特定技能【ビルクリーニング】で外国人を雇用するためには?|業務内容や採用方法・注意点などを徹底解説!

特定技能【ビルクリーニング】で外国人を雇用するためには?|業務内容や採用方法・注意点などを徹底解説!

最近、注目を集めている「特定技能」、この記事では、特定技能「ビルクリーニング業」で受け入れることができる業務分野や仕事内容、採用のステップから費用、試験情報まで徹底的に解説していきます。 技能実習生を既に雇用されていて、特定技能への移行を考えているなど特定技能外国人の雇用を検討されている事業者様は、ぜひご一読ください。

目次

特定技能「ビルクリーニング」とは?

特定技能「ビルクリーニング業」は、2019年4月に設けられた新たな就労系在留資格「特定技能」の1つです。後ほどご紹介する試験に合格すれば、ビルクリーニング作業のほか、客室のベッドメイキング作業も行うことが認められます。

在留資格「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたもので、この制度によって、日本国内において特に人手不足が深刻とされる産業分野で、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の活用を可能としました。

「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

「ビルクリーニング業」で特定技能が認められた背景は?

先程特定技能とは人手不足の解消を目的として設立されたとお話しましたが、特定技能設立当時、ビルクリーニング業界の状況はどうなっていたのでしょうか。以下の表を見てください。

ビル清掃員の有効求人倍率と特定建築物の推移
表引用:厚生労働省「資料5 ビルクリーニング分野について

上記のデータは、厚生労働省が2019年4月に開催した第1回ビルクリーニング分野特定技能協議会において活用された資料から抜粋したものです。

上記を見ていただくと、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は年々増加傾向にありながらも、百貨店や学校、事務所などの延べ面積が3,000平方メートル以上特定建築物も増えていることがわかります。

つまりビルクリーニングが必要な建築物が増加しているなかで、人手の確保が追い付いていなかったというわけです。

これらの事態を解消する為にビルクリーニング分野も特定技能制度の対象となったと言えるでしょう。

「ビルクリーニング業」で特定技能外国人は何人いる?

では、現在「ビルクリーニング」業では何名の特定技能外国人が働いているのでしょうか。

特定技能外国人数
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数令和4年12月末現在

日本に在留する特定技能外国人は、2022年12月末時点で、130,915名です。同年6月末時点では87,471名だったので、半年で40,000名以上増加していることになります。

ビルクリーニング分野では1,867名滞在しており、6月末時点では1,133名であったため、半年間で約700名も増加していることから、今後もこの傾向が続いていくことが予想されます。

特定技能「ビルクリーニング業」の基本情報を教えて!

ここからは、「ビルクリーニング業」で特定技能を受け入れる際に押さえておくべき基本情報について確認していきましょう。出入国在留管理庁「特定の分野に係る運用別冊」の宿泊分野を参考に解説していきます。

従事できる業務|ベッドメイキングも可能

特定技能「ビルクリーニング」では、多数の方が利用する建築物の内部の清掃業務、具体的には以下の業務をすることができます。

主たる業務関連業務
・ビルクリーニング作業
(日常清掃、定期清掃、中間清掃、臨時清掃)
・客室のベッドメイキング作業
日本人従業員が通常従事することになる関連業務
(資機材の倉庫整備作業、建物外部洗浄作業、資機材の運搬作業など)

なお、関連業務のみに従事させることはできないので、注意が必要です。

雇用形態・給与・雇用できる期間は?

雇用形態としては直接雇用が求められます。そのため、パートやアルバイトではなく、フルタイムの正社員で雇用する形になります。

報酬についても基準が設けられており、同等業務に従事している日本人社員と同額以上の報酬を支払う必要があるのです。もちろん、各種手当や福利厚生施設の利用等、日本人と同じ待遇で処遇しなければなりません。外国籍であることを理由に、差別的な扱いを行うことは禁止されていますので、ご留意ください。

雇用期間について、特定技能「ビルクリーニング」では、最大5年しか日本に在留することができません。

ただし、在留期間の通算上限がない特定技能2号の対象分野について、現在の2業種(建設・造船)から拡大する方向で検討されており、将来的にビルクリーニング分野も5年を超えて雇用できる可能性が非常に高いです。

雇用できる人数は何人まで?

この特定技能制度ですが、建設業と介護業に関しては、受け入れ事業所の常勤職員数未満しか雇用できないと定められています。

しかし、ビルクリーニング分野においては、企業ごとに受け入れできる人数の制限は現状設けられていません。そのため、特定技能外国人を1社で何名でも雇用できるようになっています。

在留資格「技能実習」との違いは?

以下に「特定技能」と「技能実習」の違いを取りまとめました。

特定技能技能実習
設立目的労働力の確保技能の移転による国際貢献
受け入れ人数制限制限なし常勤職員数に応じて制限あり
残業時間の制限36協定の範囲内
(日本人と同等)
原則月45時間以内
転職可否可能不可
書類手続き申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿は少ない
申請は煩雑
受け入れ後の備え付け帳簿も煩雑
家族の帯同不可
(特定技能2号になると可能)
不可

特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」との認識になります。対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」であるとの認識になります。

このように設立目的が異なるため、様々な違いが存在します。最たる例としては、技能実習では、「転職」という概念が存在しませんが、特定技能では同業種であれば無制限に転職が可能となっています。

また、特定技能「ビルクリーニング」においては、技能実習制度と異なり、必ず使用しなければならない器具、資材機械及び設備の制約がありません。

そのため、ビルクリーニング分野における特定技能外国人が従事できる業務範囲は、技能実習制度で従事できる業務範囲より広くなっております。

「特定技能」と「技能実習」の違いについてより詳しく知りたい方は、「【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法」をご覧ください。

外国人が満たすべき条件

外国人が、ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格を取得するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

①試験に合格する
 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験、日本語能力試験
②技能実習を修了する
 技能実習2号を良好に修了する。※3号修了者も可能です。

①試験に合格する

まずは、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」をクリアするルートを見ていきましょう。

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験

試験概要は以下のとおりになりますので、ご確認ください。なお、試験の詳細は公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のHPも併せてご確認ください。

試験問題数制限時間配点基準点合否基準
判断試験
(写真、イラスト等により判断する試験)
17問20分40点24点
判断試験の点数が満点の60%以上、かつ作業試験の点数が満点の60%以上



作業試験
①床面定期清掃作業
②ガラス面の定期洗浄作業
③洋式大便器の日常清掃作業
3問12分60点36点
合計20問32分100点60点

日本語能力試験

日本語能力試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。

日本語能力試験N4以上
国際協力基金日本語基礎テストA2以上

N4およびA2は、基本的な日本語を理解できるレベルと考えていただいて問題ありません。この他のレベルについては、こちらをご参照ください。

②「技能実習」を修了する

この特定技能ですが、実は技能実習2号を良好に修了した外国人は、先にあげた2つの試験を受験することなく移行することが可能です。※ 良好とは、「技能実習計画を2年10ヶ月以上修了」している状態を指します。

ただしビルクリーニング以外の分野で技能実習2号を修了しても試験は免除されず、改めて特定技能評価試験を受験しなければなりません。

技能実習制度について詳しく知りたい方は、「技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説」で詳細をご確認ください。

雇用する際に注意すべきポイントは?

前述のとおり、「試験に合格」もしくは「技能実習を修了」している方であれば、基本的には特定技能の要件を満たしていると言えます。

ただし、以下のいずれかに当てはまる場合、申請で不許可になってしまう可能性が出てきますので、注意が必要です。いずれも元留学生の方を採用する場合に注意が必要な項目となってきます。

・住民税、国民健康保険料の滞納がある
・留学中、週28時間以上アルバイトしていた
・留学中、学校を退学していたり、出席状況が悪い

特に、2番目の「週28時間以上のアルバイト」は、発覚した場合、ほぼ不許可になってしまうでしょう。(実際に弊社でも不許可事例があります)

留学生は、資格外活動許可を取得することで、週に28時間までアルバイトをすることが可能ですが、それ以上働いてしまうと入管法違反になってしまいます。バレないだろうと思って週28時間以上アルバイトをしている方もいますが、「住民税の課税・納税証明書」から容易に確認可能です。

そのため、面接時にしっかりと上記項目については確認しておくようにしましょう。

企業が特定技能外国人を採用するまでの流れ

続いて、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れる流れや、受け入れ企業側に求められる条件などについて確認していきましょう。なお、外国人を雇用する企業のことを受け入れ機関と呼びます。

特定技能外国人の「受け入れ機関」としての要件を満たす

特定技能外国人を受け入れるにあたって、受け入れ機関は以下の基準を満たす必要があります。

特定技能外国人の受け入れ企業が満たすべき基準一覧
法務省「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」をもとにジンザイベースが作成

特に、支援体制に関する基準に関しては、直近2年以内に外国人の受け入れ実績や生活支援の担当業務に従事した経験のある従業員がいない場合、満たすことができません。こういった場合、「登録支援機関」という第三者機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひ検討してみてください。

登録支援機関については、ぜひ「【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」も併せてご覧ください。

①「建築物清掃業」もしくは「建築物環境衛生総合管理業」の登録

受け入れ機関としての基準に加え「建築物清掃業」もしくは「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けている必要があります。

この登録を受けるにあたって、物的・人的基準が設けられており、それぞれクリアする必要があります。

登録の手続きは、営業所の所在地を管轄する都道府県生活衛生担当部署に問い合わせをお願いいたします。(登録まで時間がかかる場合もありますので、特定技能外国人を受け入れる場合は早めに対応いただいたほうが良いです。)

また、登録を受けていたとしても、有効期限が6年となっていますので、期限切れになっていないかを事前に確認してください。

詳細については、こちらの厚生労働省のページをご覧ください。

②ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員になる

さらに、特定技能外国人を受け入れた企業は、受け入れから4ヶ月以内に厚生労働省が組織する協議会へ加入しなければなりません。

この協議会は、制度の適切な運用を図るため、関係機関の連携を強化するために設置されています。

受け入れ企業は、協議会からの調査(特定技能外国人の賃金台帳の閲覧やヒアリング)や各種協力要請に対して、対応しなければなりません。

協議会に加盟していないと、特定技能外国人の受け入れ停止処分となってしまいますので、必ず手続きを行う必要がある点はご注意ください。

具体的な募集〜入社までの流れ

特定技能外国人の受け入れの流れについては、基本的に以下のようになります。 国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってくる点はご注意ください。

特定技能外国人を呼び寄せる場合の手続きの流れ

ステップ①:人材募集・面接

まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。 

ステップ②:特定技能雇用契約の締結

無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。

ステップ③:1号特定技能支援計画の策定

次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。

特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上は勿論のこと、日常生活面での支援も行う必要があります。

次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。

こちらの支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポートを受けることが可能です。

ステップ④:在留資格認定・変更申請

続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。

国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。

この時に用意すべき書類は大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • 外国人本人に関する書類
  • 受け入れ機関に関する書類
  • 分野に関する書類

それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。

また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。そのため、特定技能保持者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。

ステップ⑤:ビザ申請

こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。

無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。

ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)

ステップ⑥:就業開始

無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。

なお、より詳細情報を知りたい方は「【特定技能外国人の採用方法】実務で使える!採用の流れから必要な手続きノウハウまで徹底解説」をあわせてご覧ください。

特定技能外国人を雇用する費用はどのくらい?

最後に、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇用する際に発生する費用について見ていきましょう。

ざっくりとした費用概算
海外からの呼び寄せ国内で特定技能へ移行
送り出し機関への手数料20万円〜60万円0円
人材紹介会社への手数料0円20万円〜40万円
在留資格申請に関する委託費用10万円〜20万円
登録支援機関への支援委託費用年間24万円〜36万円(一人当たり2〜3万円 / 月)
在留期間更新申請に関する委託費用5万円〜15万円

国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点はご留意ください。

また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。

申請書類の作成サポートを登録支援機関や行政書士に委託した場合、初回申請及び、毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに費用が発生してきます。

最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。

あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。

より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。

まとめ

今回は特定技能におけるビルクリーニング分野について、概要から受け入れの流れまでお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は本文中でもご紹介した登録支援機関として活動しており、支援計画の策定や支援業務の代行を行っております。

また特定技能外国人を含めた外国人労働者の人材紹介サービスや、入社後の定着支援なども実施しておりますので、少しでもご興味がありましたら一度お問い合わせください。

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カテゴリ:
特定技能
タグ:

中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。