特定技能【自動車整備業】で外国人を雇用するためには?|受け入れ条件や費用・業務内容・試験などを徹底解説!

特定技能【自動車整備業】で外国人を雇用するためには?|受け入れ条件や費用・業務内容・試験などを徹底解説!

最近、注目を集めている「特定技能」。この記事では、特定技能「自動車整備業」で受け入れることができる業務区分や仕事内容、採用の流れ、要する費用、試験情報などを徹底的に解説していきます。 技能実習生を既に雇用していて特定技能への移行を考えているなど特定技能外国人の雇用を検討されている事業者様は、ぜひご一読ください。

目次

特定技能「自動車整備」とは?

特定技能「自動車整備業」は、2019年4月に設けられた新たな就労系在留資格「特定技能」の1つです。後ほどご紹介する試験に合格すれば、日常点検整備定期点検整備分解整備、の作業に従事することが可能です。

在留資格「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたもので、この制度によって、日本国内において特に人手不足が深刻とされる産業分野で、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の活用を可能としました。

「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

特定技能「自動車整備業」で特定技能が認められた背景

「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」によると、特定技能が設立される前の2017年において、自動車整備分野の有効求人倍率は3.73倍であったことが記載されています。

こういった状況から自動車整備業界も深刻な人手不足であると判断されました。

またこのまま何も手を打たずに推移した場合、5年後において13,000人程度の人手不足が生じると推計され、自動車整備分野においても特定技能外国人の受け入れが認められたというわけです。

特定技能「自動車整備業」で、特定技能外国人は何人いる?

では、現在「自動車整備業」では何名の特定技能外国人が働いているのでしょうか。

特定技能外国人在留者数
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数令和4年12月末現在

日本に在留する特定技能外国人は、2022年12月末時点で、130,915名です。同年6月末時点では87,471名だったので、半年で40,000名以上増加していることになります。

自動車整備業では1,738名滞在しており、6月末時点では1,220名であったため、半年間約500名も増加していることから、今後もこの傾向が続いていくことが予想されます。

特定技能「自動車整備業」の基本情報を教えて!

それでは、特定技能「自動車整備業」の内容をみていきましょう。

業務区分|従事できる業務

自動車整備分野において特定技能外国人が従事できる業務は大きく、①日常点検整備②定期点検整備③分解整備の3つのカテゴリーに分かれています。

①日常点検整備

日常点検整備は、車のユーザーでも実施できる簡単な点検のことを指し、具体的にには以下の業務が想定されます。

  • ボンネットを開けてブレーキ液や冷却水、エンジンオイルの量を確認
  • 車の周りをまわりながらタイヤの亀裂や損傷の有無を確認
  • エンジンのかかり具合や異音の有無、ブレーキの利き具合などを確認

②定期点検整備

定期点検整備は、一定期間ごとに行う大掛かりな点検のことを指し、基本的には車のユーザーでは対応が難しくなります。具体的には以下の装置などの不具合を防止するための摩耗や損傷の確認があたります。

  • ステアリング装置
  • ブレーキ装置
  • 走行装置
  • 電気装置

③分解整備

分解整備とは以下のような重要部品を取り外して行う整備のことを指します。

  • エンジン
  • クラッチ
  • トランスミッション
  • ブレーキ
  • ギアボックス

関連業務

この他、以下のような関連業務に付随的に従事することも可能です。ただし、関連業務だけに従事することはできませんので、注意が必要です。

・整備内容の説明及び関連部品の販売
・部品番号の検索、発注作業
・車枠車体の整備調整作業
・ナビやETC等の電飾品の取付作業
・自動車板金塗装作業
・洗車作業
・下廻り塗装作業
・車内清掃作業
・構内清掃作業
・部品等運搬作業
・設備機器等清掃作業

雇用形態・給与・雇用できる期間は?

雇用形態としては直接雇用が求められます。そのため、パートやアルバイトではなく、フルタイムの正社員で雇用する形になります。

報酬についても基準が設けられており、同等業務に従事している日本人社員と同額以上の報酬を支払う必要があるのです。もちろん、各種手当や福利厚生施設の利用等、日本人と同じ待遇で処遇しなければなりません。外国籍であることを理由に、差別的な扱いを行うことは禁止されていますので、ご留意ください。

雇用期間について、特定技能「自動車整備業」では、最大5年しか日本に在留することができません。

ただし、在留期間の通算上限がない特定技能2号の対象分野について、現在の2業種(建設・造船)から拡大する方向で検討されており、将来的に自動車整備分野も5年を超えて雇用できる可能性が非常に高いです。

雇用できる人数は何人まで?

この特定技能制度ですが、建設業と介護業に関しては、受け入れ事業所の常勤職員数未満しか雇用できないと定められています。

しかし、「自動車整備業」においては、企業ごとに受け入れできる人数の制限は現状設けられていません。そのため、特定技能外国人を1社で何名でも雇用できるようになっています。

在留資格「技能実習」との違いは?|二輪自動車も可能

以下に「特定技能」と「技能実習」の違いを取りまとめました。

特定技能技能実習
設立目的労働力の確保技能の移転による国際貢献
受け入れ人数制限制限なし常勤職員数に応じて制限あり
残業時間の制限36協定の範囲内
(日本人と同等)
原則月45時間以内
転職可否可能不可
書類手続き申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿は少ない
申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿も煩雑
家族の帯同不可
(特定技能2号になると可能)
不可

特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」との認識になります。

対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」であるとの認識になります。

このように設立目的が異なるため、様々な違いが存在します。最たる例としては、技能実習では、「転職」という概念が存在しませんが、特定技能では同業種であれば無制限に転職が可能となっています。

また、二輪自動車のみの事業場について、技能実習制度では外国人を受け入れることができませんでしたが、特定技能制度では、受け入れることが可能です。

「特定技能」と「技能実習」の違いについてより詳しく知りたい方は、「【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法」をご覧ください。

外国人が満たすべき条件

ここからは自動車整備分野における特定技能の在留資格を取得するための条件について、お話していきます。

 以下の二つのいずれかの条件を満たした外国人だけ、「特定技能」として、働くことができます。

①試験に合格する
 自動車整備分野特定技能評価試験、日本語能力試験
②技能実習を修了する
 技能実習2号を良好に修了する。※3号修了者も可能です。

①試験に合格する

まずは、「自動車整備分野特定技能評価試験」と「日本語能力試験」をクリアするルートを見ていきましょう。

自動車整備分野特定技能評価試験

試験概要は以下のとおりになりますので、ご確認ください。なお、試験の詳細は、一般社団法人「日本自動車整備振興会連合会」のHPも併せてご確認ください。

試験試験内容形式問題数試験
時間
学科
試験
①構造、機能及び取扱法に関する初等知識
②点検、修理及び調整に関する初等知識
③整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
④材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識
真偽法(○×式)30問60分
実技
試験
①簡単な基本工作
②分解、組立て、簡単な点検及び調整
③簡単な修理
④簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
状況設定において正しい判別、判断を行わせる方法3問20分

日本語能力試験

日本語能力試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。

日本語能力試験N4以上
国際協力基金日本語基礎テストA2以上

N4およびA2は、基本的な日本語を理解できるレベルと考えていただいて問題ありません。この他のレベルについては、こちらをご参照ください。

②「技能実習」を修了する

この特定技能ですが、実は技能実習2号を良好に修了した外国人は先にあげた2つの試験を受験することなく移行することが可能です。※ 良好とは、「技能実習計画を2年10ヶ月以上修了」している状態を指します。

ただし自動車整備以外の分野技能実習2号を修了しても試験は免除されず改めて特定技能評価試験を受験しなければなりません。

技能実習制度について詳しく知りたい方は、「技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説」で詳細をご確認ください。

実際に雇用する際に注意すべきポイントは?

前述のとおり、「試験に合格」もしくは「技能実習を修了」している方であれば、基本的には特定技能の要件を満たしていると言えます。

ただし、以下のいずれかに当てはまる場合申請で不許可になってしまう可能性が出てきますので、注意が必要です。いずれも元留学生の方を採用する場合に注意が必要な項目となってきます。

・住民税、国民健康保険料の滞納がある
・留学中、週28時間以上アルバイトしていた
・留学中、学校を退学していたり、出席状況が悪い

特に、2番目の「週28時間以上のアルバイト」は、発覚した場合、ほぼ不許可になってしまうでしょう。(実際に弊社でも不許可事例があります)

留学生は、資格外活動許可を取得することで、週に28時間までアルバイトをすることが可能ですが、それ以上働いてしまうと入管法違反になってしまいます。バレないだろうと思って週28時間以上アルバイトをしている方もいますが、「住民税の課税・納税証明書」から容易に確認可能です。

そのため、面接時にしっかりと上記項目については確認しておくようにしましょう。

企業が特定技能外国人を採用するまでの流れ

続いて、自動車整備業で特定技能外国人を受け入れる流れや、受け入れ企業側に求められる条件などについて確認していきましょう。なお、外国人を雇用する企業のことを受け入れ機関と呼びます。

特定技能外国人の「受け入れ機関」としての要件を満たす

特定技能外国人を受け入れるにあたって、受け入れ機関は以下の基準を満たす必要があります。

特定技能外国人の受け入れ企業が満たすべき基準一覧
法務省「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」をもとにジンザイベースが作成

特に、支援体制に関する基準に関しては、直近2年以内に外国人の受け入れ実績や生活支援の担当業務に従事した経験のある従業員がいない場合、満たすことができません。こういった場合、「登録支援機関」という第三者機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。

登録支援機関については、ぜひ「【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」も併せてご覧ください。

特定技能「自動車整備業」での受け入れ基準を満たす

受け入れ機関としての基準に加え、自動車整備分野特有の要件を満たさなければなりません。

具体的には以下の要件が設けられています。

要件①:外国人を受け入れた後、4ヶ月以内に国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員になること
要件②:協議会に対し必要な協力を行うこと
要件③:国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
要件④:道路運送車両法第 78 条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること
要件⑤:登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合、以下の全ての条件を満たす登録支援機関に委託すること
・上記①~③の条件を満たすこと
・自動車整備士1級若しくは2級の資格を有する者又は自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと

具体的な募集〜入社までの流れ

特定技能外国人の受け入れの流れについては、基本的に以下のようになります。 国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってくる点はご注意ください。

特定技能外国人を呼び寄せる場合の手続きの流れ

ステップ①:人材募集・面接

まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。 

ステップ②:特定技能雇用契約の締結

無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。

ステップ③:1号特定技能支援計画の策定

次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。

特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上は勿論のこと、日常生活面での支援も行う必要があります。

次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。

こちらの支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポートを受けることが可能です。

ステップ④:在留資格認定・変更申請

続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。

国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。

この時に用意すべき書類は大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • 外国人本人に関する書類
  • 受け入れ機関に関する書類
  • 分野に関する書類

それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。

また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。そのため、特定技能保持者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。

ステップ⑤:ビザ申請

こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。

無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。

ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)

ステップ⑥:就業開始

無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。

なお、より詳細情報を知りたい方は「【特定技能外国人の採用方法】実務で使える!採用の流れから必要な手続きノウハウまで徹底解説」をあわせてご覧ください。

特定技能外国人を雇用する費用はどのくらい?

最後に、自動車整備業で特定技能外国人を雇用する際に発生する費用について見ていきましょう。

ざっくりとした費用概算
海外からの呼び寄せ国内で特定技能へ移行
送り出し機関への手数料20万円〜60万円0円
人材紹介会社への手数料0円20万円〜40万円
在留資格申請に関する委託費用10万円〜20万円
登録支援機関への支援委託費用年間24万円〜36万円(一人当たり2〜3万円 / 月)
在留期間更新申請に関する委託費用5万円〜15万円

国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点はご留意ください。

また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。

申請書類の作成サポートを登録支援機関や行政書士に委託した場合、初回申請及び、毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに費用が発生してきます。

最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。

あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。

より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。

まとめ

今回は特定技能における自動車整備分野について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は本文中でもご紹介した登録支援機関として、受け入れ企業様をサポートさせていただいております。

支援計画の策定や実施は勿論、特定技能外国人の人材紹介サービスなども行っておりますので、以下のお問合せフォームから気軽にご相談ください。

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カテゴリ:
特定技能
タグ:

中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。