【特定技能って派遣できる?】受け入れ方法や要件、注意点などを解説

【特定技能って派遣できる?】受け入れ方法や要件、注意点などを解説

目次

「特定技能外国人を派遣で受け入れることはできるの?」という質問をいただく機会がありますが、結論から申し上げると、派遣形態での受け入れは認められていません。しかし、一定の条件を満たした場合、派遣形態での受け入れを認められるケースがあります。本記事では、特定技能制度における派遣形態での受け入れ方法について、要件や注意するべきポイントを解説していきます。

なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!

特定技能についてのおさらい

まずは特定技能とは何かについておさらいしておきましょう。

在留資格「特定技能」とは?

特定技能とは2019年4月に新設された在留資格です。

純粋に人手不足の解消を目的として設けられ、12の特定産業分野において、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の受け入れを認めました。

特定技能には「1号」、「2号」と2種類の在留資格があり、それぞれ以下のような特徴を持っています。

特定技能1号特定技能2号
業種12業種建設と造船
在留期限5年制限なし
技能水準相当程度の知識と経験熟練
技能試験あり
(技能実習2号・3号から同業種で移行する場合は免除)
あり
日本語試験日本語能力試験N4程度
(技能実習2号・3号修了者は免除)
(介護業は介護日本語評価試験に合格する必要あり)
なし
家族の帯同認められない認められる

特定技能1号を通じて、より高度な技術を習得した外国人の次のステップとして設けられた特定技能2号ですが、現状は建設と造船・舶用工業の2分野でのみ受け入れが可能となっています。 

しかし、2021年11月に特定技能2号の受け入れ対象職種の拡大を検討するとの報道がなされました。建設・造船に加え、介護以外の分野に対しても特定技能2号の対象として追加するとの報道内容であったため、今後の動きに注目が必要です。参照:産経新聞 政府「特定技能2号」拡大検討 在留期限なし 2021年11月28日

特定技能で受け入れ可能な業種は?

特定技能外国人の受け入れが可能な業種は以下の12分野となっています。

建設造船・舶用工業自動車整備航空宿泊農業漁業飲食料品製造業外食業素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業介護ビルクリーニング

特定技能外国人の受け入れ可能分野一覧
出入国在留管理庁「特定技能外国人の受け入れに関する運用要領」を参考にジンザイベースが作成

各分野ごとに管轄省庁が存在し、それぞれ独自の受け入れ基準を設けています。

※ 例えば、建設業の企業は、特定技能外国人の受け入れ許可を国土交通省から得る必要があります。

この受け入れ可能な産業分野は各業界団体の要望がなされた場合、追加されることがあります。(コンビニ・トラック運転手・産業廃棄物処理の分野で追加検討されていると言われています。) 

また、人手不足解消を目的としているため、特定技能外国人の受け入れ人数に制限はなく、基本的には何名でも雇用することが可能です。しかし、建設業と介護業のみ、日本人の常勤職員数に応じ、受け入れ可能な人数に制限がありますのでご注意ください。

特定技能制度の概要についてもっと詳しく知りたい!という方は、「特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説」もぜひあわせてご覧ください。

特定技能は派遣での受け入れが認められるの? 

冒頭でも、一定の条件を満たした場合に派遣での受け入れが可能になると申し上げましたが、そもそも特定技能はどのような雇用形態で受け入れるのが基本なのでしょうか。

特定技能の雇用形態は?

特定技能外国人を雇用するには、基本的には直接雇用が前提となります。

具体的には、1週間に5日以上、時間数で言うと30時間以上就労することが求められます。

そのため、パートやアルバイトのように、短時間のみ就業するというような雇用形態では受け入れできませんので注意が必要です。

特定技能で派遣が認められるケースは?

先に直接雇用が前提になると申し上げましたが、実は例外が存在します。

結論、農業」と「漁業」分野においては、一定の条件を満たすことで、派遣形態で特定技能外国人の受け入れが可能になります。

その他の12分野においては、派遣は認められていませんので、あくまで農業・漁業分野が例外的な扱いとなっている点は、ご留意ください。

それではなぜ「農業」と「漁業」に限って、派遣形態での雇用及び就労が認められているのでしょうか。

農業と漁業で派遣が認められる背景

「農業」と「漁業」において、派遣での特定技能外国人受け入れが可能な理由としては以下の2点が挙げられます。

  • 理由①:季節による作業の繁閑差がある
  • 理由②:繁忙のタイミングが産地により異なる

これらの理由から派遣による短期的な就業を認め、繁忙に合わせて複数の産地間において労働力の融通を利かせることを可能としたわけです。

特定技能外国人を派遣形態で受け入れるためには?

派遣形態で労働者を受け入れるためには、日本人同様、人材を受け入れる「派遣先事業者」と人材を派遣する「派遣元事業者」の2つの組織が関与してきます。

「派遣先事業者」と「派遣元事業者」がそれぞれ個別に満たしていなければならない要件がありますので、以下確認していきましょう。

派遣先事業者になるための条件

派遣先事業者になるための条件としては、農業と漁業共通で以下の5点全てを満たしている必要があります。

1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を順守していること
2. 過去1年以内に、特定技能外国人が従事する予定の業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと
3. 過去1年以内に、当該機関の責めに帰すべき事由により、行方不明の外国人を発生させていないこと
4. 刑罰法令違反による罰則を受けていないことなどの欠格事由に該当しないこと
5. 農業・漁業特定技能協議会が行う情報の提供、意見の聴取、現地調査その他の活動に対し必要な協力を行うこと

 また、農業に関しては、別途以下2点いずれかに該当している必要があります。

1. 過去5年以内に同一の労働者を6ヶ月以上継続して雇用した経験がある
2. 派遣先責任者講習その他これに準ずる講習を受講した者を派遣先責任者としている選任している

基本的な労働・社会保険関係の法律をしっかりと遵守し、直近1年以内に企業都合での解雇・失踪者を出していないことが要件として設けられています。また、後ほど解説しますが、特定技能協議会が行う調査等に対して必要な協力をすることも求められています。

農業分野においては、過去5年以内に同一業務に技能実習生を含めた労働者を6ヶ月以上雇用した実績があるか、派遣先責任者講習を受講し、派遣先責任者を専任していなければなりません。

※派遣形態で受け入れる場合、派遣先企業は派遣会社から派遣された労働者に関する就業管理や適切な就業環境を構築する役割を担う、派遣責任者を専任することとなっています。厚生労働省のガイドラインには、新たに派遣責任者を選任した際は講習を受講させることが望ましいとされています。

派遣元事業者になるための条件

派遣元事業者になるための条件としては、農業と漁業共通で以下の4点いずれかを満たしている必要があります。

1. 当該特定産業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること
2. 地方公共団体又は1.に掲げる者が資本金の過半数を出資していること
3. 地方公共団体の職員又は1.に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他地方公共団体又は1.に掲げる者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること
4. 外国人が派遣先において従事する業務の属する分野が農業である場合にあっては、 国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)第16条の5第1項に規定する特定機関であること。

1に関しては、農業・漁業経営体のように両分野の事業を直接行っている事業者もしくは、農業・漁業協同組合などの団体が該当します。その他の条件を見てみても、特定技能の労働者派遣事業を営むには、農業と漁業に元々関連のある企業でないと、なかなか難しいことが伺えます。

次に詳しく説明しますが、上記とは別で、派遣元事業者は農林水産省が設置する特定技能協議会へ加盟する必要もあります。

特定技能外国人を派遣で受け入れる際の注意点

次は、実際に特定技能外国人を派遣形態で受け入れる際に注意しておくべき点について押さえていきましょう。

協議会への協力

特定技能制度では、特定技能外国人の受け入れ機関(所属機関)は、各受け入れ可能分野を管轄する省庁(農業と漁業の場合、農林水産省)が設置する協議会へ加盟する必要があります。

派遣形態の場合、この協議会へ加盟する義務があるのは、特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶ派遣元事業者になります。

この協議会へは、特定技能外国人の在留資格許可が降りてから4ヶ月以内に加盟しなければなりません。4ヶ月経過し、協議会に加盟していない場合は、特定技能外国人の受け入れ停止処分を食らってしまいます。

派遣形態の場合、特定技能外国人の受け入れ機関(所属機関)は、派遣元事業者となりますので、派遣先事業者は協議会に加盟する必要がありません。

一方、派遣先事業者は、協議会に加盟する必要はないものの、先にあげた要件にあった通り、協議会から要請があった際は、必要な協力を行うことが義務付けられている点は留意しておきましょう。(帳簿書類の提出や立ち入り調査等が発生する可能性があります)

派遣の対象地域

派遣の対象地域に関しても、注意が必要です。

具体的には、派遣元労働者が日帰りで派遣労働者からの苦情の処理を行い得る地域とされています。

つまり、派遣元事業者と実際に労働者が派遣されている派遣先企業の所在地があまりにも遠方である場合は、派遣形態での受け入れが認められませんのでご注意ください。 

関係法令の遵守

特定技能外国人を派遣で受け入れる場合、労働者派遣法等、派遣に関する関係法令の規定を遵守しなければなりません。

そのため、通常の派遣労働者を受け入れる場合と同様、派遣先管理台帳等の作成などが必要となってきます。

関連する法令が増える分、多少工数がかかってくる可能性がある点はご留意ください。

受け入れにかかる費用

特定技能外国人を受け入れる際には、受け入れ企業が支払う費用がいくつか発生してきます。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 在留資格申請費用(初回のビザ申請費用)
  • 在留期間更新費用(特定技能外国人は基本的に在留資格を1年ごとに更新する必要があります)
  • 住居の準備費用(企業側が特定技能外国人の住居を準備する場合)

在留資格申請費用と住居の準備費用は初期費用として受け入れ時に発生してきますので、初年度のみのコストです。在留期間更新費用に関しては、1年未満の派遣期間であれば、基本は発生してこないでしょう。

注意が必要なのは、派遣形態の場合、ここからさらにマージンが発生してくる点です。このマージンは、派遣会社によってバラバラですので、事前によく確認することをおすすめします。

特定技能外国人の受け入れ費用については、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

まとめ

今回は特定技能外国人を派遣で受け入れる条件や実際の受け入れ方などをテーマに解説してきましたが、いかがでしたか。

特定技能外国人の雇用をご検討されている企業様は、ぜひ弊社までこちらのお問い合わせフォームからご連絡ください!

カテゴリ:
特定技能
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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。