‍【特定技能制度の二国間協定とは】特定技能送り出し国ごとの手続きをご紹介

この記事では、特定技能制度の二国間協定をテーマに、受け入れ対象国や各国ごとの手続き、そもそもの二国間協定の内容などをわかりやすく解説しています。特定技能制度で外国人雇用・採用をご検討されている企業様は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!

そもそも特定技能制度とは

特定技能制度とは、日本における外国人労働者の受け入れを円滑に進めるために設けられた制度であり、特に人材不足が問題視されている業界に焦点を当てています。特定技能に関する二国間の協力覚書を通じて、外国人労働者の受け入れが整理され、各国との連携を強化することが目的とされています。

特定技能制度の概要と目的

特定技能制度は、日本の労働市場において外国人労働者を受け入れるための枠組みです。この制度の目的は、特定の職種における労働力不足を解消し、外国人が日本で適正に働ける環境を整備することです。また、出入国在留管理庁は、この制度に基づく手続きや規制を管理しており、外国人労働者の受け入れに関する重要な役割を果たしています。

特定技能制度の基礎から知りたい!という方は、以下の記事を併せてお読みください。

▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

特定技能外国人の受け入れ推移と将来予測

特定技能外国人の受け入れは2019年から始まり、近年ますます重要性を増しています。出入国在留管理庁の統計を基に当社でグラフを作成しました。

特定技能人数推移

2019年に特定技能制度が導入されて以来、特定技能外国人の数は増加傾向にあり、さらなる受け入れが見込まれています。将来的には、この制度を通じてより多くの外国人労働者が日本で活躍することが期待されています。

特定技能制度の対象となる国とは

特定技能制度は、日本における外国人労働者の受け入れを促進するために設けられており、特にアジアの国々からの人材が注目されています。具体的には、ベトナム、カンボジア、フィリピン、ミャンマー、ネパールなどがこの制度の対象国として挙げられます。これらの国々との二国間協定を通じて、労働者の円滑な送り出しや受け入れが図られています。

特定技能外国人で一番多い国籍

特定技能制度において、最も多くの外国人労働者が占める国籍はベトナムです。ベトナムからの人材は、特定技能制度を通じて日本のさまざまな業界で活躍しています。制度の導入以降、彼らの受け入れが進んでおり、今後もその流れは続くと予測されています。

以下の記事をお読みいただければよりベトナム人についてより詳しい内容が分かりますので、是非併せてご確認ください。

▶︎【特定技能】ベトナム人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説 

二国間協定とは

ここからはこの記事のテーマである二国間協定について詳しくお話していきます。

二国間協定の概要

二国間協定とは、特定技能の制度において、日本と外国人労働者を送り出す国との間で締結される契約のことです。この協定は、特定技能に関する「二国間の協力覚書」とも呼ばれ、外国人人材の円滑な送り出しや受け入れを確保するためのルールや手続きを定めています。また、労働者の保護を目的とし、国際的な連携を促進する役割も果たしています。

二国間協定が設けられた目的

二国間協定が設けられた目的として大きく以下の2つが挙げられます。

目的①:特定技能外国人の円滑・適正な送り出しと受け入れの確保

特定技能に関する二国間の協力覚書は、特定技能外国人が円滑かつ適正に送り出され、受け入れられることを主な目的としています。この協定により、各国との協力体制が整い、手続きの明確化や労働者の保護が強化され、日本の労働市場での円滑な人材流動が期待されています。

外国人が日本で働くにあたって必要な手続きは様々あり、日本で必要な手続きと送り出し国で必要な手続きは本来異なります。そこで日本と送り出し国が、互いに必要な内容を満たした上で、円滑に出入国ができるように二国間協定を締結したというわけです。

目的②:特定技能外国人の保護

特定技能外国人を保護するという目的も忘れてはいけません。この協定により、外国人労働者が日本で安心して働ける環境を整備し、厳しい労働条件や不当な待遇から守ることが目指されています。これは特定技能制度が設けられる以前から、技能実習を中心に外国人労働者の受け入れをしてきましたが、悪質な仲介業者による搾取や賃金未払いといった様々な問題が発生していました。

そういった問題を防ぐために、日本と送り出し各国で規制を強化し、特定技能外国人の安定就業を実現するために二国間協定は存在しているのです。 

これにより、労働者の権利が尊重されるとともに、持続的な労働力の確保が期待されています。

二国間協定の重要性とメリット

特定技能に関する二国間の協力覚書は、日本と送り出し国との円滑な連携を確保し、外国人労働者の適正な受け入れを促進します。この協定を通じて、労働者の権利保護や雇用条件の充実が図られ、双方にとってのメリットを生むことが期待されています。

二国間協定を締結している国

2024年6月時点において、二国間協定を締結している国は以下の15ヵ国です。

二国間協定締結国一覧

また現在中国も送り出し体制について検討中のようで、近い将来二国間協定が締結される可能性が高いと言えます。

二国間協定において特徴的な手続きがある国

続いて先ほどご紹介した15ヵ国の内、二国間協定において特徴的な手続きがある国について、出入国在留管理庁の「特定技能に関する二国間の協力覚書」のページを参考に、ご紹介していきます。

在留申請時に独自の提出書類がある国

カンボジア

カンボジアから特定技能外国人を雇い入れる場合、カンボジア政府が指定する「登録証明書」を提出する必要があります。この登録証明書は、必ずカンボジア政府認定の送り出し機関を通して申請しなければなりません。(国内在住者を雇用する場合であっても)<登録証明書(ひな型)> 

タイ

タイの場合、認定送り出し機関が公表されていますが、必ずしも送り出し機関を通さなくとも、タイ国内在住者を採用することが可能です。

送り出しの有無に関係なく、また、国内在住者を雇用する場合であっても、「駐日タイ王国大使館労働担当官事務所」へ雇用契約書の認証を受ける必要があります。

技能実習2号もしくは技能実習3号から特定技能1号へ資格変更する場合は、在留資格の申請時にこの認証を受けた雇用契約書を添付書類として提出する必要があります。

また、タイ国内在住者が来日するタイミングで、タイ王国労働省へ「海外労働・出国許可申請」を行う必要があります。

ベトナム

ベトナム人の特定技能在留資格の認定証明書交付申請には、あらかじめDOLABと呼ばれるベトナムの海外労働管理局から推薦者表(以下の様式1)の承認を受けた上で、他の必要書類とともに提出する必要があります。

また一部の在留資格から特定技能へと在留資格変更申請する場合も、同じく承認を受けた推薦者表(以下の様式2)が必要です。

その場合、推薦者表が必要になるのは以下のケースとなります。

  • 在留資格「技能実習」の人
  • 在留資格「留学」の内、2年以上の課程を修了又は修了見込みの人 

次のケースでは推薦者表の提出は不要ですが、それぞれ指定の書類の提出が求められます。

  • 2年未満の課程を修了または修了見込みの場合、そのことを証明する卒業証明書などの書類が必要
  • 在学中もしくは途中退学した場合、在学証明書や退学証明書の提出が必要 

様式①><様式②

ちなみに、国外からベトナム人の方を呼び寄せる場合は、必ず送り出し機関を通さなければなりません。

以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
▶︎【特定技能】ベトナム人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説

一定の送り出し手続きが定められている国

フィリピン

フィリピンから特定技能外国人を受け入れるには、受け入れ企業が指定された必要書類を駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(POLO)に提出し、審査を受けた上で、フィリピン政府認定の送り出し機関を通じて、フィリピン本国の海外雇用庁(POEA)に認証印が押印された必要書類一式を提出し、登録される必要があるとされています。

登録された上で、当該フィリピン人の方でもPOEAから海外雇用許可証(OEC)を取得し、出国時にそれを提示する必要があります。

必要書類や様式については、POLOのサイトに掲載されています。また、以下の記事においても手続き内容について解説していますので、併せてご確認ください。
▶︎フィリピン人を雇用する際に必要なPOLO申請とは?概要や手続きの流れを解説

ネパール

特定技能の在留資格を取得もしくは特定技能へと変更が認められた後、当該ネパール人が再入国許可により日本からネパールに一時帰国する場合、ネパール労働・雇用・社会保障省の雇用管理局日本担当部門から海外労働許可証を取得する必要があります。

またネパール出国時に海外労働許可証を提示することも求められています。 

▶︎【特定技能】ネパール人の採用方法や注意点、費用などを徹底解説!

インドネシア

インドネシアから特定技能外国人を受け入れるために求人募集する際は、インドネシア政府が管理する「労働市場情報システム(IPKOL)」に、受け入れ企業が登録(オンライン登録可)しなければなりません。

当該インドネシア人もインドネシア政府が管理する「海外労働者管理システム(SISKOTKLN)」に登録し、IDを取得した上で、日本への渡航のための査証申請を行う必要があるとされています。

インドネシア人の特定技能受け入れの流れについては、以下の記事にて詳細を解説しています。
▶︎【特定技能】インドネシア人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説

ミャンマー

ミャンマーから特定技能外国人を受け入れる際、当該ミャンマー人はミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)に対して、海外労働身分証明カード(OWIC)の申請を行う必要があります。

さらに、ミャンマーから呼び寄せる場合は、ミャンマー政府認定送り出し機関を必ず通さなければなりません。

また日本に在留するミャンマー国籍の人であれば、在日本ミャンマー大使館にて、パスポートの更新申請を行う必要があるとされています。

▶︎【特定技能】ミャンマー人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説

モンゴル

特定技能外国人としてモンゴル人を受け入れる場合、モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)との間で、モンゴル国籍の人材募集に関する双務契約の締結が求められています。

双務契約書のひな型についてはGOLWSのサイトに掲載されていますので、参照してみてください。 

特定技能の対象国から除外された国など

最後に特定技能の対象国から除外された国や、二国間協定を締結している国でも取得できないケースについてお話しておきます。これらの国においては、出入国在留管理庁の定める条件を満たさないため、特定技能の在留資格を取得することができません。

除外された国

特定技能制度の対象から除外された国は現状イランとトルコの二か国のみです。

その理由としては上記の国は帰国命令や退去命令を受けた国民に対して、入国不可の対応を取っていることが挙げられます。

もし上記2か国から受け入れた後、何かしらの問題が発生し帰国命令を出しても、移民や難民として受け入れざるを得なくなるため、除外としているのです。

対象国でも特定技能の在留資格を取得できないケース

次に二国間協定を締結している国などであっても、特定技能の在留資格を取得できないケースを簡単に確認しておきます。

  • 過去に強制退去を命じられている場合
    当該外国人が過去に強制退去を命じられている場合は、特定技能の在留資格を取得することは難しいと言えます。
  • 重い病気などを患っている場合
    また当該外国人が重い病気などを患っている場合も、特定技能在留資格の取得は難しいでしょう。 

まとめ

特定技能に関する二国間の協力覚書は、日本と外国人労働者を送り出す国との間で労働者の適切な受け入れを確保するための重要な枠組みです。この協力覚書を通じて、労働者の権利保護や手続きの透明性が向上し、双方にとって有益な関係構築が可能となります。今後もこの枠組みが広がることで、より多くの外国人が安全に日本で就労できる環境が整うことが期待されます。また二国間協定以外にも、特定技能外国人の採用についてより詳しく知りたいという方は当社までお気軽にご相談ください。

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監修者
菅原 勇人
菅原行政書士事務所代表。埼玉県熊谷市生まれ。2017年早稲田大学大学院卒業後、建材商社へ入社。主に営業として、中小中堅の建設事業者への提案に従事。就労をしながら、行政書士や宅建など法務系資格を複数取得。現在は菅原行政書士事務所の代表として、約1,000件にも及ぶ申請取次業務に携わる。行政書士(埼玉県行政書士会所属 / 第24132052)
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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