特定技能の取得に必要な「特定技能評価試験」とは?日程や合格率を解説

「特定技能」の在留資格を取得するには、各12業種ごとに実施される「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」に合格する必要があることをご存知でしょうか?
この記事では、特定技能評価試験の概要や実施日程、申し込み方法や試験の合格率について取りまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
在留資格「特定技能」ってなに?
在留資格「特定技能」は、2019年4月に新たに設けられた在留資格です。深刻な人手不足の解消をするため、「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる」ことを目的にしています。

近年、特定技能の在留者数は急増しています。こちらの表は出入国在留管理庁が3ヶ月ごとに公表している特定技能外国人の在留者数です。
2022年12月末時点で、日本国内に130,915名滞在しており、同年6月末には87,471名だったことから、半年で約1.5倍の純増となっています。現在、日本で最もホットな在留資格で、これからも在留者数は急増していくことが見込まれるでしょう。
なお、特定技能外国人の受け入れについて一から知りたい!という方は、「特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説」の記事をご確認ください。
特定技能の対象業種・分野は?
特定技能は、全ての産業・業種で受け入れが可能ではなく、国内産業の中でも特に人材不足が深刻とされる、以下12の特定産業分野においてのみ受け入れが可能です。特に、単純労働を含めた就労が外国人に対して初めて認められた在留資格として話題になりました。
それぞれ管轄省庁が異なるため、受け入れ基準や申請の流れなどが各分野ごとに異なります。各分野ごとの解説ページのURLを上記に貼り付けていますので、ぜひ併せてご覧ください。
特定技能には「1号」と「2号」がある?
在留資格「特定技能」には「特定技能1号」と「特定技能2号」という2つの種類が存在します。
まず、「特定技能1号」の在留資格を取得することになり、一定の条件を満たした外国人は「特定技能2号」へ移行することが可能です。
上記は、特定技能1号と2号の比較表になります。
ここで注意が必要なのは、特定技能2号は、特定技能1号の次のステップとして設けられてはいますが、現状は「建設」もしくは「造船・舶用工業」の2分野のみが対象です。
しかし、2021年11月に特定技能2号移行対象職種を介護業以外の分野に拡大するとの発表がなされました。今後は、ほぼ全ての業種において特定技能2号への移行ができる可能性があるという点は留意しておきましょう。(参照:産経新聞 政府「特定技能2号」拡大検討 在留期限なし 2021年11月28日)
「特定技能1号」を取得するための条件は?
特定技能1号の在留資格を取得するには、大きく2つのルートが存在します。

①「特定技能評価試験」と「日本語試験」に合格するルート
繰り返しになりますが、特定技能の設立目的は、「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れ、人手不足を解消すること」です。この一定の専門性と技能を身につけているかを確認するため、特定技能1号になろうとする外国人へは「特定技能評価試験」と「日本語試験」の合格が求められています。
②「技能実習2号」または「技能実習3号」を良好に修了するルート
技能実習2号(在留期間:3年)または技能実習3号(在留期間:5年)を良好に修了した元技能実習生は、各産業分野における一定の技能を身につけており、日本語に関しても3年or5年の日本滞在により一定水準クリアしているということで、先にあげた2つの試験を受けることなく、特定技能1号へ移行することが可能です。
ただし、技能実習生時と同様の産業分野において、特定技能1号へ資格変更する場合に限られます。技能実習時と別の分野へ転職する場合は、転職先企業の産業分野における技能試験の合格が必須です。
技能実習制度について詳しく知りたい!という方は、「技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説」もご覧ください。
特定技能1号に必要な「特定技能評価試験」と「日本語試験」とは?
では、「特定技能評価試験」と「日本語試験」の詳細についてそれぞれ解説していきましょう。
特定技能評価試験
特定技能評価試験とは、12の産業分野において、即戦力として働くことができる知識や経験を持っているかを確認するための試験です。
基本はCBT方式(コンピューター・ベースド・テスティング)で実施されるため、コンピューター上で問題文を読み、回答していく形になります。しかし、一部の分野では実技試験も設けられています。
全て日本語で出題されるため、一定の日本語力も求められます。
特定技能評価試験の「管轄省庁」と「運営団体」の関連性
各12分野ごとに試験を監督する団体が存在し、その団体のWebサイトから試験情報を確認できます。以下各産業分野ごとの管轄省庁及び試験実施団体一覧になります。
日本以外でも実施されている?(二国間協定締結国)
この技能試験ですが、基本的には日本国内で指定の会場にて実施されることとなります。
一方で、二国間協定という政府間の協定を締結している以下の国でも実施されております。そのため、技能実習を修了せずとも、現地国で特定技能評価試験に合格することで来日できます。

ただし、後にも触れますが、上記全ての国で12分野全ての特定技能評価試験が実施されているかというと、そうでもありません。例えば、建設分野であれば、2021年度にベトナム・フィリピンで1回だけ開催されたことはありますが、以後国外試験は一度も実施されていません。
このように、国によっては試験が実施されていない分野があったり、実施されていたとしても、開催頻度が極端に少ないケースもあります。そのため、国外在住者を呼び寄せるパターンに関しては、まだまだ課題が多いというのが現状と言えます。
二国間協定についてもっと詳しく知りたいという方は、「【特定技能制度の二国間協定とは】特定技能送り出し国ごとの手続きをご紹介」もあわせてご確認ください。
「特定技能評価試験」の受験資格はある?
2020年3月までは以下に該当する人は受験資格が認められませんでした。
- 中長期在留者でなく、且つ過去に日本に中長期在留者として在留した経験がない人
- 退学・除籍留学生
- 失踪した技能実習生
- 「特定活動(難民申請)」の在留資格を有する人
- 技能実習など、当該活動を実施するに当たっての計画作成が求められる資格で現に在留中の人
しかし、2020年4月から在留資格を有している17歳以上の外国人(インドネシア国籍の方は18歳以上)であれば、誰でも受験することができるようになりました。
そのため、二国間協定を締結していない国(国外で技能評価試験を実施していない国)の在住者であっても、「短期滞在」等の在留資格を取得し、日本に来日している期間中に、技能試験を受験できるようになっております。もちろん、技能実習期間中など、他の在留資格で滞在している方であったとしても受験することが可能です。
ただし、不法残留者といった在留資格を有していない人は、引き続き受験は認められません。また、試験受験後45日間は次の試験を受験できませんので、ご注意ください。
各12分野にける「特定技能評価試験」の概要(スケジュール・申し込み方法など)
以下、それぞれの分野における簡単な試験概要と各管轄機関のURLを添付しておりますので、ご確認くださいませ。
介護分野
実技試験となっていますが、実際はコンピュータ上で回答いただくCBT方式になります。国内外問わず、試験の実施頻度が高く、国としても力を入れていることが伺えます。特に国内試験に関しては、毎月1,000名近くの受験者がおり、合格率も約65%〜72%程度で推移しています。ただ、国外試験の合格率に関しては、国や月によって約40%〜90%とばらつきがあります。
注意点として、介護分野のみ、特定技能評価試験に加えて「介護日本語評価試験」にも合格しなければなりません。
ビルクリーニング分野
イラスト等を見ながら行う判断試験に加えて、実際に作業を行う試験が課されます。一定の条件を満たしている場合(受験申請者が20名以上など)、出張型試験も実施しています。海外試験は直近で2022年7月にインドネシアで実施された程度でほとんど開催されていません。合格率は国内試験で概ね70%となっています。
製造3分野
製造業の中でも、鋳造・ダイカストなどと19の区分に細分化され、それぞれCBT方式の学科試験がメインに実施されています(溶接区分は実技試験も課されます)。2022年度は年3回実施されていますが、合格率はプリント配線板製造区分以外は0〜25%とかなり低い水準となっていますので、合格するには一定のハードルがある点にご注意ください(2022年7月の試験結果)。
建設分野
建設業は、さらに18の試験区分に細分化され、それぞれCBT方式の学科試験と実技試験が課されていました。
しかし、2022年8月に区分の統廃合がなされたため、以後は「土木」「建築」「ライフライン・設備」の新区分で試験が組まれております。旧区分では、全く試験が実施されていない区分もありましたが、新区分移行によりほぼ毎月試験が実施されるようになっています。ただ、国外試験に関しては過去ベトナムとフィリピンで1度開催されただけで、以後行われていません。
国内試験の合格率は40%〜60%程度で、区分によって大きく変動してきます。詳しくは一般社団法人建設技能人材機構HPの試験結果をご覧ください。
造船・舶用工業分野
溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組み立ての6区分に細分化されます。国内試験の場合、集合形式と出張形式の2つの実施パターンがあり、集合形式は年に1回程度実施されています。2022年の第二回集合形式試験での合格率は0%でした。一方、出張形式での試験合格率はかなり高く、ほぼ100%となっています。国外試験は2022年度は一度も開催されていません。
自動車整備
学科試験とイラスト等を用いた状況判断等試験を行います。国外試験はフィリピンで実施されており、国内・フィリピン共にほぼ毎月試験が実施されています。受験者数が公表されていないため、合格率は算出できなくなっています。
航空分野
年に4回、東京と大阪で試験が実施されています。2022年の合格率は60%〜80%程度で比較的高い合格率となっています。2023年度は、フィリピン・ネパール・インドネシアで国外試験が開催される予定です。
宿泊分野
CBT方式で学科試験と口頭での判断等試験が実施されます。2022年度は国内で年4回程度実施されています。国外では、過去ミャンマーで実施されていましたが、2022年度はネパール、インドネシアで開催されています。国内試験の合格率は50%前後となっており、多少ハードルが高くなっています。
農業分野
畜産農業と耕種農業の2つの区分に細分化されます。学科試験と実技試験が実施されますが、双方ともに正誤式及び択一式試験になります。国内外でほぼ毎月試験が実施されており、合格率も80%〜90%とかなり高い水準となっています。
漁業分野
漁業と養殖業の2つの区分に細分化されます。学科試験と実技試験が実施されますが、双方ともにCBT方式で実施されます。国外ではインドネシアでも実施されており、国内試験とあわせて比較的高い頻度で開催されています。合格率はばらつきがあるのですが、約40〜50%程度です。
飲食料品製造業分野
マークシートを活用したペーパーテスト方式になります。HACCP等の一般的な衛生管理に関する内容が出題されます。国外ではフィリピン、インドネシアで実施されており、合格率は約60%程度となっています。国内試験においても合格率は75%程度と高い水準となっています。
外食分野
マークシートを活用したペーパーテスト方式になります。飲食料品製造業と同じく、HACCP等の一般的な衛生管理に関する内容が出題されます。海外でも開催されており、合格率は67%程度となっています。国内試験においても、合格率は60%程度で徐々に合格率が上がってきています。
日本語試験
日本語試験とは、特定技能での就労を望む外国人の日本語能力を測る試験です。
日本語能力を測る試験には大きく2種類あり、介護分野のみ独自試験を追加で運用している形になります。
特定技能1号資格を取得するには、いずれかの試験を受験した上で、合格ラインを越えなければなりません。
①日本語能力試験/JLPT
まず一つ目の日本語試験は「日本語能力試験/JLPT」です。
日本語能力試験/JLPTは、日本語を母国語としない外国人の日本語能力を測定する試験で、国際交流基金と日本国際教育支援協会によって設立されました。
試験実施日
試験実施日は毎年7月と12月の第一日曜日です。
申し込み期間と申し込み方法
国内で受験する場合、試験日程はそれぞれ2月上旬、7月上旬に公式サイトで確認できるようになります。申し込み期間は以下の通りです。
7月試験: 3月下旬から4月中旬に申込み
12月試験: 8月下旬から9月中旬に申込み
申し込みも公式サイトから実施できるようになっています。海外受験の場合は、各国の実施機関によって申し込み方法や申し込み期間が異なるため、あらかじめ試験の実施都市や実施機関を調べるようにしましょう。
試験の実施場所
国内においては47都道府県それぞれで実施されます。海外の場合、実施回ごとに異なりますので公式サイトのこちらのページを参照してください。
合格ライン
特定技能評価試験における合格ラインとしては、N4以上が求められます。
②国際交流基金日本語基礎テスト/JFT-Basic
二つ目の日本語試験は「国際交流基金日本語基礎テスト/JFT-Basic」です。
国際交流基金日本語基礎テスト/JFT-Basicは、就労を目的として来日する外国人が、日常生活でのコミュニケーションに必要な日本語能力を持っているかを判定します。
就労を前提としたテストであるため、日本語能力試験/JLPTよりも実践的な内容となっています。
試験実施日
日本語能力試験/JLPTよりも高い頻度で実施されている上、毎月日程も異なります。日本含めた各国の試験実施スケジュール2021年度は、以下を参照してください。
申し込み期間と申し込み方法
各試験月のおおよそ1~2か月前に日程が発表され、申し込みも開始されることが多いです。
*申し込み方法は公式サイトの「受験予約の流れ」で確認可能です。
試験の実施場所
2021年度実施分については、日本に加えて以下の7か国で実施されます。
カンボジア
インドネシア
モンゴル
ミャンマー
ネパール
フィリピン
タイ
各年度で実施国も異なるため、毎回公式サイトを参照すると良いでしょう。
合格ライン
特定技能評価試験における合格ラインは、A2レベル以上となっています。
③介護日本語評価試験
介護分野においては、先の二つの試験に加えて、介護日本語評価試験にも合格する必要があります。この試験は、介護現場特有の用語や会話などの理解度を測るための試験です。
具体的な試験科目としては、「介護の言葉」「介護の会話・声かけ」「介護の文書」から構成されています。それぞれ各5問ずつ、合計15問出題され、試験時間は30分となっています。
試験のサンプル問題や申し込みなどの詳細情報は厚生労働省のHPから確認してください。
介護業については、「【特定技能】介護分野で従事できる業務や採用方法などを解説」で解説していますので、あわせてご確認ください。
特定技能評価試験の問題点
試験の概要について見てきましたが、一方で問題点があるのも事実なので以下解説していきます。
特定技能評価試験の合格率
ここまで特定技能評価試験について確認してきましたが、技能試験や日本語能力試験それぞれの合格率はどれくらいあるのでしょうか。
日本語試験の合格率
日本語試験の合格率はそれぞれ以下のようになっています。
- JLPT(N2認定率):55.9% /20年12月実施分
- JFT-Basic(A2認定率):39.4% /21年7・8月実施分
- 介護日本語評価試験:81.34% /21年8月実施分
先述の通りJFT-Basicの方がより実践的な内容であるため、JLPTよりも難易度が高いことが見て取れます。
技能試験の合格率
各試験によって公表されている試験実施月日が異なるものの、全体として60%前後の合格率となっています。
とはいえ、製造3分野は10%程度(21年8月実施分)の合格率となっている反面、農業分野や自動車整備分野は合格率が90%(21年9・10月実施分)を越えているなど、合格率が以上に低い分野と高い分野のバラつきが激しくなっています。そのため、自社の属する分野によっては、特定技能外国人の十分な応募者数を集めることができない、などといった弊害が出てくることが予想されますのでご注意ください。
特定技能評価試験の実施回数
すでにご覧いただいた通り、分野ごとの試験の実施回数に関しても足並みが揃っていません。毎月実施している分野もあれば、年に2-3回しか実施していない分野もあります。年々試験実施回数は増えてきているとはいえ、まだまだ十分な回数を開催できているとは言えない状況です。
また、国外試験の実施に関しても同様で、国内ではやるが海外では一切実施していない分野もあります。(外食業では、ベトナムで試験を実施していないので、わざわざカンボジアに行き試験を受験しているベトナム人がいます。)
試験の実施回数及び国外試験の実施状況に関しても、問題点と言えるでしょう。
まとめ
今回は在留資格「特定技能1号」を取得するために必要な試験について、詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。
各分野における試験詳細については、本文中でもご紹介している各団体のページも参照して、リサーチしてみてください。
もしより詳細を知りたい、特定技能外国人の受け入れや委託先を変更したいという場合には、ぜひこちらのお問い合わせフォームからご連絡くださいませ。

中村 大介
株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。