【外国人労働者の雇用時に押さえておくべき法律】労働基準法などを簡単解説

【外国人労働者の雇用時に押さえておくべき法律】労働基準法などを簡単解説

この記事では外国人労働者を雇用する際に押さえておくべき法律について、労働基準法や出入国管理及び難民認定法などについて解説していきたいと思います。外国人労働者の雇用に取り組む際に、事業者様は必ず確認しておくべき事項になりますので、ぜひ最後までご確認ください。

目次

外国人労働者を雇用する際の労働契約の準拠法

はじめに外国人労働者を雇用する際に認識すべき、労働契約の準拠法について確認しておきます。

日本には「法の適用に関する通則法」という法律があり、そこで「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の方による」と定められています。

要するに契約当事者が契約を行う際に、どの国の法律を適用するか選択できるというわけです。

この法律は労働契約にも該当しますので、日本企業としては当然日本法を適用した上で雇用したいと考えると思います。

そのため外国人労働者を雇用する際の労働契約の準拠法は、基本的に日本法となるのが多くなり、その結果として労働基準法などの労働関連法令も適用される形になるのです。

外国人労働者に適用される主な労働関連法令

ここからは労働契約の準拠法を日本法とした場合に押さえておくべき、主な労働関連法令について解説していきます。

労働基準法

まずご紹介するのは労働基準法です。

労働者が健康で安定した生活を営むことができるように、労働条件の最低基準を定めている法律であり、労働組合法、労働関係調整法と合わせて労働三法とも呼ばれています。

労働基準法では基本的に以下の項目についての基準を定めています。

  • 労働契約の満たすべき基準
  • 賃金の支払いに関するルール
  • 労働時間の上限
  • 休憩や休日
  • 時間外労働のルール
  • 割増賃金
  • 年次有給休暇の付与ルール
  • 解雇におけるルール 

他にも年少者(16歳未満)の児童を労働力として使用してはならない旨や、未成年の労働契約におけるルール、妊産婦の就業制限や産前産後におけるルール、就業規則の作成と届出義務なども定めています。

労働基準法で就業規則について定めていることからもわかるとおり、就業規則よりも労働基準法の方が上位の効力を持つという点は留意すべきでしょう。

そのためもし労働基準法を下回る就業規則を作成したとしても、その下回る箇所については労働基準法が自動的に適用されることになるのです。

また労働基準法には罰則規定が設けられており、重いものであれば「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」が科されることになります。

健康保険法・雇用保険法

続いてご紹介するのは健康保険法と雇用保険法です。

健康保険法

健康保険法とは、労働者とその被扶養者を対象に保険給付について定めた法律です。

健康保険法における具体的な制度としては、健康保険制度が挙げられます。

健康保険制度とは労働者本人やその家族が病気や怪我をした時、出産をした時、亡くなった時などに、必要な医療給付や手当などを支給するための制度です。

法人の事業所においては強制適用となり、適用事業所で働く労働者は国籍問わず加入者となります

健康保険料については、雇用した企業と労働者が折半で負担することになりますが、海外では健康保険があっても強制加入でないこともあります。

そのため外国人労働者を雇用する際は、強制適用となる点を事前にしっかりと説明する必要があるでしょう。

雇用保険法

雇用保険法とは、労働者の生活や雇用の安定、雇用機会の増大や失業の防止などを目的に定められた法律です。

雇用保険も健康保険と同じく、加入要件を満たした場合は強制的に加入しなければなりません。

雇用保険の加入要件としては

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上
  2. 31日以上の雇用が見込まれる

となっています。

そのため就労系在留資格などで来日する外国人労働者であれば、加入要件を満たすケースが大半になるでしょう。

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康の確保」と、「快適な職場環境の形成」を目的として定められた法律です。

労働安全衛生法では主に以下のような取り組みをすることを企業に求めています。

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置

機械や爆発物等による危険や、放射線や粉じん、ガスなどによる健康障害を防止するための措置を講じる必要があります。

労働者の就業にあたっての措置

労働者を雇入れた際に、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行わなければなりません。

健康の保持増進のための措置

作業の適切な管理や健康診断、健康診断実施後の保健指導などの対応を取っていく必要があります。

快適な職場環境の形成のための措置

作業環境を快適な状態に維持することや、労働者の従事する作業方法を改善することなど、快適な職場環境を形成しなければなりません。

事業場の安全又は衛生に関する改善措置

労働災害などが発生した場合、厚生労働省からの改善計画作成と提出なども求められます。

労働者災害補償保険法

労働者災害補償保険法とは、労働者が通勤や業務中において、傷病・災害にあった際の補償について定めた法律です。

いわゆる労災保険と呼ばれているもので、業務や通勤を起因とした負傷や疾病などが生じた労働者に対して、必要な保険給付を実施し、治療にかかる費用や生活費を補填することを目的としています。

労働者災害補償保険で設けられている保険給付は以下の8つです。

  1. 療養補償給付
  2. 休業補償給付
  3. 障害補償給付
  4. 遺族補償給付
  5. 葬祭料
  6. 疾病補償年金
  7. 介護補償給付
  8. 二次健康診断等給付 

労働者災害補償保険法は2020年9月1日に改正法が施行されており、従来は一つの勤務先でのみ認定されていましたが、複数の勤務先も含めて認定されることになりました。

例えば、これまでは事故が起きた勤務先の賃金を基礎として、保険給付額が決定されていましたが、現在は全ての勤務先の賃金額を合算した額を基礎とすることになっているのです。

労働者災害補償保険法も健康保険や雇用保険と同じく、加入が義務付けられており、外国人労働者も当然加入対象となります。

最低賃金法

最低賃金法とは、雇用主である企業が労働者に対して支払う賃金の最低額を定めた法律です。

賃金の最低額を保証することによって労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定や労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として定められました。

最低賃金には以下の2種類あります。

  • 地域別最低賃金
  • 特定最低賃金 

地域別最低賃金は産業や職種などは問わず、都道府県ごとに決められている最低賃金で、特定最低賃金は特定の産業に対して定められた最低賃金です。

上記二つの最低賃金が適用される場合は、高い方の最低賃金を適用する形になります。

最低賃金は基本的に首都圏や都市部の方が高い傾向にあり、例えば2022年1月時点で東京は1,041円、大阪府は992円、愛知県は955円となっています。

対して岩手県や愛媛県、宮崎県などの地方は821円となり、東京都と221円の差があることがわかります。

最低賃金の対象となるのは、基本給と諸手当(皆勤手当、通勤手当、家族手当は除く)ですので、その点を考慮して賃金を設定する必要があるでしょう。

またもし外国人労働者側が最低賃金を下回る賃金を望んだとしても、強制的に最低賃金を適用しなければならないので注意しましょう。

労働組合法

労働組合法は、労働者が雇用主である企業との交渉において、対等な立場に立つことを促進することによって、労働者の地位を向上させることを目的に定められた法律です。

また労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出すること、その他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し団結することを擁護すること、団体交渉をすることやその手続きを助成することなども目的として掲げられています。

具体的な項目としては、

  • 労働組合の定義
  • 労働組合の取り扱い
  • 労働協約の効力や期間
  • 労働委員会
  • 不当労働行為事件の審査手続き
  • 訴訟

等について記載されています。 

労働組合法における労働者とは、職業の種類を問わず、賃金・給料その他これに準ずる収入によって生活する者のことを指します。

そのため労働組合法は日本で働く外国人労働者にも適用され、雇用した外国人労働者が労働組合に参加することも当然可能となります。

外国人労働者を雇用する場合に適用される法律

ここまで外国人労働者を雇用する場合に適用される労働関連法令について見てきましたが、最後に外国人労働者雇用に適用される法律についてご紹介していきます。

出入国管理及び難民認定法

出入国管理及び難民認定法とは、日本に入国あるいは日本から出国する全ての人の出入国及び日本に在留する外国人の在留の公正な管理、難民の認定手続きを整備することを目的として制定された法律です。

一般的には入管法と呼ばれている法律のことを指します。

施行されて以降度々改正を重ねて、直近の改正は2018年に行われています。

改正のトピックとしては、特定技能制度の創設が挙げられ、新たな在留資格として特定技能1号と特定技能2号の二つの在留資格が設けられたという点でしょう。

特定技能は従来の就労系在留資格では禁止されていた単純労働を含めた職種でも、外国人労働者の就労を可能にしたということで、国内労働力不足の解消が期待されています。

このように出入国管理及び難民認定法は、その時に応じた外国人労働者を雇用するための在留資格に関する規定などを定めているわけです。

そのため外国人労働者の雇用に取り組む場合は、最新の出入国管理及び難民認定法をしっかりと把握し、改正された場合はすぐにキャッチアップしていくことが求められます。

出入国管理及び難民認定法の改正の詳しい内容については、出入国在留管理庁のこちらのページから参照できますので、興味のある方は併せてご確認ください。

雇用対策法

雇用対策法も押さえておくべきでしょう。

雇用対策法とは、労働者の職業安定や経済的・社会的地位の向上を図り、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的としています。
(※完全雇用とは、労働の意思と能力のあるものが全て働いている状態のこと)

雇用対策法の中には外国人の適正な雇用管理を目的として、外国人労働者雇用に関する基本ルールについても定めているのです。

雇用対策法における外国人労働者雇用のポイントは以下の3点です。

外国人雇用状況の届出

外国人労働者を雇用する場合、当該外国人の氏名や在留資格に関する情報を、管轄のハローワークまで提出することが義務付けられています。

この外国人雇用状況の届出に基づいて、ハローワークから外国人労働者の雇用環境改善に向けて助言や指導などを受けることが可能となっているのです。

雇用管理の改善

外国人労働者を雇用する上で、雇用主である企業が遵守すべき法令や、務めるべき雇用管理の内容などについての指針を示しています。

不法就労の防止

外国人労働者の雇用において外国人雇用状況の届出を提出する際に、当該外国人の在留カードなどを確認する機会が生じます。

その結果として不法就労の防止に繋げることができるのです。

まとめ

今回は外国人労働者を雇用する上で、押さえておくべき法律についてお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は企業様の外国人労働者の雇用を支援すべく、外国人労働者に特化した人材紹介サービスや在留資格申請のサポートなどをさせていただいております。

外国人労働者の雇用に取り組みたいという方は、是非お気軽にご相談ください。

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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。