インドは、多様な文化と歴史を持つ南アジアの大国です。とくにIT分野において、世界的にも優秀なエンジニアが多いのが特徴です。
こうした背景から、近年では日本企業の人材不足を補う解決策として、インド人エンジニアが注目を集めています。
本記事では、インド人エンジニアが優秀とされる理由や採用手順、注意点を解説します。
なお、YouTube動画では、外国人エンジニアの給与水準も紹介しています。あわせてご覧ください。
インド人ITエンジニアが優秀といわれる背景
インド人ITエンジニアが優秀とされる背景は、以下のとおりです。
- IT教育水準が高い
- IT系学部の大学卒業者数が多い
- 文化的精神「ジュガード」の浸透
IT教育水準が高い
インドは、IT教育が盛んな国です。プログラミングを学べる幼稚園や、小学校から本格的なIT教育が実施されるなど、若いうちからITを学ぶ機会が設けられています。
学習するプログラミング言語もC++・python・Javaなど本格的で、プログラミング教育が「コンピューターサイエンス」という必修科目にもなっています。
日本でも2020年より小学校で必修化されましたが、英語力が必要な観点から独立科目とはせず、授業に付随した学習に留まるケースがほとんどです。
また、入試倍率世界一の理系大学があることも、インドのIT教育水準を押し上げる要因といえるでしょう。
参考:NHK出版デジタルマガジン|インド躍進の背景には「独自の教育」があった
IT系学部の大学卒業者数が多い
インドはIT分野専攻の卒業者数が、世界的にも圧倒的に多いです。
ヒューマンリソシア株式会社が2020年度に実施した調査によると、世界全体のIT卒業者数151.2万人のうち、インドは55万人と第1位で全体の35%を占めています。これは、第2位アメリカ14.8万人・第3位ロシア9.3万人を大きく上回る数です。
また、AIやビッグデータ解析などで重要となる、STEM関連分野の卒業者数もインドが第1位です。こうした背景から、優秀なIT人材が世界的に多いといえるでしょう。
参考:ヒューマンリソシア株式会社|世界の大学等におけるIT教育について独自調査
文化的精神「ジュガード」の浸透
インド人ITエンジニアが優秀である背景に、文化的精神「ジュガード(Jugaad)」の浸透が考えられます。
ジュガードとは、限られた資源のなかでアイデアを働かせ、新しい解決策を想像する考え方です。具体的には以下のとおりです。
- 逆境を利用する
- 少ないものでより多くを実現する
- 柔軟に考え、迅速に行動する
- シンプルに目的を果たす
- 自分の直観に従う
ジュガードの考えは、Appleなどの有名企業にも取り入れられており、世界のビジネスパーソンからも注目されています。
インド人ITエンジニアの特徴

ここからは、インド人ITエンジニアの具体的な特徴について解説します。
- キャリアアップ意識が強い
- 問題解決能力に長ける
- 自己PR能力に優れる
- PDCAサイクルが早い
- 英語が堪能
キャリアアップ意識が高い
成果を重視するインド人ITエンジニアは、自己のスキル向上や昇進の機会を積極的に求めます。そのため、現職での成長が見込めなければ、早期に転職することも珍しくありません。
明確な評価基準やキャリアパスを企業は提示し、インド人エンジニアが自身の成長を実感できる環境にすることが重要です。
問題解決能力に長ける
ジュガードの精神が浸透するインド人エンジニアは、問題解決能力に長けています。困難な状況でも打開策を模索し、迅速に行動に移します。
こうした問題に立ち向かい、逆境を跳ね除ける行動力は、日本人にも学ぶ部分が多くあるといえるでしょう。
自己PR能力に優れる
激しいインドの競争社会では、自分の考えや意見を主張する能力が求められます。そのためインド人ITエンジニアは、自己PR能力に長ける傾向です。
会議での積極的な発言で思わぬアイデアが生まれるなど、既存社員により良い刺激をもたらすでしょう。
ビジネスの意思決定が早い
インドのIT企業は意思決定が早く、プロダクトを市場へリリースすることを優先します。そのため、失敗をおそれず行動する文化が根付いており、PDCAサイクルが非常に早い傾向です。
意思決定に時間のかかる日本企業にとって、こうしたインド人のチャレンジ精神は、プロジェクトの推進力を高める人材となるでしょう。
英語が堪能
多言語国家であるインドでは、英語を含む複数の言語に堪能な人材が豊富です。多言語を話せる人材の存在は、国際的なプロジェクトや複数言語を要する業務にも柔軟に対応できます。
一方で、日本語能力はあまり高くない場合がある点に注意しましょう。インド人エンジニアを採用する際は、日本語能力も確認しておくと安心です。
インド人エンジニア採用の注意点
インド人エンジニアを採用する際の注意点は、以下のとおりです。
- 日本人採用よりもコストがかかる
- インド国内の給与・待遇を考慮する
- 時間への意識が日本人と異なる
なお、外国人エンジニアの採用については「外国人エンジニアを採用するメリットは?ビザの手続きや注意点まで徹底解説!」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
日本人採用よりもコストがかかる
インド人エンジニアの採用は、日本人採用よりもコストがかかる点に注意しましょう。たとえば、在留資格の取得手続きや、採用後の生活面でのサポートです。
在留資格の確認やビザ申請は手続きが煩雑で、時間と労力を要します。場合によっては、発行されるまで数ヶ月かかることもあります。
こうした負担の軽減は、採用における手続きをサポートしてもらえる人材紹介会社やエージェントの活用が有効です。
インド国内の給与・待遇を考慮する
インドのエンジニアの給与水準は、経験やスキルによって大きく異なります。
2016年の経済産業省のデータによれば、インドのIT人材の平均年収は約533万円で、中央値は約152万円です。とくにインドのIT都市部では、エンジニアの給与がさらに高騰の傾向です。
インド人エンジニアを採用する際は、現地の給与水準や待遇を事前に調査し、適切なオファーを提示しましょう。
外国人エンジニアの給与については「【外国人エンジニアの給料】各種データや設定時のポイントなどを解説」でも解説していますので、ぜひご覧ください。
時間への意識が日本人と異なる
インド人は、日本人と時間に対する意識が異なります。たとえば、約束の時間に遅れることに、インド人は寛容な傾向です。ビジネスの面でも、日本人ほど時間にシビアではありません。
インド人エンジニアを採用する際は、プロジェクトの納期やスケジュール管理など、仕事の認識を細かくすりあわせましょう。明確な期限設定や都度進捗の確認を行うことで、トラブルを防止できます。

インド人エンジニア採用のポイント

インド人エンジニアを採用する際のポイントを解説します。長期的に活躍してもらうためにも、以下をおさえておきましょう。
- 異なる宗教・文化・価値観に配慮する
- 契約内容や指示を明確に示す
- 社内の受け入れ体制を構築する
異なる宗教・文化・価値観に配慮する
インドは多宗教・多文化で、ヒンドゥー教やイスラム教などの多様な宗教が共存する国です。特定の曜日や時間帯に祈りをささげたり、食事の制限があるなど、日本の生活習慣や価値観と大きく異なります。
企業側はこうした宗教や文化を尊重しながら、柔軟な勤務体制を構築しましょう。こうした配慮によって、インド人エンジニアも安心して働けます。
契約内容や指示を明確に示す
インド人エンジニアと円滑に業務を進めるためには、業務内容や指示を明確に伝えることも大切です。
インドの文化では、曖昧な指示や不明確な表現は理解されにくく、具体的な指示が求められます。業務の目的・期限などを具体的に伝えることで、認識のズレを防止できます。
社内の受け入れ体制を構築する
インド人エンジニアの採用にあたって、社内の受け入れ体制を構築することも重要です。たとえば、相談や支援をできる窓口の設置や、定期的な社内交流を設けるなどです。
業務と生活の両面でサポートができれば、インド人エンジニア本来のパフォーマンスが発揮され、長期的な活躍も期待できるでしょう。
インド人エンジニアの採用手順
インド人エンジニアの採用プロセスを解説します。適切な手順を踏み、円滑に採用を進めましょう。
- 業務内容と在留資格を確認する
- 募集をスタートする
- 選考し内定を出す
- 採用準備を行う
- 就労ビザの申請をする
- 雇用を開始する
1.業務内容と在留資格を確認する
まずは、従事する業務内容と必要な在留資格を明確にします。外国人が日本で働く場合は、在留資格と業務内容を一致させる必要があるためです。
日本でエンジニアとして働く場合は、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の取得が一般的で、あわせて学歴や実務歴にも一定の要件が必要です。あらかじめ業務内容と取得予定の在留資格を確認しましょう。
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2.募集をスタートする
つぎに、採用募集を開始します。インド人エンジニアの採用には、海外の求人サイトや専門の人材紹介エージェントを活用する方法もあります。募集要項には、業務内容・必要なスキル・給与・勤務地などを明記しましょう。
また、募集要項を決める際には、「同一労働・同一賃金」への配慮が不可欠です。これは、雇用形態にかかわらず、同じ業務内容なら同じ賃金を支払うべきとする法律で、現在は義務化されています。外国人と日本人で待遇差をつけないように注意しましょう。
3.選考し内定を出す
つづいて、応募者からの書類選考や面接を通じて、適切な人材を選定します。選考時は、技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力や日本への適応力も確認しましょう。
内定を出した後は、雇用条件明示書を提示し、給与・勤務時間・福利厚生などを詳細に伝えます。契約内容を伝える際は、齟齬がないように母国語で説明する機会を設けるなども有効です。
4.採用準備を行う
採用者の内定承諾後、採用に向けた具体的な準備を進めます。雇用条件明示書や雇用契約書の締結後は、在留資格認定証明書の申請に必要な書類も準備しましょう。
在留資格認定証明書に必要な書類は、会社の登記事項証明書・直近の決算書・雇用契約書・候補者の卒業証明書などが含まれます。これらの書類を用意しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
5.就労ビザの申請をする
必要書類が揃ったら、在留資格認定証明書の交付申請、就労ビザの申請と順番に行います。
在留資格認定証明書は、受け入れ企業が日本の出入国在留管理局に対して行うものです。審査期間は通常1〜3ヶ月程度かかるため、スケジュールには余裕を持っておきましょう。
在留資格認定証明書の交付後、候補者に送付します。ビザ申請は現地の日本大使館または領事館で候補者本人で行います。ビザが発給され次第、雇用開始が可能です。
6.雇用を開始する
候補者が来日し入国手続きが完了したら、雇用を開始します。
はじめて日本で働く外国人は、生活面や文化の違いから不安を抱えることも多いです。企業側は生活の支援や、日本のビジネスマナーの研修など、サポートできる体制にしましょう。
解決に向けた支援を行えれば、長期的かつ満足度の高い雇用関係を継続できるでしょう。
インド人エンジニアの採用方法

インド人エンジニアの採用方法は、大きく3つあります。自社に適切な方法を選び、採用活動を効率的に進めましょう。
- 人材紹介サービス
- Web求人
- リファラル採用
人材紹介サービス
外国人エンジニアの採用に特化した人材紹介サービスでは、求めるスキルや経験を持つインド人エンジニアを効率的に探すことが可能です。
サービスを利用すれば、候補者のスキルや経歴を事前にサービス会社側が審査し、適切な人材を紹介してもらえます。こうした支援により、企業は採用の手間も軽減可能です。
また、人材紹介会社によってはビザ申請や生活サポートなど、採用後の手続きやフォローの支援があります。
Web求人
オンラインの求人サイトを利用すれば、広範な求職者にアプローチできます。外国人向けの求人サイトや技術職に特化したサイトから、求める人材からの応募を期待できます。
自社にあう求人サイトで応募を募り、並行して評価基準を設けながら、スキルや適性を見極めましょう。
リファラル採用
リファラル採用とは、既存の社員やビジネスパートナーからの紹介を通じて、信頼できるインド人エンジニアを採用する方法です。紹介者が候補者のスキルや人柄を把握しているため、ミスマッチのリスクが低減できます。
また、リファラル採用は、コスト削減や、選考プロセスの迅速化にも寄与します。ただし、紹介者のネットワークに依存する採用方法なので、常に適切な人材が見つかるとは限らない点に注意しましょう。
インド人エンジニアの採用で優秀なIT人材を確保しよう
インド人エンジニアは、高い技術力と語学力を持ち、世界中で評価されています。日本のIT人材の不足を補う存在としても、今後も大いに期待される存在です。
採用する際は、文化や習慣の違いに配慮することも大切です。明確な役割や契約を提示し、長期的にパフォーマンスを発揮できる環境をつくりましょう。
