【特定技能】漁業分野で従事できる業務や受け入れ方法などを解説

【特定技能】漁業分野で従事できる業務や受け入れ方法などを解説

この記事では、漁業分野で特定技能外国人が従事できる業務内容、雇用形態や報酬、採用の流れなど、基本について解説しています。漁業分野で特定技能外国人の受け入れをご検討されているご担当者様は、是非最後までご覧ください。

目次

特定技能外国人が受け入れ可能な分野

特定技能とは就労系在留資格の一種で、国内の人手不足解消のために2019年4月に新たに設けられました。

創設の背景から、従来の就労系在留資格では認められていなかった単純労働を含めた職種でも、外国人労働者の受け入れが可能となっています。

ただし特定技能で外国人労働者を受け入れることができるのは、国内で特に人手不足が深刻とされる以下の14の特定産業分野に限ります。

【特定技能外国人の受け入れ分野】
介護
②ビルクリーニング
素形材産業
産業機械製造業
電気・電子情報関連産業
建設
⑦造船・舶用工業
⑧自動車整備
⑨航空
⑩宿泊
農業
⑫漁業
飲食料品製造業
外食業

今回は上記の特定産業分野の中から漁業分野を取り上げて、詳しく解説していきます。

特定技能制度の概要について知りたい!と言う方は、こちらの記事に詳細を取りまとめていますので、あわせてご確認ください。
▶︎「特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説」

特定技能における漁業分野の概要

初めに特定技能における漁業分野の概要から押さえていきましょう。

漁業業界の現状

まずは漁業が特定技能の対象となった経緯について、特定技能が検討されていた当時の状況を振り返って確認してみます。

農林水産省の水産庁が発行している「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」によると、2017年時点での漁業分野における有効求人倍率は以下のような数値を示しています。

・漁船員:2.52倍
・水産養殖作業員:2.08倍 

他にも1998年には277,000人いた漁業分野の就業者は、2017年には153,000人まで減少しているというデータも示されています。

これらの状況を改善し、漁業が健全に営まれる状態を確保すべく、外国人労働者の受け入れを促進するという流れとなったのです。 

従事できる業務

漁業分野における特定技能外国人が従事できる具体的な業務としては、以下の2つのカテゴリーに分かれています。

漁業に関連した業務

  • 漁具の製作や補修
  • 水産動植物の探索
  • 漁具・漁労機械の操作
  • 水産動植物の採捕
  • 漁獲物の処理・保蔵
  • 安全衛生の確保

養殖業に関連した業務

  • 養殖資材の製作・補修・管理
  • 養殖水産動植物の育成管理
  • 養殖水産動植物の収穫(収獲)・処理
  • 安全衛生の確保

その他、上記の業務に従事する日本人が通常従事することになる関連業務に関しては、付随的に従事することができます。関連業務としては、具体的には以下のようなものが挙げられます。

漁業分野で特定技能外国人が従事できる関連業務一覧
特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 - 漁業分野の基準について- をもとにジンザイベースが作成

もちろん、関連業務にのみ専ら従事することは他の分野同様に認められていませんので、作業比率には注意しましょう。

雇用形態・報酬

漁業分野における特定技能外国人の雇用形態としては、正社員として直接雇用するパターンと、派遣労働者として受け入れるパターンがあります。

漁業分野については繁忙期や閑散期があり、地域間での労働力の融通といった漁業現場のニーズに対応する必要があるため、派遣での受け入れを可能としているのです。

ただし、派遣形態での受け入れには、別途満たさなければならない要件がございますので、以下の記事で詳細につきましてはご確認ください。
▶︎【特定技能外国人は派遣形態で受け入れできるの?】受け入れ方法や注意点などの基本を解説

報酬としては、同じ作業をしている日本人従業員と同等以上の報酬を支払う必要があり、福利厚生などの手当についても同様に差別的な扱いはできません。

労働時間・休憩及び休日

日本人の漁業従事者に関しては、労働時間や休憩及び休暇について、労働基準法の規定は適用除外となります。

しかし、特定技能雇用契約に関しては、特定技能外国人が健康で文化的な生活を営み、職場での能率を長期間にわたって維持するために、労働基準法その他の労働に関する法令の規定に適合している必要があります。

そのため、労働時間や休憩、休暇については労働基準法を参考にしながら過重な長時間労働にならないように、特定技能外国人の意向も踏まえつつ調整する必要があります。

また、在留資格申請時に出入国在留管理庁へ特定技能雇用契約書を提出することになるため、労働基準法に適合しない場合は指摘が入り、最悪在留資格の許可が降りない場合もありますので、ご注意ください。

雇用できる期間

漁業分野で外国人労働者を雇用できる期間は最長で5年です。

特定技能には特定技能1号と特定技能2号という在留資格がありますが、漁業分野が対象となるのは特定技能1号のみとなります。

特定技能1号には在留期間として通算上限5年が設けられているため、漁業分野では5年が最長となるわけです。

ただし在留期間の通算上限がない特定技能2号の対象分野について、現在拡大が検討されているため、将来的に漁業分野においても5年を超えて雇用できる可能性はあるでしょう。

受け入れ人数

漁業分野における特定技能外国人の受け入れ人数について、漁業分野全体で2019年から5年間で最大9,000人受け入れるという目標が設けられています。

この受け入れ目標は漁業分野全体での上限とされていますが、事業者ごとの制限は現状設けられていません。そのため、特定技能外国人を1社で何名でも雇用できるようになっています。

2021年12月末時点における漁業分野の特定技能外国人は549人で、目標に対する進捗率は6.1%となっており、まだまだ受け入れ人数が足りない状態と言えるでしょう。

特定技能外国人を雇用する際の費用目安

特定技能外国人を雇用する際の費用目安について、概要の最後に確認しておきましょう。

特定技能外国人を雇用する場合、日本人と同等以上の報酬が必要である点は先述した通りですが、その他に以下のような費用も掛かってくることになります。

特定技能外国人を雇用するまでにかかる費用

  • 海外から呼び寄せる場合に必要な送り出し機関への手数料
    新たに呼び寄せる場合は、送り出し機関を通さなければいけません。
  • 人材紹介への手数料
    紹介手数料は、年収の◯◯%というところもあれば、単純に1名あたり◯◯円といったケースもございます。
  • 在留資格申請に関する委託費用
    在留資格「特定技能」を取得するため、出入国管理庁へ申請する必要があります。
    書類の作成及び申請取次を行政書士法人・登録支援機関に委託する際に発生する費用となります。

特定技能外国人の雇用開始後にかかる費用

  • 登録支援機関への支援委託費用
    就労開始後に発生する費用です。
    特定技能人材への義務的支援を登録支援機関に委託した場合に、1名単位で発生してきます。
  • 在留資格更新申請に関する委託費用
    在留許可を受けたとしても、1年に1度在留期間更新のため、出入国管理庁へ更新申請する必要があります。

ざっくりとした費用イメージとしては、以下のようになるでしょう。
※ 送り出し機関や人材紹介会社、登録支援機関によって変動します。

各費用の具体的な金額イメージ

  • 送り出し機関への手数料:20~40万円(海外から呼び寄せる場合)
  • 人材紹介会社への手数料:30〜90万円(年収の10〜30% - 理論年収300万円想定)
  • 在留資格申請に関する委託費:10~20万円
  • 登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円(一人当たり2~3万円/月)
  • 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円

派遣形態で受け入れる場合、上記費用に加えて、毎月の給与と別にマージンがかかってきます。マージン率に関しては、各社ごとに異なってきますので、契約時によく確認する必要があります。

漁業分野における特定技能の在留資格を取得するには

ここからは漁業分野における特定技能の在留資格を取得するための条件について、確認していきましょう。

特定技能評価試験をクリアする

一つ目の条件は特定技能評価試験をクリアするというものです。

特定技能評価試験には、各特定分野における技能を計測するための技能試験と、日本語能力試験の2種類存在しています。

それぞれ見ていきましょう。

技能試験

農業分野の技能試験については、一般社団法人大日本水産会が運営しています。「漁業」と「養殖業」のカテゴリーごとに試験が実施されています。コンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)方式または、ペーパーテストで実施されます。以下簡単ではございますが、試験の概要になりますので、ご確認ください。

  • 方式:学科試験+実技試験(合計55問)
    学科試験と実技試験に関しては、真偽式及び多肢選択式試験となっています。「実技」と銘打たれていますが、実際は図やイラスト等から器具や設備、養殖生産物の適切な取り扱いができるか判断するペーパーテストになります。
  • 実施場所:国内+国外試験
    国外に関しては、インドネシアで実施される予定です。(2022年度はまだ未定)
  • 開催頻度:年に数回
  • 試験のサンプル

試験の詳細は一般社団法人大日本水産会のHPをご確認ください。

日本語能力試験

日本語能力試験は以下の2つの内いずれかを受け、それぞれ設けられた合格基準に達する必要があります。

  • 日本語能力試験JLPT
    国際交流基金と日本国際教育支援協会が設立した日本語試験であり、特定技能においてはN4以上に合格することが求められます。
    詳細は日本語能力試験公式HPをご確認ください。
  • 国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basic
    国際交流基金が主催する日本語試験で、特定技能の在留資格を取得するには、A2レベル以上に合格する必要があります。
    詳細については国際交流基金日本語基礎テスト公式HPを併せてご参照ください。

技能実習2号を良好に修了

もう一つの条件が技能実習2号を良好に修了するというものです。

漁業分野における技能実習2号を良好に修了すれば、技能試験と日本語能力試験はともに免除となります。

そのため技能実習から特定技能へ在留資格変更を行うことで、特定技能の在留資格を取得することが可能です。

ただし漁業分野以外の分野で技能実習2号を修了しても、試験は免除とならず、先に挙げた条件をクリアしなければなりません。

漁業分野で特定技能外国人を受け入れるには

続いて漁業分野で特定技能外国人を受け入れる際、企業側に求められる基準などについて、押さえていきましょう。

受け入れ機関としての基準を満たす

まず挙げられるのは受け入れ機関としての基準を満たすという点です。この基準は漁業分野のみではなく、全ての特定産業分野に共通となっています。

具体的には以下のような基準を満たさなければなりません。

特定技能外国人の受け入れ企業の要件一覧
法務省「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」をもとにジンザイベースが作成

支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。

登録支援機関については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説

漁業分野特有の要件を満たす

全分野共通の受け入れ要件とは別に、漁業分野独自の受け入れ要件があります。

直接雇用の場合と派遣形態での受け入れ方法で要件が異なってきますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

協議会への加盟

直接雇用の場合、特定技能外国人を受け入れた企業は、農林水産省が組織する特定技能外国人の受け入れに関する協議会に加盟し、必要な協力を行うことが求められます。

この協議会は、農林水産省をはじめ、特定技能の受け入れ機関や登録支援機関、業界団体などの連携強化を図り、特定技能制度が適切に運用されるように統括を行う機関となっています。

特定技能外国人の受け入れ開始後4ヶ月以内に加盟しないと、受け入れ停止処分になります。また、必要に応じて、協議会に協力すること(特定技能外国人の給与関係書類の提出やヒアリングへの回答など)が求められます。

派遣形態の要件

派遣形態で受け入れる場合、派遣元となる事業者は以下のいずれかに該当している必要があります。

  1. 漁業又は漁業に関連する業務を行っている者であること
  2. 地方公共団体又は1に掲げるものが資本金の過半数を出資していること
  3. 地方公共団体の職員又は1に掲げる者、その役員、職員が役員であること、その他地方公共団体又は1に掲げるものが業務執行に実質的に関与していると認められる者であること

また、派遣先の対象地域に関しては、派遣元責任者が日帰りで派遣労働者からの苦情の処理を行いうる範囲という制限があります。そのため、極端な話、北海道の派遣元事業者が沖縄の企業に労働者派遣を行うことはできません。

一方で、派遣先企業は協議会に直接加入する必要はなく、あくまで派遣元が加盟する義務を負うことになります。しかし、協議会からの要請に関しては、派遣先企業であったとしても、必要な協力を行うことが求められます。 

漁業分野における特定技能外国人の受け入れの流れ

最後に特定技能外国人の受け入れの流れについて、簡単にご紹介しておきます。

受け入れまでの流れ

特定技能外国人の受け入れの流れについては、大きく以下の通りです。

  • ステップ①:人材募集・面接
  • ステップ②:特定技能雇用契約の締結
  • ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
  • ステップ④:在留資格認定・変更申請
  • ステップ⑤:就業開始
  • ステップ⑥:漁業特定技能協議会へ加入

ステップ③の1号特定技能支援計画の策定とその計画に基づく支援業務は、登録支援機関へ委託することが可能です。

またステップ⑥に関しては、特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に実施する必要がある点は注意しましょう。

採用の流れに関しては、以下の記事でも詳細を解説していますので、あわせてご確認ください。
▶︎【特定技能外国人の採用方法】実務で使える!採用の流れから必要な手続きノウハウまで徹底解説

受け入れに必要な書類

特定技能外国人を受け入れる場合、先の流れでも触れた通り主に在留資格に関する諸申請と協議会への加入手続きが必要となります。

それぞれの手続きに必要となる書類は異なりますので、各手続きの詳細が記載されているページをご紹介しておきますので、併せてご確認ください。

海外から呼び寄せるケース

在留資格認定証明書交付申請「特定技能」 

国内に在留している外国人労働者を受け入れるケース

在留資格変更許可申請「特定技能」 

協議会への加入

漁業特定技能協議会:水産庁

まとめ

今回は特定技能の中でも漁業分野について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は特定技能外国人を含めた外国人労働者の人材紹介サービスを提供しつつ、登録支援機関としても活動しております。

人材のご紹介から支援計画の策定・実施に至るまで、トータルにご支援可能となっておりますので、少しでもご興味ありましたら、お気軽にお問い合わせください。

カテゴリ:
特定技能
タグ:

中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。