介護職の離職率が高いのは本当?現状と退職が多い職場の特徴、解決策に至るまで解説します!

介護業界において、離職率の高さは長年にわたって大きな課題として語られてきました。しかし、近年のデータを見ると意外な事実が浮かび上がります。令和6年度(2024年度)の介護職の離職率は12.4%と、過去10年間で最も低い水準を記録しているのです。

それにも関わらず、介護施設の人手不足は依然として深刻な状況が続いています。この記事では、介護職の離職率が改善している現状から、離職率が高い職場の特徴、そして従来の対策では解決できない人手不足に対する新たな解決策について詳しく解説します。

当社運営のYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」でも解説していますので、ぜひご覧ください。

介護職の離職率の現状とデータ

まず最初に、介護職の離職率について最新のデータを確認していきましょう。

令和6年度(2024年度)の離職率は12.4%で過去最低を更新

公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和6年度介護労働実態調査」によると、介護職員の離職率は12.4%を記録し、調査開始以来最も低い水準となりました。

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について(令和7年7月28日)

この数値は、介護業界が「離職率の高い業界」というイメージを払拭する画期的なデータと言えるでしょう。特に、新型コロナウイルスの影響が続く中での改善は、業界全体の努力の成果として高く評価されています。

過去10年間の離職率推移(平成25年度16.6%→令和6年度12.4%)

過去約10年間の離職率推移を振り返ると、着実な改善傾向が続いていることがわかります。

平成25年度(2013年度)には16.6%だった離職率が、令和元年度(2019年度)には15.4%、令和3年度(2021年度)には約14.3%、令和6年度(2024年度)には約12.4%と、毎年確実に改善を続けてきました。

過去10年間の離職率推移
公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」を元に作成

この約10年間で約4ポイントの改善を実現していることは、業界全体での働きやすさ向上への取り組みが着実に成果を上げていることを示しています。特に近年の改善ペースは加速しており、介護業界の魅力向上施策が効果を発揮していると考えられます。

全産業平均との比較で見る介護職の位置づけ

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和6年度の全産業平均の離職率は14.2%となっています。これと比較すると、介護職の離職率12.4%は全産業平均を下回る水準にあり、「介護職は離職率が高い」という従来のイメージとは大きく異なる状況となっています。

この逆転現象は、介護業界での処遇改善や働き方改革が他の産業よりも積極的に進められてきた結果と見ることができます。国による介護報酬の処遇改善加算や、介護現場での労働環境改善への継続的な投資が実を結んだ形と言えるでしょう。

介護職の離職率が高い職場の特徴と見分け方

離職率が全体的に改善している一方で、事業所間・施設形態別の格差は拡大傾向にあります。一部の事業所では離職率が17%を超える状況も見られ、二極化が進んでいるのが現状です。

離職率が高い事業所に共通する問題点

離職率が高い事業所の中で最も顕著なのは経営方針の不明確さです。経営理念や運営方針が曖昧で、職員に対して明確な方向性を示せていない事業所では、職員のモチベーション低下が深刻化しやすくなります。

また、管理体制の不備も大きな問題となっています。適切な人事評価制度がない、昇進・昇格の基準が不透明、管理職の管理能力不足などの問題が重なると、職員の不満が蓄積され、結果として高い離職率につながってしまいます。

常に求人を出している施設の危険信号

求人サイトを見る際の重要な判断基準として、常に求人掲載されている施設には注意が必要です。これは人の入れ替わりが激しく、定着率が低いことを示している可能性が高いからです。

特に注意すべきは、求人内容で「未経験歓迎」と「即戦力募集」といった相反する条件を同時に提示している場合や、具体的な業務内容の記載が曖昧な求人です。これらは、現場の実情と採用条件に乖離がある可能性を示唆しています。

人手不足で業務負担が過重な職場

適正な人員配置ができていない施設では、必然的に職員1人当たりの負担が増加します。1人当たりの利用者数が明らかに多すぎる施設では、残業時間の増加、有給休暇の取得困難、夜勤回数の増加、1人で複数の業務を兼務するといった問題が発生しがちです。

このような状況が常態化している職場では、職員の身体的・精神的疲労が蓄積され、結果として離職につながる悪循環が生まれてしまいます。

教育体制・フォロー体制が不十分な職場

新人職員に対する教育プログラムが整備されていない職場では、早期離職のリスクが著しく高まります。問題のある教育体制として、OJTに頼りきりで体系的な研修がない、指導担当者が固定されていない、業務マニュアルが整備されていない、質問しにくい雰囲気があるといった特徴が挙げられます。

特に介護業界では専門的な知識と技術が求められるため、適切な教育体制なしには新人職員が安心して働き続けることは困難です。

給与・待遇面で問題のある職場

同地域の相場と比較して明らかに給与水準が低い施設では、当然ながら人材の定着は困難になります。また、給与以外の待遇面でも、社会保険の加入状況が不透明、退職金制度がない、福利厚生が充実していない、昇給・賞与の実績が乏しいといった問題がある場合は、長期的な就労を考える職員にとって魅力的な職場とは言えません。

介護職の離職率が高い理由トップ5

離職率が改善しているとはいえ、依然として介護職を離職する職員は存在します。その背景にある理由を詳しく分析していきましょう。

人手不足による業務負担の増加

最も多い離職理由として挙げられるのが、人手不足に起因する業務負担の増加です。適正な人員配置ができていない施設では、1人の職員が担当する利用者数が過度に多くなり、業務量の増加、残業時間の常態化、休憩時間の確保困難、精神的・身体的疲労の蓄積といった深刻な問題が発生します。

この状況は、職員のワークライフバランスを著しく悪化させ、結果として離職を選択せざるを得ない状況を生み出してしまいます。特に子育て世代の職員にとっては、家庭との両立が困難になり、離職を検討する大きな要因となっています。

給与・待遇への不満(他産業との賃金格差)

他産業との賃金格差も依然として大きな離職要因の一つです。厚生労働省の調査によると、介護職員の平均給与は処遇改善が進んでいるものの、全産業平均と比較するとまだ格差があるのが現状です。

特に問題となるのは、同世代の他業種従事者との比較において給与の低さを実感するケースです。介護の仕事にやりがいを感じていても、生活の安定を考慮して転職を検討する職員が少なくありません。

職場の人間関係の問題

職場内の人間関係は、介護職の離職要因として常に上位に挙げられる重要な要素です。問題となりやすい人間関係として、上司・先輩からのパワハラやいじめ、同僚間でのいざこざ、利用者・家族との関係性の悪化、チームワークの欠如などが挙げられます。

介護の現場では、利用者の生命に関わる責任の重い業務を行うため、職員同士の連携が極めて重要です。人間関係に問題があると、業務の質にも影響を与え、結果として職員のストレスが増大し、離職につながってしまいます。

身体的・精神的負担の重さ

介護職は本質的に身体的・精神的負担が大きい職種です。身体的負担としては、腰痛などの職業性疾患、夜勤による生活リズムの乱れ、感染症リスクへの不安などが挙げられます。

一方、精神的負担としては、利用者の介護度上昇や死別への対応、家族からの苦情やクレーム対応、責任の重さによるプレッシャーなどがあります。これらの負担は、職員の心身の健康を脅かし、長期的な就労を困難にする要因となっています。

キャリアアップの機会不足

将来への展望が見えないことも重要な離職理由の一つです。明確なキャリアパスが示されていない職場では、職員のモチベーション維持が極めて困難になります。昇進・昇格の機会が限定的、資格取得支援制度がない、専門性を活かせる環境がないといった状況では、向上心のある職員ほど他の職場や業界への転職を検討するようになります。

離職率低下を実現した具体的な施策

令和6年介護労働実態調査によると、職場定着に最も効果があった取り組みという項目がありますので、そちらのデータを参照しながらみていきましょう。

「令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について(令和7年7月28日)」
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について(令和7年7月28日)

働きやすいシフト制度と休暇取得促進

最も多くの事業所で実施され、職場定着に34.4%の高い効果を示しているのが、柔軟な勤務体制の構築です。

従来の固定シフトから希望制シフトへの変更により、働く時間の調整がしやすくなることで、職場満足度の向上に寄与します。特に子育て世代の職員や親族の介護を抱える職員にとって、プライベートでの時間調整がしやすい環境は非常に魅力的な要素となります。

また、有給休暇取得率向上への取り組みも重要です。連続休暇制度の導入や年間有給取得計画の策定により、職員のワークライフバランスが向上し、心身の健康維持と長期定着の両立が可能になります。

人間関係改善と職場コミュニケーションの活性化

調査では47.2%の職員が「人間関係が良好な職場づくり」を仕事継続に最も役立つ取り組みとして挙げています。

人間関係の改善に取り組む事業所では、定期的な職員面談の実施、チームビルディング研修の開催、職員同士の相互理解を深める機会の創出などが効果を上げることが可能になります。

特に重要なのは、業務上の課題だけでなく、職員の悩みや提案を共有できる場の設置です。月1回の職員ミーティングや定期的な意見交換会の開催、1on1の実施等により、職場の風通しが改善し、職員間のコミュニケーションが活性化します。「職場内での仕事上のコミュニケーションの円滑化」は68.9%の事業所で実施されており、職員間の連携強化と離職防止の両方に効果をもたらしています。

賃金水準向上と処遇改善の取り組み

「賃金水準の向上」は採用に36.0%、職場定着に30.9%の効果を示している重要な施策です。単純な基本給の引き上げだけでなく、資格手当の充実、夜勤手当の増額、勤続年数に応じた昇給制度の明確化などが効果的とされています。

特に注目すべきは、託児所設置や保育費用支援などの福利厚生充実が採用に20.2%の効果を示していることです。職員向け託児所の設置や保育費用の補助制度は、子育て世代の職員にとって大きな魅力となり、育児休業からの復職率向上や新規採用時の応募者増加につながります。

離職率改善も人手不足が深刻化する現実

離職率が過去最低を更新した一方で、日本の少子高齢化は加速度的に進行しており、介護業界の人手不足は深刻な社会問題となっています。

実際に令和6年度の「介護労働実態調査」を見てみると、「従業員の過不足状況」に関しては、「大いに不足」(10.0%)、「不足」(21.2%)、「やや不足」(34.0%)の合計が65%を超えており、前年よりも0.5ポイント上昇しています。

急速に進む高齢化と働き手の減少

2020年時点で65歳以上の高齢者は全人口の28.6%を占めていましたが、2070年には38.7%まで上昇すると推計されています。

この人口構造の変化は、「働き手の減少」と「介護需要の急激な増加」という二重の課題をもたらしています。生産年齢人口が減少する一方で、介護を必要とする高齢者数は急激に増加するため、介護業界では構造的な人手不足が避けられない状況となっています。

介護職員の必要数と現実のギャップ

厚生労働省の推計によると、2026年度には約25万人、2040年度までには約57万人もの介護職員を新たに確保しなければならないとの推計になっています。

現在の介護職員数の増加ペースでは、将来的な需要に対応することは不可能に近く、抜本的な対策が求められている状況です。

高止まりする有効求人倍率が示す深刻な現実

介護分野における有効求人倍率を見ると、全業種平均と比較した際に、10年近く高い水準で推移し続けていることが明確に示されています。これは、介護業界での求人数に対して求職者数が圧倒的に不足していることを意味しており、人手不足の深刻さを端的に表している指標と言えるでしょう。

この状況は、離職率の改善だけでは解決できない構造的な問題であり、従来とは異なる新しいアプローチが不可欠であることを示しています。

介護業界の人手不足に関しては「介護業界の人手不足はやばい?現状のデータや原因、具体的な対策を紹介」の記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。

外国人材活用による人手不足の解消がポイント

従来の人材確保策では限界がある中、外国人材の活用が新たな解決策として大きな注目を集めています。

外国人採用のコスト

特定技能「介護」制度による人材確保

2019年4月に創設された特定技能制度は、介護現場の人手不足解決のための重要な制度です。介護分野での就労が可能な在留資格として、最長5年間の就労が可能となっています。

5年目以降に関しては、介護福祉士国家試験に合格することで、在留資格「介護」という別のビザに切り替えが可能になり、日本に永続的に在留する道が開かれます。

受け入れ対象となる業務は幅広く、身体介護(入浴、食事、排泄介助など)、その他の業務(レクリエーション、機能訓練の補助など)、付随業務(清掃、洗濯、調理など)が含まれており、2025年4月には訪問系介護サービスにおいても従事可能となりました。

日本語能力試験(N4相当以上)と介護業界に特化した技能評価試験をクリアした人材が対象となっているため、一定の知識を有した人材が採用できる点が特色です。

介護業界における特定技能制度の活用については「特定技能「介護」とは?受け入れ条件から訪問介護の対応可否、試験及び5年後どうするかまで徹底解説」でも詳しく解説しています。

特定技能外国人の採用ステップと注意点

特定技能外国人を採用する際には、適切なステップを踏むことが重要です。

採用プロセスでは、候補者の日本語能力や介護技能レベルの確認、面接の実施、在留資格申請手続きといった段階を経ることになります。特に重要なのは、候補者の技能レベルと施設のニーズが適切にマッチしているかの見極めです。

注意点として、採用してすぐ入社・入職できるわけではない点です。特定技能外国人は、入社前に必ず出入国在留管理庁へ在留資格申請(ビザ申請)を行う必要があり、その審査処理期間として2〜6ヶ月程度時間を要するケースが大半です。

そのため、欠員が出てから採用に動くのではなく、将来の人員計画に基づいて、逆算かつ早期に採用活動に動く必要がある点は注意が必要でしょう。

外国人活用のメリット

外国人材の受け入れは、単なる人手不足の解消にとどまらず、職場環境の改善にも大きく寄与します。異文化理解による視野の拡大、コミュニケーション能力の向上、職場の活性化と刺激、グローバルな視点の導入など、多様性がもたらすメリットは計り知れません。

また、外国人材は日本の介護技術を学ぶ意欲が高く、その勤勉な姿勢が日本人職員にも良い影響を与えることが多く報告されています。異なる文化背景を持つ職員同士が協働することで、従来の固定観念にとらわれない新しいアイデアや改善提案が生まれやすくなります。

さらに、外国人材の活用により24時間体制の維持が容易になり、夜勤体制の安定化も期待できます。これにより、日本人職員の負担軽減と働きやすい環境の実現につながり、結果として全体的な離職率の改善にも寄与する可能性があります。

実際の介護施設での受け入れ事例として「日本人のみの採用では、将来的な人材確保に不安を感じた|社会福祉法人同塵会様」もぜひ併せてご覧ください。

まとめ:離職率改善と人手不足解決の両立に向けて

介護職の離職率が12.4%と過去最低を記録したことは、業界全体の取り組みが実を結んだ証拠と言えるでしょう。しかし、採用率の低下により人手不足は依然として深刻な課題となっており、従来の人材確保策だけでは限界があることも明らかになっています。

このような状況下において、外国人材の活用は持続可能な介護施設運営を実現するための有効な解決策として位置づけられます。適切な受け入れ体制を整備し、日本人職員との協働環境を構築することで、離職率の改善と人手不足の解決を両立することが可能になります。

介護業界の未来を考える上で、多様な人材が活躍できる職場環境の整備は不可欠です。外国人材という新たな選択肢を積極的に検討し、持続可能な介護サービスの提供体制を構築していくことが、今まさに求められていると言えるでしょう。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。2021年に株式会社ジンザイベースを創業。海外の送り出し機関を介さず、直接マッチングすることで大幅にコストを抑えた特定技能人材の紹介を実現。このシステムで日本国内外に住む外国人材と日本の企業をつなぎ、累計3000名以上のベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール等の人材採用に携わり、顧客企業の人手不足解決に貢献している。著書「日本人が知らない外国人労働者のひみつ(2024/12/10 白夜書房 )」
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