは認められません。

また、受け入れ企業の業務内容が飲食料品製造業に合致しているかを細かくチェックされます。先にあげたように、業務内容によっては、外食分野に該当する可能性もあるため、実際に出入国管理庁へ在留資格申請する前に、協議会に加入申請しておくことをおすすめします。

詳しくはこちらのページをご確認ください。

具体的な募集〜入社までの流れ

特定技能外国人の受け入れの流れについては、基本的に以下のようになります。 国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってくる点はご注意ください。

特定技能外国人を呼び寄せる場合の手続きの流れ

ステップ①:人材募集・面接

まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。 

ステップ②:特定技能雇用契約の締結

無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。

ステップ③:1号特定技能支援計画の策定

次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。

特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上は勿論のこと、日常生活面での支援も行う必要があります。

次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。

こちらの支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポートを受けることが可能です。

ステップ④:在留資格認定・変更申請

続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。

国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。

この時に用意すべき書類は大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

・外国人本人に関する書類
・受け入れ機関(雇用主)に関する書類
・分野に関する書類

それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。

また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。そのため、特定技能保持者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。

ステップ⑤:ビザ申請

こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。

無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。

ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)

ステップ⑥:就業開始

無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。

なお、より詳細情報を知りたい方は「【特定技能外国人の採用方法】実務で使える!採用の流れから必要な手続きノウハウまで徹底解説」をあわせてご覧ください。

特定技能外国人を雇用する費用はどのくらい?

最後に、特定技能外国人を雇用する際にかかる費用を確認していきましょう。

ざっくりとした費用概算
海外からの呼び寄せ国内で特定技能へ移行
送り出し機関への手数料20万円〜60万円0円
人材紹介会社への手数料0円20万円〜40万円
在留資格申請に関する委託費用10万円〜20万円
登録支援機関への支援委託費用年間24万円〜36万円(一人当たり2〜3万円 / 月)
在留期間更新申請に関する委託費用5万円〜15万円

国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。
そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点は気をつけましょう。

また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。

初回の申請手数料のみならず、受け入れ後も毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに申請委託費用も発生してきます。

最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。

あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。

より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「▶︎【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。

まとめ

今回は特定技能の分野の中から、飲食料品製造業にフォーカスしてお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は本文中でもご紹介した登録支援機関として活動しており、支援計画の策定や支援業務の代行といったサービスを提供しております。

特定技能外国人の人材紹介サービスも行っておりますので、特定技能外国人の雇用に取り組みたい方は、是非一度お気軽にお問い合わせください。

カテゴリ:
特定技能
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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。