特定技能【農業】で従事できる業務分野や試験、技能実習との違いなどを徹底解説!

特定技能【農業】で従事できる業務分野や試験、技能実習との違いなどを徹底解説!

最近、注目を集めている「特定技能」。この記事では、特定技能「農業」で受け入れることができる業務分野や仕事内容、採用の流れから費用、試験情報まで徹底的に解説していきます。 特定技能「農業」では、派遣形態での雇用が可能などの特色があります。農業分野で特定技能外国人の雇用を検討されている事業者様は、ぜひご一読ください。

目次

特定技能「農業」とは?

特定技能「農業」とは2019年4月に新たに創設された就労系在留資格「特定技能」の1つです。「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたもので、この制度が創設されたことで、日本国内において特に人手不足が深刻とされる産業分野において、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の活用が可能となりました。
「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

農業業界の現状

まずは農業業界の現状についてお話していきます。以下のグラフをご覧ください。

農畜産業分野の有効求人倍率
グラフ引用:農業分野の特定技能制度

上記のグラフを見てみると、農業分野における有効求人倍率は、全産業の有効求人倍率の平均を上回っていることがわかります。

特に畜産作業員に関しては、2019年において全産業平均よりも2倍近い倍率となっており、人手不足が顕著であることも読み取れるでしょう。

こういった状態を改善するために、農業分野においても外国人労働者の活用が注目され、特定技能の対象分野となったと言えます。

農業で特定技能外国人は何人くらいいるの?

特定技能外国人の人数

日本に在留する特定技能外国人は、2022年12月末時点で、130,915名です。同年6月末時点では87,471名だったので、半年で40,000名以上増加していることになります。

そして、農業分野では現在16,459名滞在しており、1万人を超えている職種が数少ないことから、非常に人気の職種であるといえます。また、6月末時点での在留者数は約11,469名であったため、半年間で約5,000名増加しており、今後も増加していくことが予想されます。

特定技能「農業」の概要

では、特定技能「農業」分野の概要をみていきましょう。

受け入れることができる業務分野

農業分野における特定技能外国人が従事できる業務は、以下の2つの分野です。

  • 耕種農業全般の作業(栽培管理や農産物の集出荷作業、選別作業)
  • 畜産農業全般の作業(飼養管理や畜産物の集出荷作業、選別作業) 

もっとも、同じ農業者の下で作業をしている日本人従業員が、通常従事することになる関連業務についても付随的に従事することが可能です。例えば、以下のような業務が関連業務として該当してきます。

  • 農産物・畜産物の加工
  • 農畜産物の運搬、陳列又は販売の作業
  • 冬の除雪作業

耕種農業と畜産農業の両方を経営している場合

農業者が耕種農業と畜産農業の両方を経営している場合、畜産農業全般区分の特定技能外国人は、耕種農業の業務に従事することができるのでしょか?
結論、可能です。
ただし、日本人従業員が、畜産農業の業務にあわせて耕種農業の業務にも従事している場合において、畜産農業全般区分の特定技能外国人耕種農業の業務に付随的に従事することが可能となっております。

注意点

実際に従事させる業務内容については、以下の注意が必要です。

「耕種農業」の業務内容には栽培管理業務が、「畜産農業」の業務内容には、飼育管理業務がそれぞれ必ず含まれていなければなりません。
関連業務にのみ専ら従事させることは他の分野同様に認められていません

認められていない業務に従事させると不法就労助長罪が適用される可能性がありますので、ご注意ください。

報酬と雇用形態|派遣での受け入れが可能

報酬としては、同じ作業をしている日本人従業員と同等以上の報酬を支払う必要があり、福利厚生などの手当についても同様に差別的な扱いはできません。

雇用形態については、農業分野における特定技能外国人はフルタイムの正社員で雇用するほか、派遣社員として受け入れることもできます。

季節や産地により繁閑差がある農業分野では、繁忙に合わせて複数の産地間において労働力の融通を効かせることを目的とし、派遣形態での受け入れが認められています。

ただし、派遣形態での受け入れには、別途満たさなければならない要件があります。詳細につきましては以下の記事でご確認ください。
▶︎【特定技能外国人は派遣形態で受け入れできるの?】受け入れ方法や注意点などの基本を解説

労働時間・休憩及び休日

日本人の農業従事者に関しては、労働時間や休憩及び休暇について、労働基準法の規定は適用除外となります。

しかし、特定技能制度に関しては、特定技能外国人労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合している必要があります。

そのため、基本的には労働時間、休憩及び休暇については労働基準法を参考にしながら過重な長時間労働にならないように、特定技能外国人の意向も踏まえつつ調整する必要があるでしょう。

また、在留資格申請時に出入国在留管理庁へ特定技能雇用契約書を提出することになるため、労働基準法に適合しない場合は指摘が入り、最悪在留資格の許可が降りない場合もありますので、ご注意ください。

雇用できる期間|特定技能1号と2号

農業分野の特定技能外国人を雇用できる期間には、上限が設けられています。特定技能には特定技能1号特定技能2号があり、現状農業分野は特定技能1号のみが受け入れの対象となっています。特定技能1号には在留期間の通算上限として5年が設定されているため、5年を超えての雇用はできません。

ただし在留期間の通算上限がない特定技能2号の対象分野について、現在拡大が検討されているため、将来的に農業分野でも5年を超えて雇用できる可能性はあるでしょう。

受け入れ人数|既に上限の45%

農業分野における特定技能外国人の受け入れ人数として、農業分野全体で2019年から5年間で36,500人を受け入れるという目標が設定されています。

この目標人数については農業分野全体の上限とされているものの、事業者ごとに上限が設けられているわけではありません。そのため、特定技能外国人を1社で何名でも雇用できるようになっています。

前述のとおり、2022年12月末時点における農業分野の特定技能外国人は16,459人となっております。2019年の創設からわずか3年半で農業分野全体の目標人数に対して45%の進捗となっています。今後も増加していくことが予想されますので、上限に達する前に、特定技能外国人の雇用を検討することをおすすめします。

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「特定技能」と「技能実習」の違いは?|転職が可能!

技能実習という制度をご存じの方は多いのではないでしょうか?

以下は、双方の違いを取りまとめた表になります。

特定技能技能実習
設立目的労働力の確保技能の移転による国際貢献
受け入れ人数制限制限なし常勤職員数に応じて制限あり
残業時間の制限36協定の範囲内
(日本人と同等)
原則月45時間以内
転職可否可能不可
書類手続き申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿は少ない
申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿も煩雑
家族の帯同不可
(特定技能2号になると可能)
不可

2つの制度はそもそもの設立目的が異なります。特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」です。対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」なのです。

このように設立目的が異なるため、様々な違いが存在します。最たる例としては、技能実習では、「転職」という概念が存在しませんが、特定技能では同業種であれば無制限に転職が可能となっています。

「特定技能」と「技能実習」の違いについてより詳しく知りたい方は、「【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法」をご覧ください。

特定技能「農業」を取得するためには

ここからは農業分野における特定技能の在留資格を取得するための要件について、お話していきます。

結論として、以下2つのいずれかの条件を満たした外国人が特定技能1号の在留資格を取得できます。

①試験に合格する
 農業技能測定試験、日本語能力試験
②技能実習を修了する
 技能実習2号を良好に修了する。※3号修了者も可能です。

①試験に合格する

特定技能になるためには、「農業技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格しなければなりません。

農業技能測定試験

「耕種農業全般」「畜産農業全般」のカテゴリーごとに試験が実施されています。

なお、農業分野の技能試験については、一般社団法人全国農業会議所が運営していますので、詳細はHPをご確認ください。

試験の概要は以下のとおりです。

試験科目学科試験・実技試験・日本語試験
問題数70問程度
時間60分
方式CBT方式
実施場所国内及び国外
試験実施方法基本的に毎月

実技試験については、イラストや写真から判断するペーパーテスト形式です。

合格率は他の分野と比べるとかなり高く、90%近くがクリアしている状況です。

試験サンプルは、こちらをご確認ください。

日本語能力試験

日本語能力試験は以下の2つの内いずれかを受け、それぞれ設けられた合格基準に達する必要があります。

日本語能力試験N4以上
国際交流基金日本語基礎テストA2以上

②技能実習2号を良好に修了

特定技能評価試験をクリアする以外の条件としては、技能実習2号を良好に修了するというものがあります。

農業分野における技能実習2号を良好に修了すれば、特定技能評価試験は免除となるのです。そのため在留資格の変更手続きを実施すれば、特定技能の在留資格を取得することができます。

ただし、技能実習と同じ職種でのみ無試験での移行が可能となっている点には、留意しておきましょう。

農業分野で特定技能外国人を雇用するためには?

次に農業分野で特定技能外国人を受け入れるための企業側の要件を解説していきましょう。なお、特定技能外国人を雇用する企業のことを、受け入れ機関と呼びます。

受け入れ機関としての基準を満たす

まず必須となるのは受け入れ機関としての基準を満たすという点です。
この基準については、農業分野に限らず全ての産業分野共通のものとなります。 

具体的には以下のような基準を満たさなければなりません。

特定技能の受け入れ企業が満たすべき基準一覧
法務省「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」をもとにジンザイベースが作成

支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。

農業分野特有の要件を満たす|農業特定技能協議会への加入

全分野共通の受け入れ要件とは別に、農業分野独自の受け入れ要件があります。

直接雇用の場合と派遣形態での受け入れ方法で要件が異なってきますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

直接雇用の場合
・過去5年以内に同一の労働者(技能実習を含む)を少なくとも6ヶ月以上継続して雇用した経験があること
・農業特定技能協議会に加盟し、必要な協力を行うこと
(特定技能外国人の受け入れ開始後4ヶ月以内に加盟しないと、受け入れ停止処分になります。)

農業特定技能協議会への加入はこちらをご確認ください。

派遣形態の場合
派遣先(受け入れ企業)となる事業者派遣元となる事業者
以下いずれかに該当


1.過去5年以内に同一の労働者を6ヶ月以上継続して雇用した経験があること

2.派遣先責任者講習その他これに準ずる講習を受講した者を派遣先責任者としている選任している
※派遣先企業は協議会に直接加入する必要はなく、あくまで派遣元が加盟する義務を負うことになります。しかし、協議会からの要請に関しては、派遣先企業であったとしても、必要な協力を行うことが求められます。







以下のいずれかに該当

1.農業又は農業に関連する業務を行っている者であること

2.地方公共団体又は1に掲げるものが資本金の過半数を出資していること

3.地方公共団体の職員又は1に掲げる者、その役員、職員が役員であること、その他地方公共団体又は1に掲げるものが業務執行に実質的に関与していると認められる者であること

4.国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定期間であること

※派遣先の対象地域に関しては、派遣元責任者が日帰りで派遣労働者からの苦情の処理を行いうる範囲という制限があります。そのため、極端な話、北海道の派遣元事業者が沖縄の企業に労働者派遣を行うことは現実的ではございません。

具体的な募集〜入社までの流れ

特定技能外国人の受け入れの流れについては、基本的に以下のようになります。 国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってくる点はご注意ください。

特定技能外国人を呼び寄せる場合の手続きの流れ

ステップ①:人材募集・面接

まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。 

ステップ②:特定技能雇用契約の締結

無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。

ステップ③:1号特定技能支援計画の策定

次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。

特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上は勿論のこと、日常生活面での支援も行う必要があります。

次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。

こちらの支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポートを受けることが可能です。

ステップ④:在留資格認定・変更申請

続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。

国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。

この時に用意すべき書類は大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • 外国人本人に関する書類
  • 受け入れ機関に関する書類
  • 分野に関する書類

それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。

また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。そのため、特定技能保持者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。

ステップ⑤:ビザ申請

こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。

無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。

ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)

ステップ⑥:就業開始

無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。

なお、より詳細情報を知りたい方は「【特定技能外国人の採用方法】実務で使える!採用の流れから必要な手続きノウハウまで徹底解説」をあわせてご覧ください。

特定技能外国人を雇用する費用はどのくらい?

最後に、宿泊分野で特定技能外国人を雇用する際に発生する費用について見ていきましょう。

ざっくりとした費用概算
海外からの呼び寄せ国内で特定技能へ移行
送り出し機関への手数料20万円〜60万円0円
人材紹介会社への手数料0円20万円〜40万円
在留資格申請に関する委託費用10万円〜20万円
登録支援機関への支援委託費用年間24万円〜36万円(一人当たり2〜3万円 / 月)
在留期間更新申請に関する委託費用5万円〜15万円

国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点はご留意ください。

また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。

申請書類の作成サポートを登録支援機関や行政書士に委託した場合、初回申請及び、毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに費用が発生してきます。

最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。

あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。

より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。

まとめ

今回は特定技能における農業分野について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は本文中でもご紹介した登録支援機関として、受け入れ企業様をサポートさせていただいております。

支援計画の策定や実施は勿論、特定技能外国人の人材紹介サービスなども行っておりますので、ご興味ありましたらぜひ以下のサービスサイトからお気軽にご相談ください。

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カテゴリ:
特定技能
タグ:

中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。