【特定技能制度の二国間協定とは】特定技能送り出し国ごとの手続きをご紹介
この記事では、特定技能制度の二国間協定をテーマに、受け入れ対象国や各国ごとの手続き、そもそもの二国間協定の内容などをわかりやすく解説しています。特定技能制度で外国人雇用・採用をご検討されている企業様は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
そもそも特定技能制度とは
はじめに特定技能制度についておさらいしておきましょう。
特定技能制度の概要と目的
特定技能とは2019年4月に設けられた新しい在留資格です。
特定技能制度の最大のポイントは、単純労働とみなされている業種でも外国人の就労を認めたことでしょう。
そのためこれまで外国人の就労が難しいとされていた特定産業分野(介護、ビルクリーニング、建設など)でも外国人の活用が可能となったわけです。
特定技能制度の基礎から知りたい!という方は、以下の記事を併せてお読みください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
特定技能外国人の受け入れ推移と将来予測
人材不足の解消を目的として設けられた特定技能制度ですが、2019年4月に始まって以来どれくらい特定技能外国人は増加しているのでしょうか。
出入国在留管理庁の公表データを基に、当社で増加推移をグラフにまとめましたので、見てみましょう。
制度開始まもなくの19年はまだそこまで多くなかったものの、20年の9月を境に増加率が上昇し、21年の6月には29,144人にまで増加しました。
この増加傾向が続けば、さらに人数が増えることが予測できますが、政府は2023年までの特定技能外国人受け入れ上限を345,000人と設定しています。
これは2023年までに345,000人に到達することを目指して受け入れを促進していくといった意味合いもあるのでしょう。
特定技能制度の対象となる国とは
特定技能制度では原則どの国籍の外国人であっても受け入れ可能としていますが、外国人労働者の保護や悪質な仲介業者の排除等を目的として、実際のところ受け入れる国を制限しているのが実状となります。
そのため現実には二国間協定を締結している国に限定し、特定技能外国人の受け入れを実施しているわけです。
特定技能外国人で一番多い国籍
二国間協定を締結している国の内、現在、最も多い人数を誇るのはベトナムです。
特定技能で在留するベトナム人は21年6月末において18,191人おり、全体の62.4%に及びます。
ベトナム人が多く受け入れられている理由として、勤勉な国民性や日本語教育への熱心さなどが挙げられます。
以下の記事をお読みいただければより詳しい内容が分かりますので、是非併せてご確認ください。
▶︎【特定技能】ベトナム人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
二国間協定とは
ここからはこの記事のテーマである二国間協定について詳しくお話していきます。
二国間協定の概要
二国間協定とは「特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)」とも呼ばれ、日本が特定技能外国人を送り出す各国と締結している各種取り決めのことです。
特定技能外国人を円滑に送り出し、受け入れるためのルールや手続きなどを定めています。
二国間協定の内容は締結している国によって異なりますが、基本的に次にご紹介する目的を達するために設けられているのです。
二国間協定が設けられた目的
二国間協定が設けられた目的として大きく以下の2つが挙げられます。
目的①:特定技能外国人の円滑・適正な送り出しと受け入れの確保
一つ目の目的は特定技能外国人の円滑且つ適正な送り出しと受け入れを確保することです。
外国人が日本で働くにあたって必要な手続きは様々ありますが、日本で必要な手続きと送り出し国で必要な手続きは本来異なります。
そこで日本と送り出し国が、互いに必要な内容を満たした上で、円滑に出入国ができるように二国間協定を締結したというわけです。
目的②:特定技能外国人の保護
特定技能外国人を保護するという目的も忘れてはいけません。
特定技能制度が設けられる以前から、技能実習を中心に外国人労働者の受け入れをしてきましたが、悪質な仲介業者による搾取や賃金未払いといった様々な問題が発生していました。
そういった問題を防ぐために、日本と送り出し各国で規制を強化し、特定技能外国人の安定就業を実現するために二国間協定は存在しているのです。
二国間協定を締結している国
2021年6月時点において、二国間協定を締結している国は以下の13ヵ国です。
また現在中国も送り出し体制について検討中のようで、近い将来二国間協定が締結される可能性が高いと言えます。
二国間協定において特徴的な手続きがある国
続いて先ほどご紹介した13ヵ国の内、二国間協定において特徴的な手続きがある国について、出入国在留管理庁の「特定技能に関する二国間の協力覚書」のページを参考に、ご紹介していきます。
在留申請時に独自の提出書類がある国
カンボジア
カンボジアから特定技能外国人を雇い入れる場合、カンボジア政府が指定する「登録証明書」を提出する必要があります。
この登録証明書は、必ずカンボジア政府認定の送り出し機関を通して申請しなければなりません。(国内在住者を雇用する場合であっても)
タイ
タイの場合、認定送り出し機関が公表されていますが、必ずしも送り出し機関を通さなくとも、タイ国内在住者を採用することが可能です。
送り出しの有無に関係なく、また、国内在住者を雇用する場合であっても、「駐日タイ王国大使館労働担当官事務所」へ雇用契約書の認証を受ける必要あります。
技能実習2号もしくは技能実習3号から特定技能1号へ資格変更する場合は、在留資格の申請時にこの認証を受けた雇用契約書を添付書類として提出する必要があります。
また、タイ国内在住者が来日するタイミングで、タイ王国労働省へ「海外労働・出国許可申請」を行う必要があります。
ベトナム
ベトナム人の特定技能在留資格の認定証明書交付申請には、あらかじめDOLABと呼ばれるベトナムの海外労働管理局から推薦者表(以下の様式1)の承認を受けた上で、他の必要書類とともに提出する必要があります。
また一部の在留資格から特定技能へと在留資格変更申請する場合も、同じく承認を受けた推薦者表(以下の様式2)が必要です。
その場合、推薦者表が必要になるのは以下のケースとなります。
- 在留資格「技能実習」の人
- 在留資格「留学」の内、2年以上の課程を修了又は修了見込みの人
次のケースでは推薦者表の提出は不要ですが、それぞれ指定の書類の提出が求められます。
- 2年未満の課程を修了または修了見込みの場合、そのことを証明する卒業証明書などの書類が必要
- 在学中もしくは途中退学した場合、在学証明書や退学証明書の提出が必要
ちなみに、国外からベトナム人の方を呼び寄せる場合は、必ず送り出し機関を通さなければなりません。
以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
▶︎【特定技能】ベトナム人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
一定の送り出し手続きが定められている国
フィリピン
フィリピンから特定技能外国人を受け入れるには、受け入れ企業が指定された必要書類を駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(POLO)に提出し、審査を受けた上で、フィリピン政府認定の送り出し機関を通じて、フィリピン本国の海外雇用庁(POEA)に認証印が押印された必要書類一式を提出し、登録される必要があるとされています。
登録された上で、当該フィリピン人の方でもPOEAから海外雇用許可証(OEC)を取得し、出国時にそれを提示する必要があります。
必要書類や様式については、POLOのサイトに掲載されています。また、以下の記事においても手続き内容について解説していますので、併せてご確認ください。
▶︎フィリピン人を雇用する際に必要なPOLO申請とは?概要や手続きの流れを解説
ネパール
特定技能の在留資格を取得もしくは特定技能へと変更が認められた後、当該ネパール人が再入国許可により日本からネパールに一時帰国する場合、ネパール労働・雇用・社会保障省の雇用管理局日本担当部門から海外労働許可証を取得する必要があります。
またネパール出国時に海外労働許可証を提示することも求められています。
インドネシア
インドネシアから特定技能外国人を受け入れるために求人募集する際は、インドネシア政府が管理する「労働市場情報システム(IPKOL)」に、受け入れ企業が登録(オンライン登録可)しなければなりません。
当該インドネシア人もインドネシア政府が管理する「海外労働者管理システム(SISKOTKLN)」に登録し、IDを取得した上で、日本への渡航のための査証申請を行う必要があるとされています。
インドネシア人の特定技能受け入れの流れについては、以下の記事にて詳細を解説しています。
▶︎【特定技能】インドネシア人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
ミャンマー
ミャンマーから特定技能外国人を受け入れる際、当該ミャンマー人はミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)に対して、海外労働身分証明カード(OWIC)の申請を行う必要があります。
さらに、ミャンマーから呼び寄せる場合は、ミャンマー政府認定送り出し機関を必ず通さなければなりません。
また日本に在留するミャンマー国籍の人であれば、在日本ミャンマー大使館にて、パスポートの更新申請を行う必要があるとされています。
モンゴル
特定技能外国人としてモンゴル人を受け入れる場合、モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)との間で、モンゴル国籍の人材募集に関する双務契約の締結が求められています。
双務契約書のひな型についてはGOLWSのサイトに掲載されていますので、参照してみてください。
特定技能の対象国から除外された国など
最後に特定技能の対象国から除外された国や、二国間協定を締結している国でも取得できないケースについてお話しておきます。
除外された国
特定技能制度の対象から除外された国は現状イランとトルコの二か国のみです。
その理由としては上記の国は帰国命令や退去命令を受けた国民に対して、入国不可の対応を取っていることが挙げられます。
もし上記2か国から受け入れた後、何かしらの問題が発生し帰国命令を出しても、移民や難民として受け入れざるを得なくなるため、除外としているのです。
対象国でも特定技能の在留資格を取得できないケース
次に二国間協定を締結している国などであっても、特定技能の在留資格を取得できないケースを簡単に確認しておきます。
- 過去に強制退去を命じられている場合
当該外国人が過去に強制退去を命じられている場合は、特定技能の在留資格を取得することは難しいと言えます。 - 重い病気などを患っている場合
また当該外国人が重い病気などを患っている場合も、特定技能在留資格の取得は難しいでしょう。
まとめ
今回は特定技能における二国間協定を中心にお話してきましたが、いかがでしたか。
二国間協定は根幹となる目的は共通していますが、国ごとに手続きや必要な書類が異なります。
是非この記事を参考に適切な手続きを実施していただければ幸いです。
また二国間協定以外にも、特定技能外国人の採用についてより詳しく知りたいという方は当社までお気軽にご相談ください。
中村 大介
株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。