1. 帰化(日本国籍取得)の要件が「5年→10年」へ厳格化
(2026年4月1日施行)
居住要件の延長
日本に住んでいる期間が、これまでの「5年以上」から「原則10年以上」へと運用のハードルが上がります。本来、日本国民になる「帰化」の方が、在留資格の一つである「永住」よりも重い法的地位であるはずです。「永住より先に帰化できてしまうのは制度として不自然だ」という世論や政治的議論が強まり、永住権の基準(10年)に合わせる形で整合性が図られる形で変更となりました。
納税/社保の確認期間拡大
・納税証明: 直近1年分 ⇒ 過去5年分へ
・社会保険料: 直近1年分 ⇒ 過去2年分へ
単に長く住んでいるだけでなく、「日本社会のルールを継続的に守っているか」をより深くチェックする狙いがあります。これは、2026年6月から始まる「永住権の取消し制度」(後述)とも連動しており、「義務を果たさない人には、永住権も国籍も与えない」という強いメッセージです。
社会統合(インテグレーション)の重視
10年という歳月を求めることで、その人が本当に日本社会に馴染み、今後も日本国民として生きていく意思と基盤があるかを判断しようとしています。
また2027年以降には、さらに日本語能力(N2〜N3相当)の要件化も検討されており、言語面での統合も重視される流れです。

今回の変更は法改正ではなく、実務上の運用で見直されるとのことです。(国籍法上の要件は引き続き5年以上の在留が要件) 。また、2026年4月1日以前に申請中の方にも新基準が適用される可能性もゼロではないため、現場では混乱が予想されます。
2. 在留諸申請の手数料が「最大30万円」に
2026年3月10日、入管法改正案が閣議決定されました。これにより在留カードを発行する際の手数料上限の引き上げが決定しました。これまで非常に安価だったものが最大で30倍になります。
- 在留資格の変更・更新: 現行 4,000円〜6,000円 ⇒ 最大10万円
- 永住許可: 現行 1万円 ⇒ 最大30万円
手数料が上がった背景には、欧米並み(各国の手数料は下記表)の「受益者負担」へシフトするためです。急増する外国人住民への行政サービスの充実や、管理コストを賄うための「受益者負担」が強化されることが見込まれます。
各国の手数料一覧

⭐️手数料(収入印紙代)以外の隠れたコスト
上記の表はあくまで「国に払う印紙代」です。実際にはこれに加えて以下のコストがかかります。
- 翻訳・公証費用: 各国の証明書の取り寄せや翻訳(数万円〜)
- 健康診断料: 指定病院での受診(3万円〜5万円)
- 弁護士・行政書士報酬: 5万円〜30万円以上
就労系のビザに関しては所属企業が負担をしているケースなど多く見受けられます。この辺りの費用負担に関してもどっちが持つのか(企業側なのか労働者自身なのか)をしっかりと話し合い線引きを行うことが重要となってきます。
【深掘り】手数料値上げの「本当の理由」:不法滞在対策への充当
今回の改正で手数料の上限が「永住30万円」「更新変更10万円」と跳ね上がった背景には、単なる事務手続きのデジタル化費用以上の目的が含まれていると言われています。
1. 「国費退去(強制送還)」コストの受益者負担化
現在、日本から強制退去処分となった外国人が自費で帰国できない場合、その航空運賃などは日本の税金(国費)で賄われています。
- 政府の狙い: 在留資格を持つ「正規滞在者」から高い手数料を取ることで、入管業務全体の予算を確保し、結果として不法滞在者の送還費用などに充てるという「受益者負担」の考え方が強化されています。
- 議論のポイント: 支援団体などからは「ルールを守って真面目に暮らしている外国人に、他人の強制送還費用を負担させるのは不公平だ」という批判の声も上がっています。
2. 「偽造在留カード」や「不法就労」の監視強化
手数料収入は、2026年6月から始まるマイナンバー一体化システムの維持管理や、不法就労を検知するための高度なITシステムの導入費用に充てられます。
- 管理のIT化: 24時間オンライン申請ができる便利さの裏で、税金や社保の未納をAIが自動チェックする体制を構築するための「インフラ投資」という側面があります。
3. 日本版ESTA「JESTA」の運用資金
入国前に審査を行う「JESTA」のシステム構築・運用にも多額の費用がかかります。これも今回の手数料改定による増収分が充てられる見込みです。
つまり、国は『高いコストを払ってでも、ルールを完璧に守る優良な人材だけを日本に残す』という選別を明確に始めたと言えます。

3.永住権取得のハードルはどう変わる?
永住権取得に関してはこれまで以上に「今の在留資格のルールを完璧に守っているか」が厳しくチェックされるようになります。
「上陸許可基準」への適合性が実質審査の対象に
2026年2月のガイドライン改訂で追加された最大の変更点です。
- 内容: 現在持っているビザ(技人国や経営管理など)をもらった時の条件を、「今も」満たしているかが厳格に審査されます。
- 実務への影響: 例えば「技術・人文知識・国際業務」のビザを持ちながら、実態が「単純作業」になっている場合やビザ更新時よりも著しく年収が下がっている場合、それだけで永住申請が不許可になるリスクが高まりました。
在留期間「3年」でも申請できる特例が最後に
これまでは「在留期間3年」のビザを持っていれば、実質的に「最長の在留期間」とみなされ永住申請が可能でした。これが変更となります。
- 2027年3月31日まで: 現行通り、期間3年でも申請OK。
- 2027年4月1日以降: 原則通り「在留期間5年」を持っていないと申請できなくなります(※一部例外あり)。
永住権を取得するためには現在持っているビザが「最長の期間」である必要があります。就労系の在留資格は2012年7月までは「3年」が最長期間でした。しかし、法律が改正され、最長が「5年」となりました。しかし、それ以降も当面の間「3年」も最長の期間として扱う特例が運用されてきました。これが今回の改正で終了となります。そのため現在、就労系の在留資格を持っていて在留期間を「3年」有しており、その他の要件を満たしている方は今年度が申請できる最後の年となります。来年度以降は、更新を実施し「5年」の取得を目指すことが必要となります。
日本語能力の要件化(2027年4月〜本格導入の予測)
2026年4月時点ではまだ「努力目標」に近い扱いですが、JLPT N2〜N3相当の証明が必須、あるいは審査の加点対象になることがほぼ確実視されています。これは2027年4月からスタートする技能実習に代わる新制度「育成就労制度」の入国時にN5(A1)相当、またその後の特定技能への移行時にはN4(A2)相当の語学力が必要となることが関係しております。政府としては、 「現場で働くためのビザ(育成就労)で日本語を義務化するのに、その最終ゴールとでも言える『永住権』で日本語を問わないのはおかしい」という整合性を取るための決定です。
では、なぜ今日本語能力が必要なのでしょうか?
① 「孤立」を防ぎ「共生」するため
永住者は、日本人と同じ地域住民として一生を過ごします。
防災・行政の情報: 災害時の避難指示や役所からの重要通知が理解できないと、本人だけでなく地域全体の安全に関わります。
生活ルールの徹底: ゴミ出しや騒音問題など、言葉が通じないことによる地域住民とのトラブルを減らし、スムーズな「共生」を目指す狙いがあります。


② 社会保障へのフリーライド(タダ乗り)懸念
日本語が不自由だと、不況時に再就職が難しくなり、生活保護などの社会保障に頼らざるを得なくなるリスクが高まります。「自立して日本で働き続けられる力」の証明として、言語能力が重視されるようになりました。
この日本語の要件化に関しては、外国人が日本に馴染むためには必要だと容認派の意見がある一方、仕事はできるが勉強は苦手な人などが排除されてしまうなどの慎重派の意見もあります。この辺り導入までにどのような決着がなされるのか注視していきたいポイントです。

4.取得後も油断禁物!「永住権取消制度」の開始(2026年6月まで)
2024年の改正法が施行され2026年6月までに、「永住権の取消制度」が本格的に運用開始されます。
取り消し要件は以下の4点です。
①「うっかり未納が命取り!?」 税金・社会保険料の「故意」の未納
これが今回の改正の目玉です。
- 内容: 住民税や国民年金・健康保険料を、支払う能力があるのに「意図的に」支払わない場合、取り消しの対象になります。
- 背景: 2026年6月からの「マイナンバーカード・在留カードの一体化」により、入管は個人の納税状況をリアルタイムで把握できるようになります。
② 1年以下の拘禁刑(一部の犯罪)
これまでは「1年を超える懲役」などで退去強制(国外追放)になっていましたが、新ルールでは、万引き(窃盗)や暴行、住居侵入などで「1年以下の懲役・禁錮」を受けた場合でも、永住権を取り消して他の在留資格に「格下げ」できるようになります。
③ 住所地の届出義務違反
引越しをしてから90日以内に住所変更の届出を役所へ行わなかった場合に悪質とみなされると取り消しの対象となります。
④ 再入国許可の手続きミス
「みなし再入国許可」で出国し、1年以内に日本に戻ってこなかった場合、永住権は自動的に失効します。*これは他の在留資格にも言えることで、「みなし再入国許可」で出国して1年以内に戻ってこなかった場合は有していた在留資格が失効いたします。
5. 特定在留カード(マイナンバー一体化)開始
2026年6月14日開始より在留カードとマイナンバーカードの一体化が始まります。これによりスマホで更新申請が完結可能性があります。ただし、入管と税務署の情報が完全にリンクするため、「1日でも税金・社保の未納があれば永住・帰化は絶望的」という時代になります。以下で
メリット
利便性が飛躍的に向上し、日本での生活が「デジタル化」されるのが大きな特徴です。
- カードが1枚にまとまる: 常に2枚持ち歩く必要がなくなり、紛失リスクが減ります。
- 行政手続きのオンライン化: 引っ越し時の役所への届け出や、在留期間の更新申請がマイナポータル経由で24時間いつでも可能になります(入管の窓口に並ぶ必要がなくなります)。
- 健康保険証・銀行口座との連携: 病院での受付がスムーズになり、銀行口座の開設や住所変更もオンラインで完結しやすくなります。
- 再入国許可の管理が楽に: スマホで自分の在留期限や再入国許可の状態をすぐに確認できるため、「うっかり失効」を防げます。
懸念点
一方で、「管理の高度化」によるプレッシャーが強まります。
- 納税・社保の「完全な可視化」: 入管と自治体、税務署の情報がリアルタイムでつながります。これまで「更新の時にまとめて払えばいいや」と考えていた未納状態が、即座に入管のシステムで検知されます。
- 永住権取消のリスク増: 前述の「永住権取消制度」とセットで運用されるため、未納がある場合はカード更新時やオンラインチェックで「警告」や「取消対象」になるリスクが高まります。
- セキュリティへの不安: 「すべての個人情報が1枚に集約される」ことへの心理的な抵抗感や、紛失時の悪用リスクを心配する外国人材も少なくありません。
- 「30万円」などの高額手数料: この高度なシステムを維持するための費用として、永住申請などの手数料が引き上げられたという背景があります。
2026年は「管理2.0」の幕開け
この特定在留カードは、単なる「便利なカード」ではありません。日本政府が「ルールを守る外国人をデジタルで手厚くサポートし、守らない人をデジタルで厳格に排除する」という体制を完成させた象徴とも言えます。
⭐️人事担当者が伝えるべきポイント
「透明化されるからこそ、『正しく払う』が最大の防衛策」
2026年6月以降は、「バレない」という概念がなくなります。
- 従業員への周知: 「マイナンバーと紐付くので、税金の未納はビザに直結します」と早めにアナウンスすることが必要になります。
- 住所変更の徹底: 引っ越しから14日以内の届け出を忘れると、デジタル管理上ですぐにフラグが立ちます。
- カード切り替えのサポート: 2026年6月の開始直後は混乱も予想されるため、切り替え手続きを会社として登録支援機関などと連携しながらサポートする姿勢を見せると、信頼関係が深まります。
6.今後の外国人政策
今後日本にて予定されている外国人政策についてまとめていきます。
日本版ESTA「JESTA」の運用開始(2028年)
2026年3月の閣議決定で2028年度より日本版ESTA*とも言えるJESTAが導入されことが決まりました。
*ESTAとは、ビザなしでアメリカに行くための事前のネット許可証のようなもの。危険な人物や不法滞在しそうな人を、飛行機に乗る前などにチェックして入国させない仕組み。
これまで、観光やビジネスの短期滞在(90日以内)であれば、多くの国の人が「パスポートひとつ」で日本に来れました。しかし、2028年度(2029年3月末まで)からは、事前にスマホやPCからJESTAの認証を受けないと、飛行機にすら乗れなくなります。
1. なぜ導入されるのか?(政府の狙い)
- 不法就労・オーバーステイの阻止: 日本に来てから「実は働くつもりでした」とバレて追い返すのは大変です。来る前にAIやデータベースで審査し、怪しい人を入り口で弾きます。
- 入国審査のスピードアップ: 事前審査が終わっている人は、空港の「顔認証ゲート」でスムーズに入国できるようになります。
- テロ・犯罪対策: 国際的なブラックリストと照合し、危険人物の入国を未然に防ぎます。
2. 導入スケジュールと費用
- 閣議決定: 2026年3月10日(法案が正式に動き出しました)
- 運用開始: 2028年度中(2029年3月まで)
- 手数料: 有料になることが決定しました。具体的な金額は今後決まりますが、アメリカのESTA(約6,000円)などを参考に、数千円程度になると予想されています。
3. 他の在留資格(技人国・永住など)への影響は?
「うちは短期滞在じゃないから関係ない」と思ったら大間違いです!関係あります。
- データの連結: JESTAで登録した情報は、2026年6月から始まる「特定在留カード(マイナンバー一体型)*のシステムと裏側で繋がります。
- 過去の「嘘」がバレる: 昔、短期滞在(JESTA)で来た時の申告内容と、今の就労ビザや永住申請の内容に矛盾があると、「虚偽申告」として一発アウトになるリスクが高まります。
育成就労制度への最終準備
旧・技能実習制度に代わる「育成就労制度」の施行日が、2027年4月1日に正式決定しました。2026年は、この新制度に向けた「ガイドライン」や「職種別の詳細ルール」が続々と発表される、企業にとっての準備期間となります。
まとめ
2026年度を一言で表すと、「日本に住み続けるためのコストと誠実さが試される年」です。「帰化」要件の厳格化や永住権の要件変更、在留資格諸申請の手数料アップなどまさに日本に住むために日本のルールをしっかりと守りかつ必要コストも負担する誠実さが求められます。「便利になった」と喜ぶ半面、その裏にある「厳格な管理」に目を向けなければなりません。


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