外国人雇用の必要書類と手続き|入社前と後にわけて解説

外国人雇用は、在留資格の確認から就労ビザの取得など、手続きも煩雑です。日本人採用に比べて必要書類が多いことから、雇用に踏みとどまる企業もあるでしょう。

本記事では、外国人雇用における必要書類や手続きをフェーズごとに解説します。

なお、YouTube動画では、外国人採用で必須となる在留資格について解説しています。あわせてご覧ください。

外国人の雇用手続き前に確認しておくこと

雇用手続き_1

外国人の雇用手続きをおこなう前に、以下の項目を確認しておきましょう。

  • 就労が認められる在留資格か
  • 在留カードに偽装がないか
  • 就労ビザ取得が可能か

就労が認められる在留資格か

まずは、就労が認められる在留資格であるか確認します。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などが代表的です。

一方で、就業不可の在留資格は、「留学」や「家族滞在」の場合です。これら資格は、原則フルタイム就労も認められていません。

確認方法は、在留カード表面の「就労制限の有無」欄と、裏面の「許可」欄からチェックできます。就業制限がないかや、雇用後に従事する予定業務と適合するかを確認しましょう。

雇用手続き_在留カード
参考:出入国在留管理庁|在留カードとは?

在留カードに偽装がないか

在留カードの偽造が巧妙化し、偽装による不正就労も一定数あります。在留カード表面の字体・ホログラム加工などを確認しましょう。

同時に、出入国在留管理庁より無料配布される「在留カード等読取アプリケーション」の併用もおすすめです。ICチップ情報を確認でき、偽造対策できます。

万が一、偽造カードと見抜けず雇用してしまった場合は、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。慎重に確認しましょう。

参考:出入国在留管理庁|在留カード等読取アプリケーション サポートページ

就労ビザ取得が可能か

外国人を新たに雇用する場合は、就労ビザが取得できるか確認する必要があります。採用予定者の学歴や経歴と業務内容が、在留資格の要件に満たすかチェックしましょう。

たとえば、学歴であれば卒業大学や専門学校での専攻と、従事予定業務と関連付けされている必要があります。

また、学歴を有しない場合は、従事予定職種の実務歴が10年以上あれば条件をクリアできます。

これら条件をクリアしていても、ビザ取得には1〜3ヶ月程度の審査期間が必要です。採用スケジュールに余裕をもっておきましょう。

外国人の雇用前に必要な書類と手続き

雇用手続き_労働条件通知書

外国人労働者を雇用する前に、必要な書類がいくつかあります。具体的には以下のとおりです。

  • 労働条件通知書の準備と雇用契約書の締結
  • 就労資格証明書で就労ビザの適正と期限を確認
  • 在留資格認定証明書の申請

労働条件通知書の準備と雇用契約書の締結

外国人労働者を雇用する際は、日本人と同様に、労働基準法にもとづいて労働条件通知書を提示しなければなりません。記載が必要な項目は、以下のとおりです。

  • 労働契約の期間
  • 期間の定めがある労働契約を更新する場合の基準
  • 就業場所、従事する業務の内容
  • 始業・終業時刻、休憩・休日に関する定め
  • 賃金の決定と支払い時期
  • 退職に関する事項
  • 昇給に関する事項
  • その他、定めをした場合の必須事項

参考:厚生労働省|労働基準法の基礎知識

労働条件通知書は、企業から一方的に告知されるものである一方で、雇用契約書は双方が労働条件に合意したことを示す書類です。ともに、日本語・母国語など、二言語以上で作成しましょう。

また、外国人労働者が契約内容を理解できないことも想定されます。通訳を介するなど、丁寧な説明を心がけましょう。

雇用契約書の締結は、法律で義務づけられていません。しかし、締結することでトラブルを防止できます。

就労資格証明書で就労ビザの適正と期限を確認

就労資格証明書は、特定業務に従事できることを証明する書類です。外国人が日本で就労するには、従事する職種と在留資格が合致しなければなりません。

パスポートや在留カードの確認だけでなく、就労資格証明書の取得をおこないましょう。就労資格証明書を取得しておくことで、在留資格の更新審査がスムーズになります。

在職中に在留資格を更新する場合は、あわせて就労資格証明書も取得しておきましょう。

‍「【就労資格証明書とは】メリットや交付申請の方法を簡単解説」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

在留資格認定証明書の申請

海外在住の外国人を新規雇用する場合は、在留資格認定証明書の申請が必要です。雇用予定の企業側で入国管理局へ申請をします。

証明書が発行されると、日本大使館・領事館へビザ申請をおこないます。本人で申請をおこなう必要があり、会社概要・雇用契約書・採用者の学歴・職歴証明書などの提出が必要です。

審査期間は1〜3ヶ月ほどで、発行から3ヶ月以内に雇用予定者が入国しなければ無効になります。手続きが遅れると、入社時期に遅れが生じます。計画的に進めましょう。

外国人の雇用後に必要な書類と手続き

雇用手続き_2

雇用後にも、必要な書類がいくつかあります。所定の提出先へ忘れず提出しましょう。

  • 外国人雇用状況の届出を提出
  • 中長期在留者の受け入れに関する届出の提出
  • 健康保険・厚生年金の加入
  • 在留資格の更新
  • 契約機関に関する届出・活動機関に関する届出の提出

外国人雇用状況の届出を提出

外国人雇用状況の届出は、外国人を雇用する企業が雇入れと退職時に、ハローワークに提出する義務があります。

提出対象は、在留資格「特別永住者」をのぞく、すべての外国人労働者です。雇入れ時と離職時の両方で届出が必要になります。

外国人雇用状況の届出は、「雇用保険被保険者資格取得届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」を兼ねます。雇用保険に加入しない場合は、以下を記載したうえで提出しましょう。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 国籍
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 資格外活動許可または報酬活動許可の有無
  • 在留カード番号

提出は、オンラインまたはハローワーク窓口からおこなえます。提出漏れがないように、注意しましょう。

参考:厚生労働省|外国人雇用状況の届出について

参考:厚生労働省|外国人雇用はルールを守って適正に

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中長期在留者の受け入れに関する届出の提出

雇用予定の外国人労働者が中長期在留者に該当する場合は、企業は受け入れ時に入国管理局へ、届出をおこなう必要があります。

中長期在留者とは、3ヶ月以上滞在予定の外国人が対象です。ただし、外国人雇用状況の届出をおこなっている場合は除外されます。

届出の際は、外国人労働者の氏名・国籍・生年月日・在留カード番号などを記載し、受け入れ開始(もしくは終了した日)から14日以内に提出が必要です。

適切に届出をおこなわないと、企業側にも罰則を科される場合があります。注意しましょう。

参考:出入国在留管理庁|中長期在留者の受入れに関する届出

健康保険・厚生年金の加入

外国人労働者も日本の社会保険制度の適用対象となるため、企業は健康保険と厚生年金の加入手続きをおこなう必要があります。

雇用開始日から5日以内に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を年金事務所に提出し、保険料を給与から控除し納付します。

在留資格の更新

在留資格には期限があります。企業は外国人労働者の在留資格の更新時期を把握し、更新手続きをサポートしましょう。

更新手続きは、在留期限の3ヶ月前から可能です。更新申請書・雇用契約書・給与明細などを揃え、入国管理局に提出します。

更新が遅れると、不法滞在に該当する可能性があります。更新時期を事前に確認しておきましょう。

契約機関に関する届出・活動機関に関する届出の提出

外国人労働者の入退社など、雇用状況に変更があった場合は、「契約機関に関する届出」または「活動機関に関する届出」を入国管理局へ提出しましょう。

届出は、変更から14日以内に原則本人がおこなうものです。ただし、本人の署名があれば、企業側も提出できます。

契約機関に関する届出・活動機関に関する届出、どちらを提出するかは在留資格の種類によって異なります。届出は、インターネット窓口や郵送から可能です。

届出を適切におこなわないと、在留資格の更新や変更時に影響を及ぼす可能性があります。注意しましょう。

【シーン別】外国人雇用の必要書類と手続き

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ここからは、シーンごとに必要な書類と手続きについて解説します。

  • 日本在住の転職希望者を採用する場合
  • 留学生から新卒採用をおこなう場合
  • 海外在住者を国内採用する場合
記事内cta_ホワイトペーパー誘導_外国人採用のキホン

日本在住の転職希望者を採用する場合

すでに日本で働いている外国人を雇い入れる場合は、該当者の職種が前職と同じであるかで必要な手続きと書類が変わります。在留資格と新たな業務が適合するか確認しましょう。

事前に就労資格証明書を取得しておくことで、スムーズに手続きを進められます。

前職と同じ職種で転職する場合は、在留資格に関連する手続きは不要です。ただし、在留資格が直近期限を迎える場合は、更新手続きをしましょう。

前職と異なる職種で就職をする場合は、在留資格変更許可申請をします。特定技能の場合は、別途手続きが必要です。注意しましょう。

留学生から新卒採用をおこなう場合

日本の大学や専門学校を卒業予定の外国人留学生を新卒採用する場合、在留資格の種類を「留学」から就労可能な資格へ変更する必要があります。

在留資格を変更する場合は、本人で地方出入国在留管理官署へ出向き、在留資格変更許可申請をおこないます。

申請時は、在留資格変更許可申請書とあわせて、雇用契約書・採用通知書・卒業証明書などを必要に応じて準備しましょう。

アルバイト経験のある学生は、就労時間を制限している可能性があります。就労資格を取得するまでは、採用後もフルタイムでの勤務は避けましょう。

海外在住者を国内採用する場合

海外在住の外国人を新たに採用し、日本で雇用する場合は、企業による在留資格認定証明書の取得が必要です。日本での生活支援も含めた、受け入れ体制の整備を企業側にも求められます。

審査には、1〜3ヶ月ほどかかります。入国管理局への申請は、余裕をもって進めましょう。発行後、現地の日本大使館・領事館へ本人でビザ申請をおこないます。

入国後は、在留カードの受け取り・住民登録・社会保険・税務関連の手続きを進めます。スムーズに業務開始できるようにしましょう。

こちらの「【在留資格】不許可になるケースや対処法などをまとめて解説」もぜひ併せてご覧ください!

外国人雇用に関する注意点

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外国人雇用にはいくつかの注意点があります。対応が漏れると、不法労働や早期退職のリスクが高まります。

  • 在留資格の更新を忘れずおこなう
  • 日本のルール慣習を学ぶ機会を設ける
  • 同一労働・同一賃金を厳守する

在留資格の更新を忘れずおこなう

外国人労働者の在留資格には期限があり、更新を怠ると不法滞在になることがあります。

在留資格の期限を把握し、従業員に周知しましょう。更新に必要な書類は以下です。

  • パスポート(在留資格証明書)
  • 在留カード(外国人登録証明書)
  • 申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm)
  • 住民税の課税証明書(1年間の総所得が記載されたもの)
  • 住民税の納税証明書(1年間の納税状況が記載されたもの)

在留資格は満了日の3ヶ月前から申請が可能です。万が一、更新が認められなかった場合は、業務継続に影響を及ぼします。早めに申請しましょう。

日本のルールや慣習を学ぶ機会を設ける

スムーズに就業を開始するためには、ビジネスマナーなど日本の習慣・文化を理解する機会を設けることが大切です。

たとえば、日本では健康診断の義務や、試用期間が設けられています。しかし、外国人にとっては、こうしたルールが理解しにくい場合もあるでしょう。

理解できないことによる、不安感やトラブルへ発展する可能性もあります。相互で理解が深まるように、丁寧な説明を心がけましょう。

同一労働・同一賃金を厳守する

現在、日本では同一労働・同一賃金が義務づけられています。外国人労働者にも適用され、待遇格差をおこなうことはできません。

また、賃金・福利厚生・教育機会なども、公平に提供する必要があります。外国人が不利な待遇を受けないように注意しましょう。

余裕をもって必要書類を準備しよう

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外国人雇用には、在留資格の確認・変更申請・ハローワークへの届出など、多くの手続きが必要です。書類作成に慣れていない場合は、スケジュールに余裕をもっておけると安心でしょう。

外国人の雇用手続きは、人材紹介サービスの活用もおすすめです。各種手続きのサポートを受けられます。ぜひご利用ください。

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監修者
菅原 勇人
菅原行政書士事務所代表。埼玉県熊谷市生まれ。2017年早稲田大学大学院卒業後、建材商社へ入社。主に営業として、中小中堅の建設事業者への提案に従事。就労をしながら、行政書士や宅建など法務系資格を複数取得。現在は菅原行政書士事務所の代表として、約1,000件にも及ぶ申請取次業務に携わる。行政書士(埼玉県行政書士会所属 / 第24132052)
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。2021年に株式会社ジンザイベースを創業。海外の送り出し機関を介さず、直接マッチングすることで大幅にコストを抑えた特定技能人材の紹介を実現。このシステムで日本国内外に住む外国人材と日本の企業をつなぎ、累計3000名以上のベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール等の人材採用に携わり、顧客企業の人手不足解決に貢献している。著書「日本人が知らない外国人労働者のひみつ(2024/12/10 白夜書房 )」
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