この記事は、特定技能における自動車整備分野で従事できる業務や雇用期間、受け入れの流れなどをまとめてご紹介していきます。自動車整備分野での特定技能外国人の受け入れを検討されている方は、是非ご一読ください。
特定技能外国人が受け入れ可能な分野
特定技能とは、2019年4月に新たに設けられた就労系在留資格です。
「技術・人文知識・国際業務」のような従来の就労系在留資格とは異なり、国内の人手不足の解消を目的として設立されたため、単純労働を含めた職種で外国人労働者の受け入れができるという特徴を持ちます。
とはいえあらゆる業界で受け入れが可能というわけではなく、国内において特に人手不足が深刻とされている以下の産業分野でのみ、受け入れることができます。
①建設
②造船・舶用工業
③自動車整備
④航空
⑤宿泊
⑥農業
⑦漁業
⑧飲食料品製造業
⑨外食業
⑩素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
⑪介護
⑫ビルクリーニング
この記事では上記の産業分野のうち、自動車整備分野を取り上げてお話していきたいと思います。
また、特定技能制度の概要について知りたい!と言う方は、こちらの記事に詳細を取りまとめていますので、あわせてご確認ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
特定技能における自動車整備分野の概要
まずは特定技能における自動車整備分野の概要について確認しておきましょう。
自動車整備業界の現状
「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」によると、特定技能が設立される前の2017年において、自動車整備分野の有効求人倍率は3.73倍であったことが記載されています。
こういった状況から自動車整備業界も深刻な人手不足であると判断されました。
またこのまま何も手を打たずに推移した場合、5年後において13,000人程度の人手不足が生じると推計され、自動車整備分野においても特定技能外国人の受け入れが認められたというわけです。
従事できる業務
自動車整備分野において特定技能外国人が従事できる業務は大きく3つのカテゴリーに分かれています。
日常点検整備
日常点検整備は、車のユーザーでも実施できる簡単な点検のことを指します。
ボンネットを開けてブレーキ液や冷却水、エンジンオイルの量を確認したり、車の周りをまわりながらタイヤの亀裂や損傷の有無を確認したりすることなどが挙げられます。
他にもエンジンのかかり具合や異音の有無、ブレーキの利き具合なども確認することになるでしょう。
定期点検整備
定期点検整備は、一定期間ごとに行う大掛かりな点検のことを指し、基本的には車のユーザーでは対応が難しくなります。
定期点検整備ではステアリング装置やブレーキ装置、走行装置などの各種装置の不具合を防止するため、摩耗や損傷などがないかを確認していきます。
分解整備
分解整備とはエンジンやブレーキ、ギアボックスといった重要部品を取り外して行う整備のことを指します。
主に原動機やクラッチ、トランスミッション、ギアボックスといった装置を取り外して、整備や改造を行う作業が中心となります。
雇用形態・報酬
自動車整備分野において特定技能外国人を雇用する場合の雇用形態は、直接雇用に限られます。
つまり派遣といった雇用形態は認められておらず、基本的には正社員などの形態で雇用することになるのです。
報酬については、同じ自動車整備業務に従事している日本人と同等以上の報酬を支払うことが求められます。
なお、特定技能制度において、派遣で受け入れができる分野については、以下の記事で詳しく解説しております。
▶︎【特定技能って派遣できる?】受け入れ方法や要件、注意点などを解説
雇用できる期間
自動車整備分野において特定技能外国人を雇用できる期間は、現在のところ最長5年となっています。
自動車整備分野は、在留期間の通算上限5年が設けられている特定技能1号のみでの受け入れとなっているためです。
ただし在留期間の通算上限のない2号については現在拡大が検討されており、自動車整備分野も拡大が検討されている分野に含まれているため、将来的に5年を超えて雇用できる可能性はあるでしょう。
受け入れ人数
自動車整備分野の特定技能外国人の受け入れ目標としては、2019年から5年間で最大7,000人となっています。
この目標人数は自動車整備分野における上限となっているものの、企業レベルでの受け入れ人数の上限は設けられていません。つまり、企業単位であれば、何名でも特定技能外国人の雇用が可能となっています。
2022年3月末時点における自動車整備分野での受け入れ人数は986人となっており、進捗としては14%になっています。
受け入れ人数については、以下の記事でも詳しく解説しています!
▶︎【特定技能の受け入れ人数】人数制限の有無や現状の受け入れ状況を解説
特定技能外国人を雇用する際の費用目安
特定技能外国人を雇用する場合、先述の通り日本人社員と同等以上の報酬が必要になる上、以下のような費用も別途掛かってくることになります。
特定技能外国人を雇用するまでにかかる費用
- 海外から呼び寄せる場合に必要な送り出し機関への手数料
新たに呼び寄せる場合は、送り出し機関を通さなければいけません。 - 人材紹介への手数料
紹介手数料は、年収の◯◯%というところもあれば、単純に1名あたり◯◯円といったケースもございます。 - 在留資格申請に関する委託費用
在留資格「特定技能」を取得するため、出入国管理庁へ申請する必要があります。
書類の作成及び申請取次を行政書士法人・登録支援機関に委託する際に発生する費用となります。
特定技能外国人の雇用開始後にかかる費用
- 登録支援機関への支援委託費用
就労開始後に発生する費用です。
特定技能人材への義務的支援を登録支援機関に委託した場合に、1名単位で発生してきます。 - 在留資格更新申請に関する委託費用
在留許可を受けたとしても、1年に1度在留期間更新のため、出入国管理庁へ更新申請する必要があります。
ざっくりとした費用イメージとしては、以下のようになるでしょう。
※ 送り出し機関や人材紹介会社、登録支援機関によって変動します。
各費用イメージ
- 送り出し機関への手数料:20~40万円(海外から呼び寄せる場合)
- 人材紹介会社への手数料:30〜90万円(年収の10〜30% - 理論年収300万円想定
- 在留資格申請に関する委託費:10~20万円
- 登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円(一人当たり2~3万円/月)
- 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円
特定技能の受け入れ費用については、以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
▶︎【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介
自動車整備分野で特定技能の在留資格を取得するには
続いて自動車整備分野で特定技能の在留資格を取得するための条件について、見ていきましょう。
特定技能評価試験をクリアする
一つ目の条件は特定技能評価試験をクリアするというものです。
特定技能評価試験は技能評価試験と日本語能力試験の2つの試験からなり、双方の試験に合格しなければなりません。
それぞれの試験について、簡単に見ていきましょう。
技能試験
技能試験とは、特定産業分野における技能や知識を有しているかを確認するための試験で、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会によって実施されます。
技能試験は学科試験と実技試験に分かれており、学科試験において65%、実技試験は60%以上の得点を得れば合格となります。先の一般社団法人日本自動車整備振興会連合会のページにサンプル問題が掲載されていますので、あわせてご確認ください。
またここで紹介している技能試験以外にも、自動車整備士技能検定試験3級に合格することで、技能試験における水準は満たしたと判断されます。
日本語能力試験
日本語能力試験は、特定技能外国人が日本で働く際に、最低限有しておくべき日本語能力を持っているかを確認するための試験となり、以下の2つの試験が設けられています。
- 日本語能力試験JLPT
国際交流基金と日本国際教育支援協会が設立した日本語試験であり、特定技能においてはN4以上に合格することが求められます。
詳細は日本語能力試験公式HPをご確認ください。 - 国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basic
国際交流基金が主催する日本語試験で、特定技能の在留資格を取得するには、A2レベル以上に合格する必要があります。
詳細については国際交流基金日本語基礎テスト公式HPを併せてご参照ください。
上記のうち、どちらかの試験を受験し、それぞれの合格基準を満たすことが求められるのです。
技能実習2号を良好に修了
二つ目の条件は技能実習2号を良好に修了するというものです。
技能実習2号を良好に修了している場合、先に挙げた特定技能評価試験は免除となるため、在留資格変更許可申請を実施することで、特定技能の在留資格を取得することができます。
とはいえ試験が免除となるのは、自動車整備分野における技能実習を修了している場合に限りますので、その点は注意しましょう。
自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れるには
次に自動車整備分野において特定技能外国人を受け入れる際、企業側に求められる基準について確認していきます。
受け入れ機関としての基準を満たす
まずご紹介するのは、受け入れ機関として満たすべき基準です。
受け入れ機関として満たすべき基準は以下の通りです。

支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。
登録支援機関については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説
自動車整備分野特有の要件を満たす
自動車整備分野において特定技能外国人を受け入れる場合、以下の要件も満たす必要があります。
要件①:国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員になること
要件②:協議会に対し必要な協力を行うこと
要件③:国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
要件④:道路運送車両法第 78 条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること
要件⑤:登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合、以下の全ての条件を満たす登録支援機関に委託すること
・上記①~③の条件を満たすこと
・自動車整備士1級若しくは2級の資格を有する者又は自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと
自動車整備分野における特定技能外国人の受け入れの流れ
最後に自動車整備分野において特定技能外国人を受け入れる流れについてご紹介します。
受け入れまでの流れ
受け入れまでの流れは、基本的に以下の通りです。
- ステップ①:人材募集・面接
- ステップ②:特定技能雇用契約の締結
- ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
- ステップ④:在留資格認定・変更申請
- ステップ⑤:就業開始
- ステップ⑥:自動車整備分野特定技能協議会へ加入
ステップ③にある1号特定技能支援計画の策定については、先述の要件を満たした登録支援機関への委託が可能です。
また自動車整備分野特定技能協議会への加入は、特定技能外国人を初めて受け入れた日から4か月以内に実施しなければなりません。
特定技能の採用の流れに関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
▶︎【特定技能外国人の採用方法】採用の流れから必要な手続きまで徹底解説
受け入れに必要な書類
特定技能外国人を受け入れる場合、主に在留資格に関する諸申請と協議会への加入手続きが必要となります。
各手続きに必要な書類は以下のWebページからご確認ください。
海外から呼び寄せるケース
国内に在留している外国人労働者を受け入れるケース
協議会への加入
まとめ
今回は特定技能における自動車整備分野をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は本文中にご紹介した登録支援機関として活動しており、支援計画の策定から支援業務の実行に至るまでサポートさせていただいております。
また特定技能外国人を含めた外国人労働者の人材紹介サービスも提供しておりますので、少しでもご興味ありましたら、一度お気軽にご相談ください。