【外国人労働者の退職手続きの基本】必要な手続きをまとめてご紹介

この記事は外国人労働者の退職手続きの基本を押さえたい方に向けて、外国人労働者が退職する際に必要な手続きについてまとめてご紹介していきます。日本人と同様の手続きだけではなく、外国人特有の手続きもありますので、外国人労働者の雇用管理を担当されている方は、是非一度ご確認ください。
外国人が退職する際に、特別な手続きってあるの?
結論、外国人特有の手続きは存在します。
ただ、基本的には、日本人が退職する場合と同じ手続きが必要となりますが、一部外国人労働者特有に見られる手続きが存在しているという認識をお持ちいただければと思います。
また、外国人労働者本人が実施すべき手続きもあり、この手続きを実施しないと「転職できない」なんてケースも発生しかねません。
ここからは、外国人労働者が退職する際に対応すべき事について、大まかな全体像を押さえるため、それぞれのカテゴリーに分けて、どのような手続きがあるのか詳しく見ていきましょう。
なお、外国人労働者の転職時の手続き(主に在留資格系の申請)については、「【外国人が転職する際の手続き】ケース別にわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
外国人受け入れ企業が実施するべき退職手続きは?
まずは、退職する外国人の受け入れ企業側が実施するべき退職手続きについて確認していきましょう。「日本人と同様の手続き」と「外国人特有の手続き」にさらにカテゴリ分けした上で解説していきます。
日本人と同様の退職手続き
最初に、日本人と同様の手続きについてみていきましょう。
源泉徴収票の交付
まず必要な手続きとして挙げられるのは源泉徴収票の交付です。
源泉徴収票とは「1年間に企業からどれくらいの給料が支払われ、所得税をいくら納めたか」が記載された書類のことを指します。
外国人労働者が退職した場合、確定申告や転職先での年末調整に必要となるため、源泉徴収票を交付しなければなりません。
源泉徴収票は所得税法によって事業主に交付が義務付けられています。
そのため仮に本人から請求されなくとも、退職後1か月以内に交付することが求められるのです。
もしこの法令に違反して交付しなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金が科されることになります。
健康保険証の回収
次に挙げられる手続きは健康保険証の回収です。
外国人労働者であっても条件を満たしている場合、健康保険に加入する必要があります。
そのため退職の際は健康保険を含めた社会保険から脱退する形になります。
つまり、退職日の翌日からは健康保険は利用できなくなるわけです。
そこで健康保険を間違えて利用してしまわないように、健康保険証を退職日当日までに回収する必要があります。
回収した健康保険証は、退職後5日以内に健康保険組合に送付しましょう。
もし万が一外国人労働者が健康保険証を紛失していた場合は、被保険者証回収不能・減失届を提出することになります。
社会保険・労働保険の資格喪失の手続き
また健康保険証の回収だけでなく、社会保険や労働保険に関する資格喪失手続きも行う必要があります。
まず、社会保険については外国人労働者が退職してから5日以内に、健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を、事業所を管轄している年金事務所もしくは、健康保険組合まで提出しなければなりません。
このタイミングで回収した健康保険証(紛失している場合は被保険者証回収不能・減失届)を添付して提出することになります。
労働保険に関しては、退職後10日以内に事業所を管轄するハローワークまで雇用保険被保険者資格喪失届を提出しましょう。
離職票の交付を希望している場合は、離職証明書も併せて提出することを忘れないようにしてください。退職後に失業手当を申請する際に必要な書類となるため、外国人労働者からの請求に応じて、交付のための手続きを実施しなければなりません。
外国人労働者から離職票の交付請求があった場合、企業側は管轄のハローワークまで離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出する形になり、その後離職票が交付されることになります。
外国人特有の退職手続き
続いて外国人労働者特有の退職手続きについて見ていきましょう。
退職証明書の交付
まず挙げられるのは退職証明書の交付です。
外国人労働者は退職後に転職する場合、出入国在留管理庁に対して
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 就労資格証明書交付申請
といった在留資格に関する様々な手続きを実施しなければなりません。
これらの手続きを実施するための必要書類として、退職証明書が求められるのです。
そのため外国人労働者が退職後帰国する場合を除いて、忘れずに交付するようにしましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出(在留カード番号記載様式の申請)
次に挙げられるのは雇用保険被保険者資格喪失届の提出です。
雇用保険被保険者資格喪失届は日本人と同様に必要な手続きのところで登場しましたが、また別の意味合いで必要になります。
外国人労働者を雇用する企業は、外国人労働者が入社・退職した際にハローワークに対して、外国人雇用状況届出の提出が義務付けられており、提出を怠った場合は30万円以下の罰金が科されるのです。
この退職時における外国人雇用状況届出は、雇用保険被保険者資格喪失届の提出で兼ねることができます。
そのため雇用保険被保険者資格喪失届は必ず提出しましょう。
一点注意点として、在留カード番号記載様式にて提出する必要がある点も押さえておきましょう。
2020年3月以降に雇用した外国人労働者については、外国人雇用状況届出を提出する際に在留カード番号の記載が必要となります。
そのため、雇用保険被保険者資格喪失届に在留資格や在留期間、国籍・地域、在留カード番号などを記載して届けることが求められるのです。退職する外国人の在留カードの写しはとっておくようにしましょう。
在留カード番号などを記載した雇用保険被保険者資格喪失届についても、退職後10日以内に提出する必要がある点は変わりないので、忘れずに対応しましょう。
在留カードってそもそも何?と言う方については、「在留カードとは?確認すべきポイントや偽造在留カードとの違いを解説!」の記事もあわせてご確認ください。
退職する外国人本人が実施する手続きは?
次に外国人労働者本人が対応すべき手続きについて確認していきましょう。
所属(契約)機関に関する届出
外国人労働者本人が対応すべき手続きとして挙げられるのは、所属機関に関する届出です。
外国人労働者は退職時や転職などの際に、管轄の地方出入国在留管理官署まで所属機関に関する届出を提出しなければなりません。
とはいえ外国人労働者側がこの手続きを認識していなかったり、忘れてしまったりするケースも多いため、企業側から本手続きが必要である旨やどのように実施すればいいのかを説明してあげると安心でしょう。
所属機関に関する届出はオンラインでも実施が可能となっています。届出書類等の詳細はこちらの出入国在留管理庁HPをご覧ください。
在留資格の更新・変更
続いて在留資格の期間更新や変更のための手続きを行いましょう。
転職予定にも関わらず残りの在留期間が短くなっている場合、在留期間更新許可申請を実施する必要があります。
加えて、転職後の職種が、現在外国人労働者が保有している在留資格で許可された範囲外の職種である場合、在留資格変更許可申請をしなければなりません。
注意点として、特定技能や特定活動46号など、職種の有無に関わらず、転職時に必ず在留資格変更許可申請をしなければならない在留資格も存在します。
これらの申請については、基本的に外国人労働者本人が対応すべきものではありますが、雇用する企業が代理人として申請することもでき、多くの場合企業側も手伝うことになるでしょう。
在留資格についての基本的な事項に関しては、「【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説」をあわせてご覧ください。
また転職を伴う在留期間更新を実施する場合、事前に就労資格証明書交付申請をしておく方がスムーズに手続きを進めることができます。詳細につきましては、「【就労資格証明書とは】メリットや交付申請の方法を簡単解説」をぜひあわせてご覧ください。
失業給付金の申請
こちらは、全ての方が対象になるわけではありません。あくまで、失業給付金の申請が必要な外国人の方が実施する手続きとなってきます。
先にも出てきた雇用保険は、外国人も強制加入であるため、もちろん、失業給付の支給対象となってきます。ハローワークにて失業給付金の申請をすることで、給付金を受け取ることができるでしょう。
ただし、雇用保険の加入期間が12か月以上あることが条件となっているため、加入期間が12か月未満の場合は申請できない点は注意しましょう。
母国に帰国する場合の手続き
こちらに記載の内容は、外国人労働者が退職後に母国に帰国する場合に該当してきます。
脱退一時金の手続き
まず、国民年金や厚生年金の脱退一時金を請求することができます。
脱退一時金とは日本国籍を持っていない外国人労働者が、老齢年金の受給資格となっている10年を満たさずに帰国する場合に、既に納めている年金保険料の一部を返金支給してもらう制度です。
もし一時的に帰国した後、再び来日して働く予定がある場合は日本における年金受給資格を満たせる可能性があるため、脱退一時金の請求手続きはする必要がありません。
帰国した後、もう来日することがないのであれば脱退一時金の請求をしておく方がよいでしょう。
脱退一時金に関しては、「【外国人の脱退一時金とは】概要や種類、手続きの方法をわかりやすく解説」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
住民税の支払い
また、住民税についてですが、特別徴収の場合、帰国する場合は本人からの申し出がある場合は最後の給与から一括徴収することが可能です。(1〜5月に退職する場合は、申し出の有無に関わらず一括徴収を行います。)
もし、出国までの間に住民税を納めることができない場合は、納税管理人を選任し、残りの住民税の支払いを実施する必要が出てきます。詳しくは、こちらの総務省HPをご覧ください。
銀行口座の解約
忘れがちなのが、銀行口座の解約です。各行の窓口に通帳・キャッシュカード・在留カード・印鑑などを持参し、解約しておきましょう。(10年以上放置されると、預金は休眠預金になり、利用できなくなる可能性もあります。)
住民票の転出届
お住まいの市町村区で転出手続きも実施します。帰国する日の約2週間前から提出が可能になります。
同時に、マイナンバーカードやマイナンバー通知カードの返却も実施するようにしましょう。マイナンバー自体は、新しい番号が付与されることはないので、もし将来的に再度日本へ来日することが予想される場合は、マイナンバーカードが返却されますので、大切に保管しておくように伝えてあげましょう。
外国人が退職する際の注意点は?
外国人労働者の退職に伴う手続きについてお話してきたところで、最後に注意点について簡単に確認しておきましょう。
退職届の回収をする
こちらは、日本人の場合と同様ですが、自己都合退職の場合は、必ず外国人本人から退職届を回収するようにしておきましょう。
過去、自分から退職を申し出たのに、転職活動がうまくいかず、別の在留資格へ変更するために「会社都合で解雇された」と入管に申し出たりする方がいらっしゃいました。
あまりないケースではありますが、コンプライアンス的にも、退職者(日本人も同様)からは必ず退職届は回収しておいた方が良いでしょう。
退職後、3ヶ月で就労系在留資格(ビザ)が失効する可能性がある
就労系の在留資格の場合、その名の通り「就労すること」が目的の在留資格となります。
そのため、自己都合での退職後、3ヶ月以上無職の状態が続いたり、何も活動していないと判断された場合は、就労ビザが失効する可能性があります。
退職した外国人は、次の職を見つけるのに3ヶ月のリミットがあるという点は、受け入れ企業側でも把握しておきましょう。
退職後はアルバイトはできる?
現在保有する在留資格の活動範囲内であれば、アルバイトは可能になります。ただし、「技術・人文知識・国際業務」などの場合は、在留資格で認められた範囲外の業務(例えば、配達員やコンビニのレジ打ちなど)は基本的に認められませんので、注意が必要です。
こういった行為をしていると、仮に次の職場が見つかったとしても、入管から在留状況が不良と判断され、ビザ更新ができなくなってしまう可能性があります。
一方で、会社都合での解雇などを理由に退職した場合は、生計を立てるために、資格外活動が認められるケースがあります。また、転職活動を希望する場合は、在留期間が到来したとしても、「特定活動」という別のビザへ変更し、在留が認められるケースもあります。
まとめ
今回は外国人労働者の退職手続きについてお話してきましたが、いかがでしたか。
外国人労働者を雇用している場合、どこかのタイミングで退職の手続きをする必要が出てくるでしょう。
その際は是非この記事を参考にしていただければ幸いです。
また、当社は外国人材特化の紹介会社として活動しています。
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中村 大介
株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。