【事例インタビュー】現場と一丸になって受け入れる。エー・ピーホールディングスの特定技能外国人受け入れ施策とは?

【事例インタビュー】現場と一丸になって受け入れる。エー・ピーホールディングスの特定技能外国人受け入れ施策とは?

新型コロナウイルス感染症の影響で、人材獲得戦略を大きく見直す企業が増えてきている中、「塚田農場」や「四十八漁場」を運営する株式会社エー・ピーホールディングスでは、多数の特定技能外国人を受け入れています。実際に特定技能外国人を受け入れるに至った経緯や、受け入れ後の定着施策など、どういった取り組みをなさっているのか、同社上席執行役員人事本部長兼管理本部長の越川康成様に、お伺いしました。

目次

新型コロナウイルス感染症の影響で
飲食業界からどんどん人が離れてしまった

写真_エー・ピーホールディングス_越川様(正面)

ーー御社の事業概要を教えていただけますでしょうか。

当社エー・ピーホールディングスは、「塚田農場」や「四十八漁場」をはじめとする居酒屋業態を中心に国内外に約200店舗ほど運営しています。

特徴としては、「食のあるべき姿を追求する」という経営理念のもと、地鶏をはじめとした食材の生産から流通、自社の店舗での直接販売を一貫して行う6次産業モデルを構築している点です。

直接生産者様・産地と繋がることで信頼関係を築いています。生産者様と直接つながっているからこそ、本当に美味しいものを生産者様の思いを乗せて、お客様にお届けできるようになっています。

提供する料理も、日常食というよりは、「ちょっとした贅沢をしたい時」にご来店いただくことを想定しています。コロナ禍で限られた外食の機会の中、せっかくなら少しでも美味しいところで食事をしたいというニーズが増えてきていると感じています。当社は低価格路線にせず客単価も相応にしており、その分、料理・お酒にはとことんこだわり抜いています。

ーーそんな中特定技能外国人を雇用されるに至ったきっかけは何かありますか?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、飲食業界全体からどんどん人が離れていったことを契機に、「どのように人材層を厚くするのか?」という点は常に課題になっていました。

業界全体として人が離れてしまっている中、緊急事態宣言の解除等に伴い、人手不足に拍車がかかりました。このような環境変化の中、もう一度飲食をやっていきたいという人を採用することが困難でした。

一方で、技能実習を満了した方をはじめ、一定の就労経験と語学力のある外国籍の方々が、新型コロナウイルス感染症の影響で帰国できない状況の中で、都心の飲食業界で就労を希望している方が以前よりも多数いらっしゃることを知りました。

こういった背景から、特定技能外国人の採用を一つの施策として実施する決断をしました。

お客様とのコミュニケーション・調理の技術力
現場から不安の声もありました

ーー実際に受け入れるまでに何か不安なことはありませんでしたか?

外食業という職場環境上、お客様と直接コミュニケーションを取る機会が多いです。

特に当社の場合、各料理を提供する際に、生産者様のお声を届ける「提供トーク」を重視しているため、「どのくらいの日本語能力を有しているのか?」という点は特に不安を感じていました。また、提供する料理は、店内で手仕込みで調理しているため、高い調理技術もあわせて求められます。

こうした現場の実情があったため、「特定技能外国人が求める基準を満たせているか」と現場の社員からは、配属時のパフォーマンスに対して多少なりとも不安の声はありました。

ーーこうした現場からの不安の声にどのように対処されましたか?

大きくは2つの対応をしました。

まず、人事が行うオンラインでの一次面接を録画し、現場の責任者にも共有していました。実際の日本語力や経験、面接時の雰囲気などをしっかりと確認してもらい、人事部から二次面接を依頼する際に、現場も納得をして面接をしてその上で内定通知を出しています。

また、採用の際には、応募してきた人材の夢・目標を重要な軸として深掘りしていました。やっぱり、「将来は母国もしくは日本で独立して飲食店を経営したい」などといった、目的意識がしっかりしている人の方が、国籍関係なく高いパフォーマンスを発揮するのではと考えています。

意欲の高い外国人材と「育てよう」という日本人社員の相乗効果

ーー実際に受け入れてみてどうでしたか?

現場との合意形成と面接時のスクリーニングに注力しているためか、総じて評価が高いですね。ビザが早々に下りて就労を始めた社員の評価がとても高いと言う話が現場で広まり、まだビザ待ちの人材について「いつになったら配属できますか?」など、毎週会議のたびに、特定技能外国人の話が上がってくるほどです。

実際に入社してもらっている人材も、とても意識・意欲が高く、現場でも育てがいがあるみたいで、「育てよう」という意識が強い印象です。特定技能外国人と日本人社員が相互に協調しあって、いい環境が醸成できているのではと思っています。

一方で、今後は人材評価に関しても注力していこうと考えています。

例えば、業務や日本語能力の向上具合が、元留学生と元技能実習生で特徴的な傾向が出るのかどうか、という仮説検証などです。すでに就労経験の有無や出身業界によって語学力にばらつきがある点など、一定の傾向を把握でき始めているので、一つ一つのデータを元に人材育成に生かしていきたいと考えています。

ーー生活上のトラブルとかは発生していませんか?

通勤途中に財布を無くしてしまって遅刻した社員が、遅れる連絡をすぐに店舗にしなかったので、店長がとても心配して本社と支援機関さんともども大慌てしたという些細なトラブルが発生したりということはあります。

何か大きな問題が発生しているかというと、そういったことはありませんね。

ーー逆に特定技能外国人の受け入れで苦労したことは?

なんといっても、寮の手配・準備書類の多さなど、入社までの手続きに想定以上に工数がかかっていたので、大変でした。

また、特定技能の場合は入社後に関しても定められた支援業務を登録支援機関さんと協力して実施していかなければなりません。複数の登録支援機関さんとお付き合いしていると、ミスコミュニケーションが発生したり等、さらに業務が煩雑になってしまうため、募集は複数社の紹介会社さんにお願いしている一方で、支援機関さんに関しては1社に集約してお任せしています。

「特定技能外国人は単なる労働力ではない」
現場・経営層一丸となった外国人材受け入れ

写真_エー・ピーホールディングス_越川様(斜め)

ーー特定技能外国人の定着について、何か取り組みがありましたら教えていただけますか?

当社では、特定技能外国人に毎日日本語で日報をあげてもらうようにしています。この日報はシステムを活用しており、全社で共有されています。

日々上がってくる日報に対して、日本人社員がフィードバックすることでコミュニケーションが促進されるだけではなく、経営層でも現場の状況を把握できるため、より解像度高く現場の見える化ができています。

中には、上司の指導の基準がちょっと高すぎて、ついていけなくなったことでモチベーションが一時的に下がっている特定技能外国人もいましたが、こういった現場の見える化を推進しているために、すぐに把握し、配置転換して対応することができています。

ーーお話を伺うと、御社は現場と経営層の間でしっかりと外国人材受け入れの温度感をあわせられていると感じています。何か工夫されていることはありますか?

特別なことをしているわけではありませんが、経営層からのメッセージは口が酸っぱくなるくらい何度も伝えています。「特定技能外国人は単なる労働力ではない。飲食業で人生をつくれるように育てよう」と。

当社の特徴は、セントラルキッチンから届く料理をお皿に盛る仕事ではなく、鶏や魚も専門店だからこその調理技術で仕込み、調理、盛り付けを各店舗で行います。これからの仕事で身につけた調理の技術を母国に帰国した際に活かせるよう、しっかりと育ってほしいと考えています。

例えば、5年後ベトナムなどに帰国しても、現地の高価格帯の日本食料理店で料理長として遜色ない技術・経験を積んでもらいたいと思っています。

こういった思いや考えをしっかりと現場に伝えるように、常に意識しています。

幸運なことに、入社いただく特定技能外国人はみんな意欲が高く、現場の社員がその意欲に上手く応えてくれています。

単なるマニュアル仕込みではなく、本格的な料理人としての腕前を身につけて送り出せるよう、現場・経営層一丸となって、これからも目指していこうと考えています。

ーー貴重なお時間ありがとうございました!

編集後記

今回は株式会社エー・ピーホールディングス様に特定技能外国人の受け入れ事例についてお伺いしてきました。

国内外に約200店舗という大所帯の中で、ここまで現場と経営層が同じ目線で外国人材受け入れに取り組まれていること、またその取り組みに対して外国人材もしっかりと呼応している大変貴重な事例をお伺いすることができました。

エー・ピーホールディングス様のように、外国人材受け入れに成功されている企業様の事例を少しでも多くの方に見ていただき、外国人雇用に悩まれている企業様が何かヒントを得られれば幸いです。

特定技能外国人の雇用に関しては、「【特定技能】外食業で従事できる業務や試験、採用方法などを解説」で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

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中村 大介

株式会社ジンザイベースCEO。1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。