【外国人労働者の定着率を高めるには】方法やポイントを交えて解説

外国人労働者の離職率

まずは外国人労働者の離職率の現状などについて確認してみましょう。

外国人労働者の離職率の現状

外国人労働者の2020年から2021年にかけての離職率は、厚生労働省が発行している「外国人求職者の分析」に求めることができます。

以下のグラフを見てみてください。

グラフ_一般・外国人別事業主都合離職率_厚生労働省
グラフ引用:外国人求職者の分析 厚生労働省 

このグラフは事業主、つまり企業側の都合で離職した割合を示しています。

外国人労働者は青の実線で示されており、どの月も40%以上の離職率であることがわかります。

対して自己都合による退職ですが、2021年8月に株式会社ウィルテック、株式会社エイムソウル、ヒューマングローバルタレント株式会社が共同で調査した「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」にデータが出ていました。

調査結果によると、自己都合による入社1年未満の早期退職をしたのは28%となっています。

また「離職したかったが、制度や契約に縛られてできなかった」という回答が16%に上り、先の数値と合わせると、全体の44%が1年未満に離職の意志を持っていたということになるでしょう。 

日本人の離職率との比較

続いて日本人の離職率と比較してどのような違いがあるのか見ていきましょう。

先のグラフをもう一度確認してみます。

グラフ_一般・外国人別事業主都合離職率_厚生労働省
グラフ引用:外国人求職者の分析 厚生労働省

事業主都合による日本人の退職率(赤の実線)については、20〜30%前後を推移していることがわかります。

対して、自己都合による退職はどうなっているでしょうか。

グラフ_日本人の離職率推移_厚生労働省
グラフ引用:令和2年雇用動向調査結果の概況 厚生労働省 

グラフにおける上部の中央菱形マークの実線が、日本人労働者の自己都合による離職率を示しており、2020年における離職率は10.1%となっています。

この結果から外国人労働者の離職率は日本人よりも

  • 事業主都合は約10~20%高い
  • 自己都合は約20%高い

ということがわかります。

外国人労働者の主な離職理由

ここからは外国人労働者の主な離職理由について確認していきましょう。

待遇への不満

一つ目の理由として挙げられるのは、待遇への不満です。

外国人労働者が来日して働く理由には様々なものがありますが、中でも代表的な理由は「母国よりも高い水準の給与を求めている」ことでしょう。

そのため、もし給与が低いとなると、転職を考えても不思議ではありません。

外国人労働者は転職に対して日本人以上にアグレッシブであるため、待遇に不満を感じた場合、離職に直結する可能性が高いです。

周りの日本人社員も同様の待遇であればまだしも、外国人労働者と日本人社員の待遇に格差があるのであれば、不満に感じてもおかしくないでしょう。同じ業務をしていながら、待遇に格差があるならば、尚更すぐに退職してしまいます。

人間関係や企業文化に馴染めない

二つ目の理由として挙げられるのは、人間関係や企業文化に馴染めないという点です。

職場で一緒に働くことになる日本人社員との関係性、その企業文化や雰囲気は、外国人労働者が働く上で、重要なポイントになるのは言うまでもありません。

とはいえ、日本における上司部下といった序列は、外国人労働者から見たときに違和感を覚えることもあります。

他にも新卒一括採用をメインとしている日本企業では、同期入社の社員同士の繋がりが強く、外国人労働者が輪に入りづらいと感じることもあるでしょう。

このように日本の文化的背景や独自の慣行に起因して、なかなか職場に馴染むことができず、離職してしまう外国人労働者も一定数存在します。

能力やスキルを活かせない

また能力やスキルを活かせないという点も、離職に繋がりやすい理由です。

特に、特定のスキルを持った外国人の方は、自分の強みを発揮できるポジションで働くことを当たり前のように考えています。

しかし、日本企業の雇用形態においては専門性を高めるよりも、総合職として様々な業務を経験させていく傾向にあり、せっかく入社したのに専門性が活かせないポジションや役割しか任されないというケースも往々にしてあります。

こうなると自分自身の能力やスキルを活かすことができないわけですから、自分の役割や職務内容に疑問を感じ、離職していくことになってしまいます。

差別的な扱い

差別的な扱いを受けた場合も、離職に繋がりやすいです。

外国籍であることを理由に差別的な扱いをしてしまっている企業も中にはあります。

そういった企業に入社してしまえば、待遇はもちろん、任される業務も外国人労働者が満足のいくものでないケースが多いのです。

また外国人であるという理由だけで、いじめを受けたり、パワハラを受けたりすることもあり、そうなると活躍できるものも活躍できません。

このような差別的な扱いを受けた場合は、すぐに転職や離職を考えることになるでしょう。 

日本語能力を高いレベルで求められる

日本語能力を高いレベルで求められることも、離職理由として挙げられます。

外国人労働者はある程度日本語を学習してから来日するので、日常的な会話であれば支障なくできることが多いです。

とはいえビジネスシーンにおける専門用語や敬語などを用いた特殊なコミュニケーションにおいては、十分ではないこともあるでしょう。

しかしビジネスシーンにおいても正確な日本語理解を求められ、それに対応できず、精神的にしんどくなってしまう外国人労働者もいます。

高度な日本語能力を要件としている案件ならまだしも、そうではなかったにも関わらず、入社後に想定以上の日本語能力を求められた場合、転職や離職に繋がりやすいと言えるでしょう。

 外国人労働者の定着率を高めるには

それでは外国人労働者の離職を防ぎ、定着率を高めるためにはどのような取り組みをすればよいのでしょうか。

適切な評価実施と評価基準の透明化

まず挙げられる取り組みは、「適切な評価実施と評価基準の透明化」です。

外国人労働者に対して適切な評価を実施すること、また評価基準を透明化することが、定着率を高める上でかなり有効と言えます。

まず外国人労働者を含めた社員に対する評価基準を明確にし、それを全員が把握できるように透明化しましょう。

また、特に重要なのは、どこに課題があったのかをはっきりと言葉にして伝えることです。

曖昧なフィードバックを与えてしまうと、自分のどこに課題があったのかわからず、なぜこの評価なのかと疑問を抱くようになってしまいます。

公正で具体的な評価(フィードバック)を実施していくことで、外国人労働者も「自分の何が評価されたのか、どこに課題があったのか」を理解することができ、評価に対しても納得することができます。 

賃金などの待遇改善

また賃金などの待遇改善に取り組むことも、外国人労働者の定着率を高めるためのポイントになります。

同一労働同一賃金の考えは当然外国人労働者に対しても適用すべきであるため、同じ業務に従事する日本人社員との間で格差があってはいけません。

つまりただただ賃金を高めないといけないと言っているわけでなく、同等業務に従事する日本人社員と同等の賃金・待遇を与えることがポイントになるのです。

キャリアパスの整備

続いて取り上げるのはキャリアパスの整備です。

外国人労働者のキャリアパスとしては

  • 将来的に帰国するつもり
  • 入社した会社で専門性を高めていきたい
  • 様々な経験をしたい
  • 将来的に独立したい
  • 出世してマネジメントを経験したい

といったことが考えられます。

このようなキャリアパスを社内で実現できるように整備して、外国人労働者の希望や特性に合わせて、それぞれのキャリアパスに進んでいけるように支援していく必要があるのです。 

メンターの配備

メンターの配置も効果的な取り組みと言えます。

外国人労働者は入社後どうしてもマイノリティとなり、孤立してしまうことが多いです。

そうなると業務において悩みや質問があっても聞くことができないというケースは、往々にしてあります。

そのため外国人労働者それぞれにメンターを配置することが重要になるのです。

メンターとは新入社員や若手社員に対して助言や指導の実施など、様々なサポートをする人のことを指します。

メンターを設けることで、外国人労働者にとって悩みや質問を聞きやすい環境を構築することができ、離職に繋がる可能性のある問題も早期に摘み取ることができるのです。

特に留学経験が合ったり、外国人の友人がいたりするなど、外国人の対応に慣れている社員がいれば、その社員をメンターとして配置するとよいでしょう。 

価値観や文化の相互理解

価値観や文化の相互理解も重要な取り組みです。

外国人労働者を受け入れるにあたって、日本語や法制度、労働慣習などを学んでもらう機会を設けることは多いでしょう。

対して受け入れ企業が外国人労働者の母国語や文化を学ぶという取り組みは、あまり見られません。

しかし外国人労働者の定着率を向上させるには、価値観や文化を互いに理解しあい、尊重していくことが重要になるのです。

そのため受入現場の社員側に対して、受け入れることになる外国人労働者の母国に関する講習を実施するといった取り組みが求められるでしょう。

外国人労働者の定着率を高める上でのポイント

最後に外国人労働者の定着率を高める上でのポイントについて、2点お話しておきます。 

ダイバーシティマネジメントに取り組む

一つ目のポイントは「ダイバーシティマネジメントに取り組む」という点です。

ダイバーシティマネジメントとは、人材の多様性=ダイバーシティを、経営や組織強化に活かしていく取り組みのことを指します。

ダイバーシティマネジメントにおいては、様々な価値観を持った多様な人材のことを受け入れていくことが重要になり、当然その多様な人材には外国人労働者も含まれるわけです。

そのため外国人労働者を適切に活用し、定着率を高めていく上でダイバーシティマネジメントは有効に作用します。

またダイバーシティマネジメントには、既に雇用している外国人労働者の定着率を高めるだけでなく、新たに採用に取り組む際優秀な人材を集めやすいという利点があるため、是非取り組みを検討してみてください。

ダイバーシティマネジメントについては、以下の記事でも詳細を解説しています。
▶︎【ダイバーシティマネジメントとは】意味やメリット、具体例を解説します! 

キャリアアップを積極的に支援する

またキャリアアップを積極的に支援することもポイントになります。

先程定着率を高める方法のところで「キャリアパスを整備すること」を取り上げましたが、それと関連して、外国人労働者の希望したキャリアパスに合わせて、適切な支援を実施していくことが求められます。

例えば専門性を高めたいというのであれば、専門性がより必要な高度な業務を任せることが必要ですし、独立したいという外国人労働者には、独立のために必要な知識を学ぶ講習を提供するなどの対応が考えられるでしょう。

このようにキャリアアップを積極的に支援していくことで、外国人労働者の満足度も高まり、結果として長期的に働いてくれるようになるのです。

まとめ

今回は外国人労働者の定着率を高める方法やポイントをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は外国人労働者の採用から定着率の向上まで支援すべく、人材紹介サービスや受け入れ体制構築支援などを企業様に提供しております。

もしご興味ありましたら、お気軽にご相談ください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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