【外国人労働者のキャリアパス】パターンや設計のポイントなどを簡単に解説

【外国人労働者のキャリアパス】パターンや設計のポイントなどを簡単に解説

外国人労働者を雇用しているものの、どういったキャリアパスを設計すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では外国人労働者の代表的なキャリアパスをご紹介した上で、キャリアパス設計におけるポイントなどを解説していきます。外国人労働者のキャリアパス設計の基本を押さえたい方は、是非一度ご確認ください。

目次

外国人労働者が日本企業に抱く不満

外国人労働者のキャリアパスについて具体的なお話をする前に、まずは外国人労働者が日本企業に抱いている不満や転職を考える理由について、確認していきましょう。

日本企業で働く上での不満

外国人労働者が日本企業で働く上で、職場に抱えている不満については、パーソル総合研究所が2020年に実施した「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」のデータを参照してみましょう。

調査結果によると、外国人労働者が職場に抱く不満のTOP5は以下の通りです。

1位:昇進・昇格が遅い 28.6%
2位:給料が上がらない 28.2%
3位:給料が安い 25.6%
4位:明確なキャリアパスがない 23.8%
5位:無駄な会議が多い 20.8% 

この中で1位と4位はキャリアパスに関連する不満となっており、外国人労働者の満足度を高めるためには、昇進や昇格を含めたキャリアパスの整備が必要であることがわかります。

転職を考える理由

外国人労働者は先述のような不満を抱えているわけですが、実際に転職を考える理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

代表的なものをいくつか見ていきましょう。

理由①:給与への不満

一つ目の理由として挙げられるのが、給与への不満です。

外国人労働者が来日する理由として代表的なものの一つが、母国よりも高い水準の給与を求めていることが挙げられます。

そのため給与が低ければ、すぐに転職を考える外国人労働者も多いのです。

理由②:人間関係

また人間関係も転職を考える理由の一つと言えます。

日本人であっても職場の人間関係は長く就業するにあたって重要な要素となりますが、外国人労働者にとってはより重要になってきます。

もし職場の人間関係に馴染めないといったことがあれば、転職を考えても不思議ではないのです。

理由③:能力やスキルを活かせない

能力やスキルを活かせないという点も転職理由として挙げられます。

来日する外国人労働者はその在留資格に応じた高い専門性と技術を有しており、自分自身のスキルにプライドを持っています。

そのため日本企業でそのスキルをなかなか活かす機会をもらえず、日本人社員の補佐のような業務しか任されなければ、転職に思考が向いてしまうのでしょう。

外国人労働者の主なキャリアパスについて

ここからは外国人労働者のキャリアパスについて、5つのパターンをご紹介していきます。

マネジメントコース

まずご紹介するのが「マネジメントコース」です。

管理職を目指すコースのことを指し、最も一般的なキャリアパスと言えます。

日本人社員にとってもマネジメントコースは一般的ですが、日本と海外においてマネジメントの役割が異なる点は留意しておく必要があるでしょう。

日本で言うところの管理職、特に係長や課長レベルであれば基本的にプレイングマネージャーという立ち位置で、自身もプレーヤーとして活動しながら、メンバーの管理もしていく形が多いです。

対して海外では管理職は専門職として扱われ、基本的にマネジメント業務に特化して従事することになります。

そのため外国人労働者側からマネジメントコースを希望する意見が出た場合は、この違いなどを踏まえて対応していく必要があるでしょう。

スペシャリストコース

次にご紹介するキャリアパスは「スペシャリストコース」です。

現在担当している業務分野における経験をさらに重ねて、その分野のスペシャリストを目指していきます。

エンジニアやWebデザイナーなどのクリエイティブ職種などは勿論、セールスやマーケティングなどの分野でのスペシャリストを目指していくケースもあります。

スペシャリストコースを選択した場合、基本的に管理職には就かず、現場の第一線で働き続けることになるため、それを踏まえた上での評価項目なども設けていく必要があります。

マネジメントコースと並んで、代表的なキャリアパスと言えるでしょう。

ゼネラリストコース

ゼネラリストコースというキャリアパスも考えられます。

特定分野の経験やスキルに特化して経験を身に付けるというよりも、その職種が関わるビジネス全体に関する知識や経験を積んでいくコースと言えます。

日本における総合職採用の社員に対するジョブローテーションをイメージしていただければわかりやすいでしょう。

とはいえ外国人労働者の場合、在留資格によって従事できることになる業務が限定されているため、本人がゼネラリストコースを望んでも、難しいケースは多いと言えます。

活動制限のない身分系在留資格の外国人労働者であれば、ゼネラリストコースも有力な選択肢になりますが、その他の就労系在留資格の場合はスペシャリストコースやマネジメントコースが主流となるでしょう。

在留資格の詳細については、以下の記事をあわせてご覧ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説

帰国コース

続いてご紹介するのは帰国コースです。

日本に来日する外国人労働者の中には、日本である程度経験を積んだ後、帰国を考えているという人も一定数いると言えます。

この場合は外国人労働者が考えている具体的なスケジュールなどを確認した上で、その期間に合わせたキャリアパスを設計しなければなりません。

当然そこまでの期間は掛けられませんが、帰国後の本人の希望キャリアを踏まえ、それに繋がるようなキャリアを用意していくことがポイントになるでしょう。

また、現地に拠点を有しているのであれば、本人の帰国するタイミングで、現地社員として再雇用するという企業も存在します。日本で一定の実務経験を積んだ後、現地では幹部社員として活躍してもらうケースも増えてきています。

独立コース

キャリアパスの最後にご紹介するのは独立コースです。

将来的に自分自身でビジネスを立ち上げることを考えている外国人労働者が、選択するキャリアパスと言えます。

独立には主に2つのパターンがあります。

一つは帰国した後、自分でビジネスを立ち上げるというもの。
もう一つは社内ベンチャー制度などを利用して、子会社を設立するというものです。

一つ目のパターンは将来的にビジネスパートナーとしての関係を築けることがありますし、二つ目のパターンも自社にとって大きなメリットにもなります。

そのため独立コースを志望する外国人労働者がいれば、経営やファイナンスなど、起業に必要な知識を得られるようなキャリアパスを設計すると良いでしょう。

外国人労働者のキャリアパスを設計する時のポイント

ここまで外国人労働者のキャリアパスについて見てきましたが、具体的にこれらのキャリアパスを設計する際どのようなポイントを押さえるべきなのでしょうか。

将来のキャリアプランを確認する

一つ目のポイントとして挙げられるのが、将来のキャリアプランを確認することです。

外国人労働者を雇用した時点で、まず当該外国人が想定している将来のキャリアプランを確認することがとても大切なプロセスになります。

仮に本人が明確な回答を持っていなくても、先ほど挙げた

  • マネジメントコース
  • スペシャリストコース
  • ゼネラリストコース
  • 帰国コース
  • 独立コース

の中で、どれが一番自分の理想に近いか、ヒアリングしていくことも有効でしょう。 

本人の将来のキャリアプランを確認することは、外国人労働者のキャリアパスを設計する上での基盤となるため、必ず押さえるようにしましょう。

自社の価値観や将来ビジョンを明示する

続いてのポイントは自社の価値観や将来ビジョンを明示するという点です。

外国人労働者が想定する将来のキャリアプランを確認できたら、次に自社のことを開示していく番になるでしょう。

具体的には自社特有の価値観や目指しているビジョン、そのために取り組んでいる戦略などを、わかりやすく解説することが求められます。

自社がどのような方向を目指しているのかを知ってもらうことは、外国人労働者のキャリアパスを設計する上で、重要な要素となるため、外国人労働者が想定する将来のキャリアプランの確認と合わせて実施すると良いでしょう。

期待する役割を明示する

期待する役割を明示するという点も重要なポイントとなります。

自社の価値観や目指しているビジョンを説明するのと合わせて、当該外国人に対して期待している役割もしっかりと明示することが重要です。

外国人労働者の考える将来キャリアプランとこちらの期待する役割が一致していない場合、実際に就業した後ですれ違うことが多くなり、結局転職や退職に繋がってしまうということになりかねません。

このようなミスマッチを防ぐためにも、外国人労働者の将来のキャリアプランと、自社が当該外国人に期待する役割の共有化を図って、相互理解や信頼を醸成していくことがポイントになるでしょう。

その他のミスマッチについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶︎【外国人労働者のミスマッチ】デメリットや防ぐ方法・ポイントを解説

育成方針の策定

また育成方針を具体的に策定することもポイントとして挙げられます。

外国人労働者が想定している将来におけるキャリアプランと、自社が当該外国人に対して期待する役割の共有ができれば、次に取り組むべきは育成方針の策定です。

キャリアプランと役割を踏まえた上で、

  • 配置
  • 昇進や昇格の道筋
  • 職業上の目標や将来目標
  • 教育プラン
  • 従事する業務がキャリアに与える影響

などといった事項について、具体的に検討していくことになるでしょう。 

ここで重要なのは、従事することになる業務が外国人労働者のキャリアにとって、どのような位置づけに当たるのかをきちんと説明することです。

その上で社内における業務の意義や目標などの道筋を立てていくと良いでしょう。

定期的な面談を実施する

外国人労働者の育成方針が策定できれば、実際に業務に従事してもらうことになります。

そこで重要になるのが定期的な面談の実施です。

定期的な面談を実施することで、育成方針に則ってきちんと進めているかなどを確認していくわけです。

また働いている中で、外国人労働者の中で当初のキャリアプランから別のキャリアプランへと意向が変わってくることも、当然起こり得ます。

こういった外国人労働者本人の考えの変化などに柔軟に対応するためにも、定期的な面談を実施した上で、状況を把握することが重要なのです。

なお、以下の2つの記事は、面談や外国人社員のマネジメントにお役立ちできると思いますので、ぜひあわせてご覧ください。
▶︎異文化コミュニケーションって何?よくある問題からポイントまでを解説!
▶︎【ダイバーシティマネジメントとは】意味やメリット、具体例を解説します!

外国人労働者が働きだした後のキャリア支援について

最後に外国人労働者が働きだした後のキャリア支援についてのポイントも押さえておきたいと思います。

権限と責任を付与する

外国人労働者と信頼関係を構築した上で、従事してもらっている業務に対する一定の権限と責任を付与することで、当該外国人のモチベーション向上に繋げることができます。

また権限と責任の付与に紐づき、ややハードルの高い業務を任せることも有効です。

その場合はその業務の重要性を説明した上で、外国人労働者にとっても有意義である旨を説明するなどの対応が必要になります。

適切な評価制度

外国人労働者の成果をしっかりと評価し、その成果に応じた報酬や処遇を与えることで、モチベーションの維持・向上に繋げることができるでしょう。

外国人労働者が職場に抱く不満や転職する理由の中でも「給与の低さ」が挙げられていた通り、外国人労働者は評価や給与に対して非常にシビアに見ています。

適切な評価を実施し、外国人労働者の働きにしっかりと報いなければ、活躍どころか転職や離職へと繋がってしまうということは忘れないでください。

教育や研修などを充実させる

教育や研修などを充実させることもポイントとなります。

外国人労働者の希望するキャリアパスに応じて、適切な教育や研修の場を提供し、当該外国人労働者がスキルアップできる環境を整備していくことも重要なのです。

教育や研修はどうしても入社時にフォーカスされがちですが、外国人労働者の成長ステージに合わせた教育や研修を実施することも、キャリア支援においては欠かせません。

まとめ

今回は外国人労働者のキャリアパスをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は外国人労働者の人材紹介サービスを軸としつつ、受け入れ体制や教育方法に関するコンサルテーションも実施しております。

外国人労働者のキャリアパスを踏まえた支援も可能ですので、ご興味ありましたら是非一度お気軽にご相談ください。

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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。