【在留資格「介護」とは】概要や取得要件、採用までの流れを解説

【在留資格「介護」とは】概要や取得要件、採用までの流れを解説

この記事では、在留資格「介護」において従事できる業務や報酬形態などの概要を解説しています。その他の在留資格との違い、取得要件や取得までの流れについても触れていますので、在留資格「介護」の基本を押さえたいという方は、是非最後までご確認ください。

目次

外国人労働者の在留資格

外国人労働者が日本で働くにあたっては、就労が認められている在留資格を取得する必要があります。

在留資格は2022年4月現在において29種類存在しており、就労制限の有無によって大きく以下の3つのカテゴリーに分類されています。

  • 就労制限のない在留資格:永住者や定住者など
  • 就労制限のある在留資格:技術・人文知識・国際業務や経営・管理
  • 就労不可の在留資格:留学や短期滞在など 

今回は就労制限のある在留資格のカテゴリーから、在留資格「介護」を取り上げて、詳しくお話していきたいと思います。

在留資格「介護」とは

まずは在留資格「介護」の概要から確認していきましょう。

概要

在留資格「介護」とは、本邦の公私の機関との契約に基づいて、介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動を行うための在留資格です。

介護業界は人手不足が深刻化しており、厚生労働省が2021年に公表したデータによると、2025年には約32万人、2040年には約69万人もの人手が不足するとされています。

こういった事態を緩和すべく、様々な対策が取られており、在留資格「介護」による外国人労働者の受け入れも重要な課題となっていると言えるでしょう。

2021年12月末時点で、国内で在留資格「介護」を取得している外国人は3,794人となっています。(参考:出入国在留管理庁「令和3年末現在における在留外国人数について」) 

従事できる業務

在留資格「介護」を有する外国人労働者が従事できる業務について、確認しておきます。

従事できる具体的な業務としては

  • 介護者の体に直接触れて行う「身体介助」
  • 家事全般の手伝いを実施する「生活援助」
  • 要介護者家族への介護指導や介護用具の使用方法の説明

などが中心となります。 

これらの業務を特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護療養型医療施設などにおいて、実施していくことになります。

また、就労可能なサービス種別に関しても制限がないため、デイサービス・訪問系など関係なく、全ての介護施設において就労が可能となっています。

雇用形態・報酬

在留資格「介護」の在留資格を持つ外国人労働者を雇用する場合、基本的にはフルタイムの正社員が基本となります。

契約社員でも雇用することは可能ですが、在留資格申請において雇用の継続性などを理由として不許可になるケースもあるため、正社員として雇用する方が良いでしょう。

報酬については、雇用してすぐに介護報酬の配置基準に算定され、同等業務に従事している日本人職員と同等以上の報酬を支払う必要があります。

在留資格の取得要件については、後ほど解説します。

在留期間

在留資格「介護」の在留期間としては、以下のいずれかになります。

  • 5年
  • 3年
  • 1年
  • 3か月 

上記のうちどの在留期間になるかは、申請人である外国人労働者や、雇用企業側が任意で設定できるわけではありません。

在留資格の申請時に出入国在留管理庁が審査を通じて、決定することになるのです。

なお在留資格「介護」の在留期間に関しては、通算上限が設けられていませんので、在留期間更新手続きをすれば、長期的に就業することが可能となります。

家族帯同の可否

在留資格「介護」は家族帯同が可能な在留資格の一つです。

在留資格「介護」で働く外国人労働者は、配偶者や子供を在留資格「家族滞在」にて、日本に呼び寄せることができます。 

ただし外国人労働者本人や配偶者の両親、兄弟、親せきなどは基本的に呼び寄せることができない点には留意しておきましょう。

その他の介護系在留資格との違い

介護業務に従事することができる在留資格には、他にも

  • 特定技能
  • 技能実習生
  • 特定活動(EPA介護福祉士候補者)

などがあります。 

これらの在留資格と「介護」の違いには大きく4点あります。

違い①:業務内容に関する制限

一つ目の違いは業務内容に関する制限の有無です。

在留資格「介護」は従事できる業務に制限はなく、訪問介護なども可能となっています。

その点、特定技能や技能実習生、EPA介護福祉士候補者については、訪問介護などは不可となっているのです。

ただしEPA介護福祉士候補者については、介護福祉士の資格試験に合格した場合、訪問介護なども可能となります。

違い②:資格(介護福祉士)の有無

次に挙げられる違いは、資格(介護福祉士)の有無です。

在留資格「介護」の外国人労働者は、介護福祉士の資格を有していることになりますが、その他の在留資格の外国人労働者は資格を有しているわけではありません。

EPA介護福祉士候補者については、介護福祉士の資格取得を目的としたものですが、来日時点ではまだ資格は取得していないのです。

違い③:在留期間

在留期間についても違いがあります。

在留資格「介護」については、先述の通り在留期間更新手続きを実施すれば、永続的に在留することができます。

しかしその他の在留資格に関しては以下の通り制限が設けられています。

  • 特定技能:最長5年
  • 技能実習生:最長5年
  • EPA介護福祉士候補者:在留4年目に資格試験に受験し、不合格の場合は帰国

違い④:日本語能力

またこれらの在留資格は日本語能力でも違いがあります。

 在留資格「介護」については、N2以上の日本語能力を有しています。
(介護福祉士養成校の入学要件がN2以上のため) 

対して他の在留資格は、それぞれ以下の通り、取得要件が定められています。

  • 特定技能:N4程度
  • 技能実習生:N4程度
  • EPA介護福祉士候補者:N3程度

これらの違いから見る在留資格「介護」のメリット

これらの違いから在留資格「介護」のメリットをまとめると、以下のようになるでしょう。

  • メリット①:介護に関して業務内容に制限がない(訪問介護も可能)
  • メリット②:有資格者であるため、専門的な知見を有している
  • メリット③:更新手続きさえ実施すれば、永続的に雇用できる
  • メリット④:日本語能力も比較的高め

上記のため、在留資格「介護」取得者を雇用したいと希望される事業者様も多いかと思います。

しかし、デメリットとして、冒頭に記載した通り、令和3年末時点で日本国内に約3,000人程度しか在留資格「介護」取得者が存在しないということも事実です。このため、実際に「介護」取得者を雇用するとなると、それなりに募集活動は長期化してしまう可能性が大いにあるという点は留意しておくべきでしょう。

もしくは、技能実習や特定技能など、他の在留資格で受け入れたのち、介護福祉士合格を目指して育成していく方法の方が、現実的と言えるかもしれません。

技能実習と特定技能については、以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
▶︎技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説

在留資格「介護」の取得要件

ここからは在留資格「介護」の取得要件について、ご紹介していきます。 

4つの取得要件

在留資格「介護」を取得するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

要件①:介護福祉士の資格を有していること

まず挙げられるのは介護福祉士の資格を有していることです。

在留資格「介護」を取得する外国人労働者の多くは、在留資格「留学」で来日し、介護福祉士養成校に通って介護福祉士の資格を取得するという流れが多くなります。

以前は在留資格を取得するための介護福祉士の資格取得ルートが決められていましたが、2020年4月以降、介護福祉士の資格取得ルートは問われないようになりました。

要件②:日本の企業(介護事業所)と雇用契約を結んでいること

二つ目の要件は日本の企業(介護事業所)と雇用契約を結んでいるということです。

いくら介護福祉士の資格を取得しても、その後日本の介護事業所ではない企業と雇用契約を締結した場合、在留資格は取得できません。

要件③:業務内容が介護もしくは介護の指導であること

業務内容が介護、もしくは介護の指導であることも要件として挙げられます。

つまり介護福祉士として業務に従事するかどうかが問われるわけです。

要件④:日本人と同等以上の報酬を受けること

最後の要件は日本人と同等以上の報酬を受けることです。

もし外国籍であることを理由に、同じ介護福祉士として就業している日本人従業員よりも報酬が低い場合は、在留資格の取得はできません。

不許可になるケース

在留資格「介護」を取得する上で、不許可になるケースとしては書類の不備の他、報酬が低いことなどが挙げられるでしょう。

先述の通り、雇用しようとしている介護事業所において、同じく介護福祉士として業務に従事している日本人従業員よりも報酬が特別な理由もなく低い場合、在留資格申請は不許可となります。

また業務内容において、介護福祉士としての業務が含まれていない場合も当然不許可となるので、注意しましょう。

在留資格「介護」の取得申請

最後に在留資格「介護」の取得申請の流れなどについて確認していきましょう。

手続きの流れ

まずは在留資格「介護」を取得するまでの流れからお話していきます。

ステップ①:介護福祉士の資格取得

留学中に介護福祉士の試験を受験し、資格を取得する必要があります。

この資格を取得するまでに、留学や技能実習、特定技能など、他の在留資格で日本に滞在しつつ、資格取得へ向けて学業へ励む方が大半になります。

ステップ②:就職活動

介護福祉士の資格取得後、日本の介護事業所への就職を目指し、就職活動を実施します。

すでに技能実習や特定技能で就労している事業所へそのまま就職する場合は、このステップは省略されることとなります。

ステップ③:在留資格変更許可申請の実施

日本の介護事業所への就職が確定後、出入国在留管理庁にて在留資格「介護」への変更手続きを実施します。

在留資格変更許可申請に必要な書類は後ほど触れます。

ステップ④:在留資格変更が許可された後、就業開始

在留資格変更許可申請が無事通れば、在留資格「介護」が取得でき、就業開始となります。

取得申請に必要な書類

在留資格「介護」の在留資格変更許可申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真
  • パスポート及び在留カードの提示
  • 介護福祉士登録証の写し
  • 労働者に交付される労働条件を明示する文書
  • 派遣契約に基づいて就労する場合、労働条件通知書
  • 契約機関の概要を明らかにする次のいずれかの文書
    ①勤務先などの沿革、役員、組織、事業内容などが詳細に記載された案内書
    ②その他勤務先などの作成した①に準ずる文書
  • 技能移転に係る申告書(技能実習からの変更の場合)

詳しくはこちらの出入国在留管理庁のページをご確認ください。 

更新の手続き

在留期間を更新する場合、在留期間更新許可申請を実施しなければなりません。

在留資格更新許可申請の流れとしては

  1. 必要書類を準備
  2. 出入国在留管理庁にて在留期間更新許可申請を実施
  3. 申請が許可されれば更新

となります。 

在留期間更新許可申請に必要な書類については、こちらの出入国在留管理庁のページを併せてご確認ください。

まとめ

今回は在留資格「介護」について、詳しく解説してきましたが、いかがでしたか。

当社は在留資格「介護」を含め、様々な職種の外国人労働者の採用を支援しております。

人材紹介サービスだけでなく、受け入れ体制の構築支援や受け入れ後の定着率向上のためのコンサルテーションなど、外国人労働者の活用に関して幅広いサポートを実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

カテゴリ:
在留資格
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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。