技能実習制度とは?受け入れ方法から注意点まで基本を徹底解説

この記事は、「技能実習がどんな制度なのか知りたい」、「技能実習制度のメリットやデメリットを押さえたい」、「技能実習生を受け入れる流れや注意点を知りたい」 という方に向けて、技能実習制度の概要や対象となる職種、受け入れ方などを分かりやすく解説しています。技能実習制度の利用を検討されている方や興味がある方は是非ご一読ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
技能実習制度の概要
はじめに技能実習制度の概要についてお話していきます。
技能実習制度とは?
技能実習制度とは、開発途上国を中心とした外国から技能実習生を迎え、母国では習得が困難な日本の技能を移転することで、その国の経済・技術発展に貢献することを目的とした制度です。
技能の移転を通じた国際貢献という制度趣旨から、技能実習生は「労働者」よりも「研修生」としての側面が強くなっています。
「出入国管理及び難民認定法」を根拠とし、1993年の研修制度が源流となっています。その後、さまざまな問題(劣悪な労働環境、人権侵害など)が発生し、度々法改正がなされています。
直近では、2017年に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行されたのを契機に、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を目的に「外国人技能実習機構」が設立されています。
法務省の統計データを参照すると、2021年6月末時点で日本に在留する外国人282万3565人のうち、12%(35万4104人)を技能実習生が占めています。永住者28%(81万7805人)に次ぐ在留者数を誇っています。
技能実習制度に関わってくる団体は?
以下5つの組織が技能実習生に関与してくる形となります。

実習実施者
技能実習生の受け入れ企業のことを指します。技能実習生を受け入れるには、外国人技能実習機構へ「技能実習計画」を提出し、認定を受けなければ、技能実習生の受け入れができません。また、受け入れ後に関しても、計画通りに実習を実施していない場合や人権侵害が認められた場合は受け入れ停止処分が課されることになります。
監理団体
外国人技能実習機構から許認可を受け、活動をしている非営利法人です。実習実施者へ技能実習計画の作成指導や受け入れ後の定期監査等を行います。適切な監査・指導ができていないと、許認可の取り消し処分を受けることとなります。
送り出し機関
各国送り出し国政府から認定を受けた外国法人です。技能実習生の募集や面接の調整、入国前の事前教育、査証(ビザ)申請を行います。
外国人技能実習機構
実習実施者、監理団体を監督する厚生労働省と法務省が所管する認可法人です。技能実習制度の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために2017年に設立されました。技能実習計画に認定や実習実施者・監理団体双方へ定期的に実地検査を実施しています。
出入国在留管理庁
日本に滞在する全ての外国人の在留管理を行っている法務省の外局です。在留資格に認定を行います。
技能実習生は何年働ける?(受け入れ方式と技能検定試験)
技能実習生は、「企業単独型」・「団体監理型」という2つの受け入れ方式が存在します。
- 企業単独型
海外の現地法人等に所属する職員を日本に呼び寄せ、技能実習を実施する方法 - 団体監理型
営利を目的としない団体(通称「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方法
また、技能実習生は、最長で5年間日本に滞在することが可能です。このうち、1年目、2-3年目、4-5年目で在留資格の区分が分かれており、以下のように呼称が異なります。(参考:公益財団法人 国際人材協力機構HP)
技能実習1号から2号に移行するためには、職業能力開発協会が実施・運営し、各職種ごとに実施される「技能検定試験」を受験し、合格しなければなりません。それぞれ実技試験と学科試験があり、基礎級に関しては両方合格(2回まで受験可能)しなければ、技能実習2号への資格変更申請ができません。
- 1年目:基礎級(実技・学科)
- 3年目:随時3級(実技のみで可)
- 5年目:随時2級(実技のみで可)

なお、技能検定試験の過去問題は、東京都職業能力開発協会のHPから閲覧することが可能です。また、窓口・郵送にて過去問題を購入することも可能ですので、ご興味ある方は東京都職業能力開発協会のHPからご覧ください。
技能実習制度の対象職種は?
技能実習生が従事可能な職種としては、基本的には以下の表に掲げた職種・作業が該当してきます。こちらの表に掲げている職種は、先に説明した技能検定試験を受験し、合格することで、技能実習1号➡︎技能実習2号へと移行することができ、最長5年日本に滞在することが可能です。(2022年4月現在、2号移行対象職種は以下の86職種158作業です)

一方で、上の表に記載のない職種・作業であっても、「同一の作業の反復のみによって習得できるものではないこと」かつ「適切な技能実習計画を作成し、認定を得る」ことができれば、1年のみ技能実習生として日本へ呼び寄せることが可能となります。
技能実習生は何人まで受け入れできる?
技能実習生は、受け入れ可能な人数に制限が設けられています。実習実施者の常勤職員数(社会保険加入者数)に応じて、受け入れ可能な技能実習生の人数は以下の表の通り変わってきます。(参考:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」)
また、受け入れ企業が外国人技能実習機構の定める基準に適合し、「優良な実習実施者」と認められた場合、先ほどの受け入れ可能人数枠を以下のように増やすことが可能です。
- 技能実習1号:基本人数枠の2倍
- 技能実習2号:基本人数枠の4倍
- 技能実習3号:基本人数枠の6倍
ちなみに、優良な実習実施者と認められると、技能実習3号の受け入れが可能になります。つまり、技能実習2号修了者を技能実習3号へ延長し、引き続き雇用するには優良な実習実施者であると認定を受けないといけないのです。
この優良な実習実施者かどうかを判定する基準は、以下外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」から抜粋しておりますので、ご覧ください。

合計で150点満点で6割以上獲得していれば、優良な実習実施者とみなされます。
また、監理団体に関しても、優良認定を受けることが可能です。ちなみに、優良な監理団体と認定を受けなければ、技能実習3号の監理を行うことができませんので、技能実習3号を見越して技能実習生を受け入れる場合は、監理団体が優良認定を受けているかを事前に確認しておくことをお勧めします。
技能実習生の送り出し国(対象国)・送り出し機関
技能実習生として受け入れができる国は、日本国政府と二国間協定(協力覚書)を締結した以下の国のみ(2022年6月時点)となっています。

技能実習生を受け入れる際には、必ず各国ごとに認定された送り出し機関を通さなければなりません。送り出し機関の役割としては、技能実習生の募集や事前教育(日本語など)、査証(ビザ)申請手続きなどが該当してきます。

受け入れ人数の多い国としては、 上図の通り、ベトナムが57%と半数以上を占めており、中国15%、インドネシア8%と続いているのが現状です。(2021年6月末時点)
特定技能制度との違い
技能実習制度とは異なる外国人の受け入れ方法として、特定技能制度というものがあります。
特定技能制度の目的は純粋に「国内の人材不足の解消」であり、「国際貢献」を目的とする技能実習とは理念が異なるわけです。
また受け入れ可能な職種も両制度では異なっており、技能実習では受け入れができない単純労働とされている業種・職種でも、特定技能では受け入れ可能となっています。
他にも様々な違いがあるので、特定技能と技能実習の違いのより詳細を知りたい方は下記記事をご確認ください。
▶︎【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法
また、特定技能制度の基本的な概要については、以下の記事をご覧ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
技能実習生の受け入れ方法
次に技能実習生の受け入れ方法について確認してみましょう。
ここでは現在受け入れの9割以上を占める「団体監理型」を前提として、話を進めていきます。
受け入れの流れ
技能実習生を受け入れる流れは、基本的に以下の6つのステップを踏みます。
ステップ①:監理団体への受け入れ申込み
まずは監理団体に技能実習生の受け入れに関する申し込みを実施することになります。
この時点で希望人数やどの国から受け入れたいのか、といった点を相談します。
ステップ②:面接・内定
続いて監理団体/送り出し機関から候補者を紹介してもらい、面接を実施しましょう。
双方問題なければ採用決定となります。
ステップ③:技能実習計画の策定と認定申請
採用が決まれば次に行うべきは、技能実習計画を策定することです。
策定した技能実習計画は外国人技能実習機構に申請し、認定を受けなければなりません。
ステップ④:在留資格の申請
無事技能実習計画の認定をもらえれば、次に在留資格の申請を行います。
申請に必要な書類を準備し、出入国在留管理庁に申請を実施することになります。
ステップ⑤:外国人の講習受講
技能実習生は入国後、監理団体が実施している入国後講習を1か月程度受講することになります。
ステップ⑥:実習開始
講習終了後、無事実習の開始となります。
受け入れる際の注意点
技能実習生を受け入れるにあたって注意すべき点は数多くあります。
その中でも代表的なものをご紹介しますので押さえておきましょう。
注意点①:業務の割合は適切か
技能実習は各業種・作業に応じて、必須業務と関連業務、周辺業務という3つの業務が設けられています。
このうち必須業務は全体の2分の1以上、関連業務は2分の1以下、周辺業務は3分の1以下と割合が決まっているので注意しましょう。
注意点②:技能実習日誌は適切に管理されているか
技能実習生を雇用する際、業務内容や安全衛生講習内容などを記録した技能実習日誌を作成する必要があります。
これを技能実習指導員が毎日記録し、保管する必要があるので忘れないように対応しなければなりません。
注意点③:住居の広さは適切か
技能実習生の住居に関しても細かく規定があります。特に寝室が一人当たり4.5平米以上確保されていないと、住居の規定を満たしていないとみなされ、技能実習計画の認定がおりません。また、住居費用の徴収額にも上限が設けられるケースもあり、全額技能実習生に負担させることはほぼ不可能です。そのため、受け入れ企業側で一定の住居費用を一部負担することが求められるのです。
注意点④:労働基準法は順守しているか
賃金は勿論、労働時間などの守らなければならない基準を順守できているかも重要です。特に注意が必要なのは、以下の2点でしょう。
- 月の残業時間数が45時間を超えていないか
例え特別条項を盛り込んだ36協定書を労基に提出していても、技能実習生は月に45時間までしか残業させることができません。 - 給与の未払いが発生していないか
残業時間の計算ミスなどで、1円でも未払いが発生していた場合に是正対象となってしまいますので、ご注意ください。
違反が発覚した場合、監理団体から労働基準監督署へ通報されてしまいますので、実習を担当する社員含め、全員が理解しておくべきでしょう。
注意点⑤:人権侵害行為がなされていないか
当たり前ではありますが、暴力・暴言等の人権侵害行為は一切認められていません。
よくあるケースとして、社長は技能実習生の受け入れに対する必要性を理解し、コンプライアンス意識もしっかりしているものの、現場の社員には理解されていないという場合があります。こういったケースだと、日本語能力・技術水準がまだ未熟な外国人が現場に配属されることにより、現場社員に一時的に負荷がかかり、暴力・暴言に繋がってしまうケースがあったりします。
そのため、経営層だけではなく、しっかりと現場にも人権侵害行為は一切禁止されていること、また技能実習生の受け入れの必要性を理解してもらう必要があると言えるでしょう。
さらに、在留カードやパスポート、預金通帳等の貴重品を取り上げる行為も禁止されていますので、間違っても失踪を防止するために会社で保管するなどという行為はしないようにしましょう。発覚した場合、認定取り消し処分を受けてしまいます。
技能実習制度の抱える問題
最後に技能実習制度の抱える問題を、4つの切り口でご紹介します。
転職ができないなど、「制度そのものの問題」
技能実習制度は、国際社会から制度自体に問題があると指摘されています。
2021年7月にアメリカの国務省が、日本の技能実習制度を問題視する発言をしたことも記憶に新しいのではないでしょうか。
問題視されている背景としては、実習ではなく実際には労働力として扱われているケースが多いことや、労働基準法の対象となる労働者であるにもかかわらず転職できないといった、労働者の権利を主張できないことなどが挙げられます。
劣悪な環境の中で、実習ではなく労働を強要されている技能実習生がいる、という事実も忘れてはいけません。 明らかな人権侵害や未払い賃金などの法令違反があった際は、他の企業へ移籍することも可能ですが、諸々の手続きをへなければなりません。
気軽に転職ができないからこそ、昨今ニュースを騒がせている「失踪」へと繋がってしまうケースも多々あるというのは事実でしょう。
送り出し機関・監理団体の問題
また送り出し機関や監理団体の問題も指摘されています。
技能実習生から法外な手数料を徴収したり、履歴書の改ざんを実施したりと、送り出し機関における問題も多く出てきているのが現状です。
また監理団体も本来非営利団体であるはずが、送り出し機関とリベートを含む不正な契約を取り交わしていたり、試験のビジネス化をしたりといったケースが報告されています。
上記を踏まえると、まずは適正な運用をしている監理団体を見極めることが重要になるでしょう。
受け入れ側の問題
技能実習の問題は受け入れ側の中にも潜んでいます。
2021年8月に厚生労働省が発表した技能実習の調査結果によると、受け入れ企業の70.8%で最低賃金を下回る報酬や長時間労働の強要といった、労働基準法違反が見つかったと報告されています。
上記のような労働関連法規の違反だけでなく、技能実習生に対して暴力や脅迫、パワハラやセクハラといった人権侵害を行ったというケースも少なくありません。
技能実習制度の目的は「労働力の確保」ではなく「国際貢献」です。
この点を重々に理解した上での制度活用が求められるのでしょう。
技能実習生側の問題
残念ながら技能実習生側にも問題はあります。
実習途中での失踪や途中帰国をしてしまう技能実習生もいますし、そもそも技能習得や語学力の向上に意欲を示さず、ちょっとした留学気分で来日してくる技能実習生も少なからず見受けられるのです。
また、同じ国籍者同士での詐欺被害にあってしまったり、喧嘩が発展して怪我をしてしまうなどの問題も増えてきているのも事実です。
この点は監理団体による候補者選びの精度を高めてもらうとともに、送り出し機関による事前講習などにも力を入れてもらうことで、ある程度避けることができます。
しかし、最後は受け入れ側の企業が、どれだけ技能実習生と向き合うことができるかが重要になるでしょう。
まとめ
今回は技能実習制度についてお話してきましたが、いかがでしたか。
国際社会に貢献することができる上、社内における人材不足の解消や活性化にも繋がる制度である一方で、技能実習制度には様々な問題があります。
外国人雇用を検討しているけど、技能実習生にするべきか、他の在留資格保持者を受け入れした方が良いのか、そもそも技能実習生以外の選択肢は何かあるのだろうか?とお悩みの企業様は、ぜひこちらのフォームからお問い合わせをお願いいたします。

中村 大介
株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。