45年の専門家ネットワークを活かし、外国人雇用の課題を解消する|株式会社東京リーガルマインド様

労働力不足が深刻化する中、外国人材の受け入れが急速に拡大している日本。しかし、受け入れ企業の多くが外国人材の育成やマネジメントに課題を抱えているのが現状です。在留資格の複雑な制度理解から、異文化コミュニケーション、さらには外国人材自身のスキルアップまで、その課題は多岐にわたります。

そうした中、45年にわたり法律家や公認会計士など専門人材の育成に携わってきた株式会社東京リーガルマインド(通称:LEC)が、外国人雇用に関する包括的な研修サービスを展開しています。同社の特徴は、受け入れ企業向け、外国人材向け、そして両者をつなぐ異文化理解、チームビルディングまで、外国人雇用に関わる全ての関係者に対応したサービスを提供している点です。

今回は、同社法人事業本部で外国人材育成研修を手がける朴氏に、外国人雇用支援事業への取り組みと、そこから見えてきた現場の課題についてお話を伺いました。

45年以上の専門人材の育成ノウハウ・専門家ネットワークを活かし、外国人材教育の分野へ

東京リーガルマインドの事業概要
東京リーガルマインド(LEC)の事業概要

ーーー 貴社の事業についてお伺いできますか?

朴氏:

当社は1979年に司法試験の対策予備校として設立され、45年以上にわたり法律家や公認会計士、公務員など専門人材の育成を行ってまいりました。現在は全国30拠点で600講座以上の多彩な講座を通して資格取得支援のサービスを幅広く提供しています。

それ以外では、当社法人事業本部で企業様や団体様向けの研修、大学向けの試験対策講座、公共の就労支援や中小企業支援事業の受託業務も手がけています。

当社の理念は、AI時代における倫理と知的創造を担う人材の育成と人類の継続的な発展に貢献する”経営リーダー”の養成です。一昨年にはサステナビリティ宣言も行い、年齢や国、性別、地域組織といった階層を問わず、全ての人々が学びたいことを学びたいところで学べるような教育プログラムを提供することを対外的にも宣言しています。この理念が、外国人教育分野への参入のきっかけにもなっています。

ーーー 外国人関連の研修事業について教えてください

朴氏:

当社では包括的なアプローチを取っており、受け入れ側と外国人材の両方、さらに両者が一体となったチームとしての異文化理解や多文化共生のための様々なコンテンツ・研修メニューを提供しています。

このサービスを始めたきっかけは、2019年の入管法改正で特定技能制度が新設されたことです。今後日本経済を支える外国人材への需要が高まっていく中で、当時の日本政府を含めて外国人受け入れに関する情報や制度の整備に課題があると感じていました。

そこで当社は、外国人雇用支援センターという民間団体に参画し、「外国人雇用管理主任者」という民間資格を立ち上げました。この資格を通して、受け入れ企業や企業を支援する士業の方々が適切な教育を受け、外国人の受け入れや定着支援において正しい情報を持って適切に支援できるよう情報提供を行っています。

ーーー 他社との違いはどこにありますか?

朴氏:

当社の最大の強みは、45年間の資格試験対策で培った専門家ネットワークです。弁護士、社会保険労務士、行政書士、コンサルタントなど、様々な分野の専門家が蓄積されているため、幅広いバリエーションの研修に対応できる組織体制が整っています。

受け入れ企業・外国人材・相互理解の3領域で包括的な研修メニューを取り揃える

東京リーガルマインドが提供する3つの人材育成・研修領域
東京リーガルマインドが提供する3つの人材育成・研修領域

ーーー 具体的にはどのようなカリキュラムを提供されていますか?

朴氏: 

大きく3つの領域に分かれます。

受け入れ側向けでは、「外国人雇用管理主任者」資格取得のための講座をeラーニング形式で提供しています。約5時間のコースで、外国人採用における労務管理全般や在留資格の基礎知識を学べる内容です。外国人を初めて採用する企業や人事の方々、外国人紹介業務に携わる方々や士業の方々がよく受講されています。

また、月1回の無料セミナーも開催しており、2027年度に開始予定の育成就労制度など、制度変更が頻繁にあるため、法改正の最新情報を専門家を招いて説明しています。

さらに、社労士向けには外国人雇用の実務に特化した講座も提供しており、労務トラブル対応など、より実践的な内容を扱っています。

外国人向けでは、レベル別の日本語研修プログラムはもちろん、日本で働くための基礎知識をeラーニング形式で提供しています。ビジネスメールの送り方や報連相のやり方を、良い例と悪い例を示しながら約3時間で学べる内容で、現在はベトナム語と日本語の字幕で対応しています。また、大学からのご要望で作成した就職支援研修プログラムも提供しています。

3つ目の領域として、相互理解を高めるチームビルディング関連では、異文化コミュニケーション入門講座をeラーニングで提供しているほか、外国人をリーダーとして育成するためのサポート研修なども手がけています。

ーーー 研修の手法としてはどのような形になりますか?

朴氏: 

集合研修、オンライン研修、ハイブリッド研修、そして各自のペースで学習できるeラーニングまで、全ての受講スタイルに対応しています。企業様のご要望やニーズに応じて、様々にカスタマイズしてご提供しています。

ーーー 外国人雇用管理主任者資格は外国人の方も受講可能でしょうか?

朴氏:

はい、外国人の方も受講されています。

実際に受講されている外国人の多くは、外国人材紹介事業や協同組合、支援機関で働く外国人スタッフです。基本的に日本人が受験する試験のため、専門用語や漢字が多く出てきますので、受講される方は日本語能力検定N3レベル以上の方が中心となっています。

こうした事業者では、外国人スタッフが日本企業の担当者とコミュニケーションを取る機会が多いため、より信頼感を得られる対応という観点から、日本人と同様にビジネスマナーや専門知識を身につけた証明として、この資格を取得されるケースが増えています。

ーーー 外国人向け研修ではどういう方が受講されているのですか?

朴氏: 

現状では、当社の特性上、ホワイトカラー労働者向けのコンテンツが多くなっています。資格取得系や自己啓発系の研修が豊富なため、オフィスワークの外国人の方が受講されるケースが多いです。

ただし、ホワイトカラーの方々は既に一定の日本語能力や基礎知識をお持ちの方が多く、自律的な学習環境も整っています。そのため、当社としてはむしろ現場職、つまり技能実習生や特定技能外国人の方々に、日本語を含めた基礎的なビジネス知識をしっかり学んでいただく機会を提供することが重要だと考えています。

eラーニングやオンライン研修の形式により、日本にいらっしゃらない方も受講可能です。ただし、国によってはサーバーの関係で日本の環境での受講が困難なケースもあるため、そういった場合にはデータ連携による提供も行っています。

在留資格の分野を問わず、本当に幅広い対象にコンテンツを提供していく予定ですが、特に現場で働く方々が日本社会でより活躍できるよう、必要な基礎知識を身に付けられる研修に注力しています。

民間企業から自治体まで|包括的な教育プラットフォームを目指す

ーーー どのような企業が導入されていますか?

朴氏:

業種も多岐にわたり、大手企業から中小企業、自治体まで幅広くご利用いただいています。外国人分野では、ジェトロ(日本貿易振興機構)の外国人材活用促進のためのコーディネーター養成プログラムを4年間担当させていただいてます。

人材紹介業、監理団体、そして一般の中小企業で外国人採用を検討されている企業など、幅広い実績があります。既に受け入れている企業だけでなく、これから受け入れを検討している企業からのご相談も多くいただいています。

ーーー 受け入れ企業はどのような課題感があり研修を導入されますか?

朴氏:

大きく2つの課題があります。

まず、在留資格制度の複雑さに起因するコンプライアンス上の課題です。例えば、技術・人文知識・国際業務などのオフィスワークに従事する外国人が取得する在留資格では、日本人と異なり該当する専門領域に関連した仕事しかできないといった法的ルールがあります。企業の人事担当者の方は注意すべき項目があることは理解しているものの、詳細まで把握しきれていない、もしくは肌感覚で難しいと感じているケースが多いのが現状です。そこで専門の資格取得を通じた研修で、体系的にインプットする機会を作りたいというニーズから導入されています。

次に、異文化コミュニケーションの課題です。外国人の部下を初めて持つ管理職などで、日本人社員と外国人社員の間にコミュニケーション不足が生じ、お互いに不満を抱えてしまうケースがあります。こうした状況を受けて、経営陣や管理職が適切にマネジメントし、一緒に働く外国人にも異文化理解を促進する必要があるという課題意識から、当社のチームビルディングや異文化理解の研修を受講いただいています。

こういった課題を放置すると早期離職やモチベーション低下による定着率の問題にもつながるため、未然に防止するという観点からも重要だと考えています。

ーーー eラーニングでの学習継続に課題はありませんか?

朴氏:

おっしゃる通り、自主性に左右される部分は大きな課題です。意欲のある方はどんどん進めていかれますが、やらされ感のある方などはなかなかアクセスしなくなってしまいます。

現在は講座を10分程度の細かいセクションに分けて集中度を維持したり、所々でクイズを入れて注意喚起するなど、学習効果を高める工夫をしています。特に製造業や建設業などの現場で働く方々には、座学での勉強に慣れていない方も一定数いらっしゃるので、どんなユーザーでもモチベーションを維持しながら学習できるインターフェースの改善は今後の重要な課題として認識しています。

ーーー 具体的な導入事例があれば教えてください

朴氏:

詳細は当社ホームページに掲載していますが、例えば、建設・製造業を中心に技能実習・特定技能事業を展開するオアシス協同組合では、「外国人雇用管理主任者」資格を組織的に導入し、受け入れ企業と外国人材の双方を支援する体制を構築しています。同組合の倉益代表理事によると、導入のきっかけは「ある社員が自主的に資格を取得し、学んだ内容が組合の業務に活かせると情報提供してくれたこと」でした。

実際に受講した職員からは「自身の知識確認ができた」「労働法に関する知識が学べた」といった声が上がっており、他の監理団体との差別化にもつながっています。同組合には現在、フィリピン5名、インドネシア7名など各母国語人材が在籍し、きめ細やかなフォローを提供しています。

一方、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)では、「高度外国人材活躍推進コーディネーター」の専門性担保のため、全12名のコーディネーターが同資格を取得。「外国人材活躍支援パッケージ」により、海外進出を考える企業への採用支援から定着支援まで一連のサポートを提供し、資格取得により「コーディネーター自身の知識の棚卸ができる」「企業が直面する様々な課題解決のヒントが見つかる」といったお声をいただいています。

ーーー 今後の事業展望についてお聞かせください

朴氏:

当社が描く3つの領域(受け入れ側・外国人側・チームビルディング)において、それぞれに必要な知識や研修を段階的、分野別に整理した教育コンテンツのスキルマップを提供したいと考えています。

お客様が「この分野でここを強化したい」「ここが必要だ」と思ったときに、当社のサイトに来れば必要なものが見つかるような、包括的な教育プラットフォームの構築を目指しています。

編集後記

今回のインタビューで印象的だったのは、東京リーガルマインドが単に研修を提供するのではなく、外国人雇用に関わる全ての関係者を包括的にサポートしようとする姿勢でした。受け入れ企業、外国人材、支援機関という3つの関係者それぞれに適したサービスを用意し、さらにチームとしての協働を促進する研修まで手がけているのは、45年間で培った専門家ネットワークがあるからこそ実現できる取り組みです。

特に興味深かったのは、朴氏ご自身が外国人として日本で就職活動を経験し、情報不足による困難を体験されたことが事業のきっかけになっている点です。当事者の視点を持ちながら、制度面から実務面まで幅広くサポートできる体制は、今後ますます重要性を増していくでしょう。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。2021年に株式会社ジンザイベースを創業。海外の送り出し機関を介さず、直接マッチングすることで大幅にコストを抑えた特定技能人材の紹介を実現。このシステムで日本国内外に住む外国人材と日本の企業をつなぎ、累計3000名以上のベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール等の人材採用に携わり、顧客企業の人手不足解決に貢献している。著書「日本人が知らない外国人労働者のひみつ(2024/12/10 白夜書房 )」
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